食事管理の算数感覚
生活習慣病の治療では、食事管理や運動管理が大切です。
そのうえで、おくすりの力が必要か、どう活かすか、という順になります。
普段の生活を考えた時に、動く、ということが大事なので筋力を維持する、強くする、ことも重要です。
基本的に好きなものを好きなように好きなだけ食べたいです。
ただ、病気を予防しよう、とか病気の治療をしていこうとなると話は変わります。
食事指導、栄養指導というとどのようなイメージを持たれるでしょうか。
あれを食べちゃだめ、これはとりすぎ注意、このメニューは気をつけること、など山盛りの注意でお腹いっぱい。
また、わざわざ時間を作って栄養士さんの話を聞きに行くのもおっくうなので、なかなか食事の管理は難しいともお聞きします。
食事のことを考える時にはまず下のイメージを持っていほしいです。
年齢を意識する、ということです。
若いうちは、塩分なりカロリーなりの制限が必要なことがあります。
食事から引く、というイメージですね。
80歳も近くなってくると、今度は筋力の低下や低体重などが問題となってくることもあります。
よろけたり、転んだりすると骨折の心配も増えます。
なので、食事をしっかり摂ろう、筋力がつくように体操しよう、という話になります。
加齢で自然と筋力が減ってきた状態をサルコペニアといいます。
さらに、定年退職やパートナーの喪失などでうつ、や認知機能の低下で精神的に衰えてきたり、経済状況や人との交流が減ってきた状態をフレイルと表現したりします。
重要なのは、70歳台前後では状況が様々になるということです。
ある方は、制限方向、ある方はむしろしっかり食べましょう、という目標になります。
私自身は、引き算の時期とか足し算の時期という表現を使うこともあります。
目の前の患者さんがどの時期なのかを見切るのは難しくはないです。
ただ、患者さんの気持ちとずれることがあります。
この年代の患者さんは食事を制限したら筋肉が減るのではないかと心配され、うまくいかないこともあります。
太っているから体重は減らしたいけど、筋肉が減るのも怖い、ということです。
それには答えが出ています。
この論文(1)では、肥満の高齢女性で、適度なタンパク質を含む食事がサルコペニアの肥満女性の筋肉量に与える影響をみたものです。
結論は、適度に高タンパク質の食事はサルコペニアの予防に役立ち、肥満の高齢者における筋肉量の維持に寄与することが示されました。
簡単にいえば、カロリー制限しても、タンパク質を取っていれば筋肉量は減らない、ということです。
更に良く見かける光景では、カロリー制限するために朝食は抜いている、昼夜はそこそこ、というパターンです。
これも明確な答えが出ています。
この論文(2)では、朝昼夜、均等にタンパク質を摂ったほうがよい、ということです。
一日で同じタンパク質摂取するときに、朝は少なく夜は多く、というパターンと、均等摂取パターンで比較すると、均等パターンのほうが筋肉合成は25%も多かった、という論文です。
じゃあ何をどれくらいとればタンパク質は十分っていえるの?
という話です。
一日60gくらいが目標ですが、ピンときません。
上記の話から、1日トータルで考えるより、1食20g という考え方がいいです。
鶏モモやムネ肉は100gとれば、タンパク質20g弱なので、ほとんど達成くらいです。
鮭、カツオも100gで十分、サバ缶は一缶です。
豆腐一丁や納豆1パックだと単独では10gいかないくらいです。
ヨーグルトはギリシャヨーグルトが最強です。
1パックで10g以上入ってるのがほとんどです。
と、色々書かせていただきました。
このようなことをご自身で調べたり、食事を調整したりするのは非常に難しいです。
理解できても、それを続けることもなかなかうまく行きません。
プロにお任せいただき、ご一緒に続けていくことが良いと思います。
戸頃循環器内科クリニックでは、管理栄養士からオンラインで栄養指導を受けられるシステムをとっています。
つまり、クリニックであったり、あるいは自宅や出先でも30分程度の指導を受け続けられるようにしております。
土日祝日でもよく、8時から22時まで予約可能です。
高血圧、脂質代謝異常、糖尿病、慢性腎臓病、肥満症、あるいは、低栄養の方などの栄養指導は保険が適応されます。
保険診療では3割負担の場合、710円(初回)、540円(2回目以降)です。
1割負担の場合には、240円(初回)、180円(2回目以降)になります。
外来時に院長かスタッフに栄養指導を希望する旨をお伝えください。
少しでも患者さんの負担になることを減らしたいと思っています。