CPAP治療を始める方のために
睡眠時無呼吸症候群の診断となり、
これから治療を始めようとしている方
あるいは、
すでにCPAP治療を受けている方
に向けての情報になります。
まずは治療の目的を明確にしておきます。
「なぜCPAP治療が必要なのか?」
1.眠気、集中力低下、いびき、などでつらい思いをしている(していた)
>症状をとるため
2.職業上(運転手 ドライバー)、必要に応じて検査を受けたら無呼吸症候群が見つかった
>居眠り運転予防
3.高血圧、不整脈、心不全などの治療中で、原因検索の中で無呼吸症候群が見つかった
>もともとの病気の治療をうまくいくようにする
いずれも、健康寿命の延長、事故回避の効果が得られます。
なぜ治療が必要なのか?をしっかり理解しておく必要があります。
無呼吸症候群では、喉の気道閉塞を感知して、CPAPが空気を送り込みます。
空気を押し込むことで無呼吸という現象を解消する治療法です。
メリットは5つ。
1.確実な治療効果がある。
様々な研究でCPAP治療が一番よいとわかっています。
2.重篤な副作用がない。
3.装着したその日から症状が改善する。
4.QOLが改善する。
5.血圧・不整脈・心不全へ対する効果が得られる。
問題はデメリットです。
CPAP治療を継続できない理由はなにか?
と言い換えることができます。
1.根治治療ではない。
つまり、10年間CPAP治療をしたところで、外したらまた無呼吸になってしまう。
対症療法です。
2.空気漏れによる音、目の乾燥などが気になることがある。
3.マスクによる皮膚かぶれ 違和感。
4.空気を飲み込んでしまい、お腹が膨れた感じになる。
5.顔や頭に異物がつくのが辛い。
6.音が気になって眠りにくい。
これらにどう対処するか、ということが重要です。
治療の目的を忘れないことが大切です。
良くなるために、CPAP治療から得られる効果を最大限享受します。
まずは、マスクの選択が重要です。
鼻マスク<装着簡単> 基本的なマスクです。
口を開ける方は、口から空気が出ていくので、口にテープを張ったりします。
フルフェイスマスク<安定感 口呼吸> 口呼吸する方にはBest. ただ、顔を全面覆うので、大きい、圧迫感が強いという声もあります。
ピローマスク<軽量開放感> コンパクトで、紐が少なく、圧迫感が少ないです。
何を優先するか、と、何が嫌に感じるか? という2つの視点でマスクを選びます。
どのマスクを選んでも、やっぱりこっちと選んでも、基本的に金銭的な負担はありません。
マスクの変更に気を使う必要はなく、色々試してみるのが良いです。
CPAP治療はムリだ、と思う前に、まずはマスクを変更してみて試すのが良いです。
マスクだけでなく、シリコンやジェルパッドなど、マスクが当たって気になるところを守ってくれる工夫もあります。
医師やCPAP業者に相談されるのが良いです。
次には、空気圧の調整です。
基本的、空気の押し込み圧は自動で調整されています。
空気が入る最小圧 4cmH2Oから最大圧 20 cmH2Oまで調整がかかります。
CPAPでは一定の圧力がかかり続けます。
これは、空気を吸うときには良い方向で作用します。
ただし、空気を吐くときには、息が吐きにくい、という感覚になります。
CPAP治療を始めてから、この息の吐きにくさが気になるときには下記の対処をお勧めします。
1.慣れるためのステップ
まずは、日中に、CPAPをつけて練習をします。
CPAPをつけたまま、本を読んだりテレビを見たりスマホをいじったり。
5分でも10分でもCPAPをつけたまま過ごします。
なにか他のことに意識を向けながら、呼吸を自然にできるように慣れる、ということが大事です。
いきなり、寝るときにCPAPをつけるのはお勧めしません。
自転車で言うところの、補助輪をつけて練習する感覚に近いかもしれません。
2.固定圧にする。
医師に相談し、自動で圧があがっていくのを一旦止める方法です。
圧を 4 とか 6 とか低圧のままにしておきます。
その設定では、たいてい無呼吸は完全になくなりませんが、マスクからの空気の漏れもほとんど起きず、息を吐くのも抵抗は感じにくいです。
慣れたら圧の調整をしていきます。
手間はかかりますが、人間には慣れる、という性質があります。
3.加湿機能を試す
目が乾く、喉が渇く、などの乾燥が気になるときには加湿機能を用います。
ただし。
特に冬の室温が下がっているときには、ホース内に結露>水が貯まることがあります。
室温を上げて、CPAP回路内と、室温の差を少なくすると、結露はできにくくなります。
4.寝る前にお酒を飲まないようにする
酒を飲んで高いびき、という文学的な表現があります。
飲酒後には、喉がむくみやすい、喉の筋肉が緩みやすい、呼吸が早くなりがち、という理由からいびきや無呼吸は悪くなります。
飲酒後に、すぐにCPAPを使うと息が苦しくなりやすいのはこのためです。
また、寝たあともトイレに行きやすく、目が覚めてCPAPが使いにくくなる原因となり得ます。
そもそもアルコールは、寝付き寝入りは良くなりますが、途中で起きやすいので、睡眠時無呼吸症候群治療では、お酒との相性が悪いです。
飲むなら、夕方。
眠る2時間前くらいにはアルコールは避けるのをお勧めします。
酔って、寝て、CPAP使うの忘れた、というのはよくあることです。
加えて、CPAP治療を続けていくときの壁は、毎月受診が必要であるということです。
戸頃循環器内科クリニックでは、CPAP治療のみならオンライン診療で行っています。
ただし生活習慣のチェックや、細かい検査の必要性判断などは、実際に対面診療にされたほうがよりきめ細かい診療ができることもあります。
忙しい時と、そうでもないときに使い分けるのがオンライン診療の上手な使い方、とも言えるかもしれません。
上記が、CPAPで治療していくうえで、ひっかかりやすいところです。
CPAPを使いながら、目指すは生活習慣の改善です。
BMIが25を超えているなら、体重減少すれば寝ているときの気道閉塞の軽減が期待できます。
「喉の肉を減らす」 というイメージです。
どうすれば減量できるの?というのは医師に相談です。
喫煙されている方は、CPAPで咳が出やすくなることがあります。
これは、喫煙により気道の炎症が起きやすく、過敏になるからです。
禁煙、は生活習慣管理の第一歩です。
CPAPの作動状況を自分で知る
philips フィリップス社や フクダライフテック社のCPAPでは、自分でCPAPの作動状況を確認できるスマートフォンアプリがあります。
これを見ながら、うまく使えた日と、そうでなかった日の違いを見てみるのは面白いです。
やはり、酒飲むとマスクを早めに外してしまっているということが自分でわかったりします。
CPAP導入初期に大事なことは
いきなり長い時間使おうとしないこと。
いつか慣れます。
医学的には 4時間使えれば完璧。
なぜこの治療を受けているのか、思い出す。
治療にはコツ、があります。
CPAP治療が嫌になりそうになったら、もう一度読んでみてください。
そして、相談してください。
CPAPを使うことは目的ではありません。
あくまで手段です。
2番手、3番手の治療選択肢は患者さんによりそれぞれ異なります。
安心した生活のために一緒に考えましょう。