メニュー

HbA1cが高くなったときに読む話

[2025.05.27]

糖尿病の診療でよく使われる指標「HbA1c」

ヘモグロビン エーワンシー

あるいはそのまま エーワンシー と呼んでいます。

 

これは、ここ2−3か月の平均的な血糖の状態を示しています。

糖尿病のコントロールの目安として大切な数字です。

 

でも、このHbA1cが

「なんとなく上がってきた」

「下がっていたのにまた上がった」

というとき、何が起きているのでしょうか?

 

HbA1cの上がり方に6つのパターンがあります。

それぞれの背景にある可能性や、どうすれば良いかを一緒に考えてみたいと思います。


怖がる必要はありません。

数字はあくまでサイン(合図)です。

 

その意味を読み解くことで、次の一歩が見えてきます。

参考 当院での糖尿病についての解説ページ

 

① 急激に上がってきたとき

考えられる原因

  • がんなどの重大な病気(例:膵臓がん)

  • ステロイド治療の開始

    ステロイドの外用薬や点鼻薬では影響は最小です。
    内服ステロイド(プレドニン・プレドニゾロンなど)は影響を考える必要があります。

  • 急な生活環境の変化(転職・引っ越し・介護・災害など)

  • 1型糖尿病(インスリン分泌が急に低下)

対策

まずは早急に原因を見つけることが大切です。

血液検査や画像検査を行い、なにか見落としている重要なことがないかをチェックします。

生活の変化が背景にある場合は、少しでも生活リズムを整える工夫が必要になります。

生活の変化は、患者さん自身は仕方がないことですが、その点を意識して変えられるかどうか、対処できるかどうかが重要ですので、一緒に何が原因か考えます。

 

② 上がったり下がったり、変動が大きいとき

考えられる原因

  • 食事・運動のリズムが不安定

    夜勤仕事とか、家族の帰宅の時間に合わせて食事時間が前後しやすいとか。
    同居人や仕事などの波に流されるときなど。

  • 薬の飲み忘れ・インスリンの打ち忘れ

    飲むのを忘れたり、飲んだことを忘れてまた薬を飲んでみたり。
    低血糖は非常に危険です。

  • 睡眠不足・ストレス・不規則な勤務(夜勤など)

    現代社会はストレスとセットなので、どうストレスを発散するかはとても大事なことです。

    「こんなに忙しいなんて、逆に楽しいわ」と声に出すと、テンションが上ります。

対策

「完璧」を目指すよりも「安定」を目指すこと。

一週間単位での生活リズムを見直し、毎日できる小さな習慣から整えていきましょう。

 

できたことをできた!と考えること。

 

一歩一歩進んでいくと安定します。

服薬状況も一緒に確認します。

薬の残りがバラバラなときには、いつか飲み忘れたのかもしれません。

一旦振り返る必要があります。

内服薬を朝夕、朝昼夕、などの一日2回、3回という処方内容のときには、一日一回でよい内服薬へ変更できないか常に考えています。

 

③ ゆっくりゆっくり、でも確実に上がっているとき

考えられる原因

  • 知らず知らずのうちの体重増加

    「見たくない現実」と表現する患者さんもいますが、今どこにいるのか把握すれば向かう先もはっきりしやすいです。

  • 少しずつ運動量が減っている

    日本の四季はうつろいます。
    気温も変動し、6月からは雨も増えます。
    天気が悪くて散歩が減った→暑くて散歩が減った

    どうやって運動量を減らないようにしましょうか、と考えることが大事です。

  • インスリンの効きが弱くなってきている

    インスリン抵抗性、とは筋肉量が減ったり質が低下することでも起こります。
    筋トレと有酸素運動を一日おきに交互に行うことで、インスリンの効きが復活します。

  • ご飯がますます美味しい

対策

体重や食事の内容を一緒に確認してみましょう。

毎回検査のたびにHbA1c  0.1%ずつの上昇も、放置すると将来に大きく影響します。

早めに薬の見直しや、食事療法・運動療法の再スタートです。

いつだって、その日からやり直せます。

またやろう、より、今日やろう、も声に出してみるとまた気持ちが前向きになります。

④ 季節によって上がったり下がったりするタイプ

考えられる原因

  • 夏:暑くて食欲が落ちる。でもアイスやジュースでしのぐ。

  • 冬:運動不足・食べすぎ(お正月・鍋など)・もち。

  • 花粉症やアレルギーで運動がしづらくなる時期

    外出るとくしゃみ鼻水鼻詰まりは苦行になってしまいます。
    そんなときには症状を和らげる治療とともに運動継続です。
    糖尿病の治療をしつつ、花粉症に負けない体を作ることを意識します。

対策

「季節の波」を理解して、先回りした対策が重要です。
去年と同じことを繰り返さない、が大事です。

たとえば冬には軽い筋トレやウォーキングの時間を増やす、
夏には水分補給の仕方を工夫するなど、リズムを意識した生活を。

スポーツドリンクで脱水回避をしようして、たいてい9月にものすごいHbA1cがあがっている方を毎年お見かけします。
お水。お茶。がいいと思います。

⑤ ずっと高いままのとき

考えられる原因

  • 治療内容が合っていない

  • 実は別のタイプの糖尿病(1型糖尿病である可能性はつねに考えます。)

  • 合併症が進行している(腎機能、肝機能など)

対策

診断自体の見直しや、より詳しい検査が必要かもしれません。

「ずっと努力しているのに下がらない」という方は、あきらめずに一緒に次のステップを考えていきましょう。

もっと適した生活習慣、食事管理、運動量や方法、薬の調整があります。

⑥ 一度改善したけれど、また上がってきたとき

考えられる原因

  • 薬を減らしたあとに反動が出ている

    「薬が減るということは病気が良くなるということ」と思いたいです。

  • よくなったから安心してしまった

  • 心理的なストレスや環境の変化

対策

改善後は“維持”のフェーズへ。
ここでは「リバウンドしないコツ」を一緒に学んでいきます。

食事内容・運動習慣の再確認、薬の量の再調整も行います。

 

HbA1cと体重の関係にも注目します

HbA1cが悪化したとき、体重が増えているか、変わらないか、減っているかでも、原因のヒントが見つかります。

  • 体重も増えている → 生活習慣や薬の量の見直し

  • 体重は変わらないのにHbA1cだけ上がる → 他の病気のサインかも

  • 体重が減ってHbA1cも下がった → 成功のサイン!でも注意深く観察を

     

日頃からの血圧と体重の測定は非常に重要です。

HbA1cは「あなたを守るためのサイン」

HbA1cが上がってしまったとき、落ち込まないでください。

数字には、必ず「理由」があり、そして「対策」があります。


しっかり見極めて対処すれば、不安になる必要はありません。

当院でできることは、数字の奥にある普段の生活の状況、変化や心の動き、体の変化を一緒に見つけることです。


安心して、気になることはなんでもご相談ください。

戸頃循環器内科クリニックは、皆さんの「これから」を一緒に支えていきます。

HOME

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME