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心をすり減らすもの

[2025.05.15]

心のメンテナンスが必要だな、と感じることがあります。

医療の現場では、病気や不調の「マイナス面」に注目することが多いです。

しかし、日常生活で人や物事を見るときに“減点法”のような視点ばかりを続けていると、知らず知らずのうちに心が疲れてしまうことがあります。

患者さんと話しているときにも、いろんなことを教えていただきますが、辛いだろうなと感じることがあります。

たとえば

  • 部下が頑張っても「ここが足りない」と指摘してしまう。

  • 子どもが90点を取っても「なんで100点じゃないの?」と言ってしまう。

  • 配偶者の行動に「なんでこれができないの」と感じてしまう。

これは脳がもともと持っているネガティブバイアス(負のバイアス)の影響によるものです。

ネガティブバイアスとは?

人間の脳は、生存のために「危険」「欠点」「失敗」などに敏感に反応するよう進化してきました。

これをネガティブバイアスと言います。

これは本来、危険を回避するために必要な機能なのです。

でも。

現代のストレス社会においては、逆に

「不満」

「苛立ち」

「不信感」

を増幅させてしまう要因にもなります。

減点主義は、心と体にストレスをもたらす

「できたら褒める、できなかったら叱る」

>>>この方式で人と接していると、人は“認められるためにやる”、“叱られたくないからやる”というモチベーションに縛られてしまいます。

自分のモチベーションを誰かに乗っ取られてしまう。

これは、子育てや教育だけでなく、職場や家庭、医療の現場でも同じと思います。

人間の本来持っている「やりがい」や「自己成長」を阻害するだけでなく、慢性的なストレスの原因にもなります。

そしてこのストレスは、高血圧、不整脈、睡眠障害といった循環器系や自律神経系の不調につながります。

 ではどうすればいいか?

「褒めて伸びる子」という言葉がありますが、これは単に甘やかすということではありません。

“いいところ”に目を向け、そこを伸ばすという視点を持つことが、心の健康にもつながります。

たとえば、美容皮膚科の診療でも、患者さんの肌の「欠点」ばかりを指摘するのではなく、

「ここがきれいですね」

「この部分はよく改善しましたね」

と伝えることで、患者さんの気持ちは大きく前向きになります。

それが、継続的なケアへの意欲にもつながります。

循環器内科でも同様です。

たとえ血圧が少し高くても

「この半年で体重が減ってきていますね」

といった変化を前向きに評価し、努力を認めることが、患者さんの継続的な健康維持につながるのです。

心も、血管も、定期的なメンテナンスを

私たちのクリニックでは、心臓の状態だけでなく、心のコンディションにも注目しています。

毎日「何にイライラしていたか」「何がうまくいったか」「感謝できたことは何か」を振り返るだけでも、ネガティブバイアスを和らげることができます。

ありがとうって言いたい! と思っているときは順調です。

心のメンテナンスは、体の健康と直結しています。

“足りないところ”よりも、“うまくいっているところ”に目を向けるということです。

それが、血圧を安定させ、心拍を整え、肌を健やかに保ち、毎日の生活を少しずつ豊かにしてくれる第一歩になるはずです。

全部を見ているつもりでも、見たいものしか見ていない、ということが案外あるかもしれません。

今日も、自分と誰かの“いいところ”をひとつ、見つけてみませんか。

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