したのした からアレルギーを克服する
これは、アレルギー治療の新しい選択肢、舌下免疫療法(SLIT)についての話です。
「舌の下(=したのした)」に薬をポトンと落とすだけで、
毎年のすぎ花粉症やダニアレルギーに立ち向かうことができる治療法です。
なぜ「したのした」で効くのか?
ポイントはこの3つ
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制御性T細胞(Tレグ)という「おだやか細胞」が育つ
→ アレルギー反応を鎮める善玉細胞が増える -
IgG4抗体という「じゃまし屋」が作られる
→ 悪さをするIgE抗体(すぎ花粉やダニに反応)を邪魔してくれる
→善玉抗体 と呼べます。 -
IgE抗体が「なくなる」のではなく、「効かなくなる」
→ これは減感作ではなく、癒し系治療と言えるかもしれません。IgE抗体がどんなふうに悪さをするのかという話は長くなるので、一番下に書いておきます。
つまり、体を少しずつアレルゲンに慣らして大げさに反応しない体質へとシフトさせていくのです。
SLITって、どんなふうにやるの?
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対象:スギ花粉症 ダニアレルギーの方
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方法:
1日1回、舌の下に専用薬(液体または錠剤)をポトン
→ 2分ほど保持して飲み込むだけ -
継続期間:3~5 年が目安(最低でも1年間)
副作用は少ないですが、開始時にはのどの違和感などを感じることがあります。
初回は必ず院内監視下で実施します。
毎年つらい、そんな方へ
「薬を減らしたい」
「根本的に治したい」
「子どもの症状を和らげたい」
そんな思いを持つ方にこそ、SLITはおすすめです。
“したのした”にひそむ治療の力は、静かに、でも確実に、体質を変えていきます。
1年後のために、いま始める
アレルギーは体の過剰な防衛反応といえます。
花粉に反応して、体外に出すために
くしゃみで追い出したり
なみだや鼻水で洗い流したり
肌の防御反応により、かゆみや肌荒れが起こったり。
アレルギー薬のんで寝たくもないのに眠くなってみたり。
毎年毎年、たまったもんじゃない。
だからこそ、急がず、じっくりとなだめることが大切です。
当院では、アレルギー検査から舌下免疫療法の導入・フォローアップまで丁寧にサポートしています。
気になる方は、ぜひご相談ください。
スギ花粉は、5月には飛びきっていて、6月からSLIT始めるのにいい時期です。
ダニは一年中いつでも思いたった日から始められます。
※この治療は保険適用です。
適応や副作用について詳しくご説明いたします。
IgE抗体のアレルギーにおける役割
まずは
アレルギー反応とは、本来無害な物質(=アレルゲン)に対して免疫系が過剰に反応する現象です。
IgEはこの過剰反応を引き起こす主因の一つです。
IgEのアレルギー反応での振る舞い
① 感作 かんさ(初期段階)
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アレルゲン(例:スギ花粉、ダニ、ピーナッツなど)が体内に入ると、B細胞がそれを認識してIgE抗体を作ります。
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作られたIgEは血中を巡るのではなく、肥満細胞や好塩基球の表面のFcεRI受容体に結合して待機状態になります。
② 再曝露 ばくろ(2回目以降)
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再び同じアレルゲンが体に入ると、IgEに橋渡しのように結合し、肥満細胞が脱顆粒を起こします。
- 肥満細胞からヒスタミン顆粒が放出されます。
蕁麻疹が出ているときに、肌をひっかくと赤く腫れ上がりやすいのは、真皮から表皮に肥満細胞が多くいて、刺激すると、すぐにヒスタミンを放出するので炎症が起きやすくなる現象で目に見えます。 -
これによってヒスタミン、ロイコトリエン、トロンボキサンなどの化学物質が放出され、以下の症状が生じます:
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鼻水・くしゃみ(鼻粘膜の刺激)
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気道収縮(喘息発作)
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皮膚のかゆみ・膨疹(じんましん)
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重症例ではアナフィラキシー
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③ IgEの特徴
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血中濃度は非常に低い(IgGの10万分の1程度)にもかかわらず、強烈な反応を引き起こす。
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抗体としての寿命は短いが、肥満細胞上では長期間存在できる。
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IgEの標的は主に寄生虫とアレルゲンだが、現代ではアレルギー疾患で問題となります。
- 本来は、体の防御機構ですが、暴走するとアレルギーということになります。
当院では、View 39という検査でこのIgE抗体を必ず測定して、アレルギー項目を網羅的に評価しています。
項目 | 解説 |
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IgE抗体の測定 | 血液検査で特異的IgEを測定し、アレルゲンを特定可能(RAST法、VIEW39など) |
治療の標的 | 抗IgE抗体製剤(例:オマリズマブ)により、IgEの働きを抑制する治療が可能 |
舌下免疫療法(SLIT) | IgEの代わりにIgG4が増えてIgEの反応をブロックするメカニズムが働く |