メニュー

糖尿病合併心不全治療の講演

[2024.06.12]

本日は講演会の座長をさせていただきました。

循環器専門医による脂質血糖管理の会ということで三愛病院副院長 循環器内科の中田先生から約1時間のご講演を頂き、質疑応答含め色々勉強させていただきました。

SGLT2阻害薬はもともと糖尿病治療薬として市販されました。

糖尿病薬の中に、心不全に悪影響があるとわかった薬剤が過去にあったため、それ以後は糖尿病薬が新規で開発された場合には、心不全に対して悪影響がないか、その薬剤を服用することで心不全が増えないかどうかを確認する義務のようなものが課せられました。

2015年にエンパグリフロジン(商品名 ジャディアンス)という薬剤では心不全に悪影響を及ぼさない、どころか心不全発症リスクを下げた、という報告がでました。この発表は今でも覚えていますが非常に衝撃でした。

糖尿病の治療薬が心不全を減らす、なんてありそうでなかった未来でしたから。

その頃は糖尿病の治療をしても心不全が減らない、むしろ増やしたりするからいったい自分は何をやってるんだろうと思っていて、薬ではなく運動療法や心臓カテーテル治療などを組み合わせてどうにか出来ないかと思っていました。

この発表後から様々な研究がされました。

今回の中田先生のお話はこの前提を踏まえてのものです。

まずは心機能が低下した(HFrEF へふれふ)糖尿病の患者さんでSGLT2阻害薬は心不全を減らした、さらには心機能が低下していない患者さんでもSGLT2阻害薬は心不全治療に有用だった、という研究の説明です。

特にDELIVER試験というのは、私自身が診ている患者さんも10名のかたに協力いただき、データを取らせていただき、結果を非常に楽しみにしていた研究でもあります。

結果は、Dapagliflozin(フォシーガ)を用いたほうが心不全改善効果、予防効果があったという結果でしたので、非常に嬉しかったのを覚えています。

その後、SGLT2阻害薬は腎不全の治療薬としてもその効果が確認されました。

糖尿病、心不全、腎不全の治療薬としてのポジションです。

糖尿病を合併している心不全治療においては、早期に、かつ高齢者の方でも、腎機能が低下してきていても、多少高カリウム血症でも心不全の薬物治療はしっかり継続し、いたずらに薬剤中止はせず、しっかり患者さんのフォローをする必要があるというお話でした。

最後は、Tofogliflozin(デベルザ)の薬効と有効な使い方、特のその特徴を活かして日常臨床でどのように活かすか、というお話をいただきました。

慢性心不全の方は特に夜間頻尿に悩まされ、眠りが分断されてしまうことがあります。

これは、体が休まらず、悪い負担となりますが、半減期の短いデベルザを選択すると一定の効果も期待できるのでは、というお話はまさに臨床家であり患者さんのことをしっかり考えられて薬剤選択をされているということで非常にためになる話でした。

いろいろな研究データをしっかり自分の日常臨床に翻訳し使いこなし、よりよい治療を目指していこうと思った夜でした。

EMPA-REG outcome
N Engl J Med 2015;373:2117-2128
過去10年でtop 10に入る衝撃的研究結果でした。
血糖管理で心不全が減るんだと当時ワクワクしていました。

DELIVER trial
N Engl J Med 2022;387:1089-1098
上記の衝撃の7年後に、自分が主治医でみている患者さん10名の方に協力いただいた研究です。
6263名のエントリー中の10名ですが、データを取るのがけっこう大変でした
プラセボとの比較で2重盲検なのに、尿検査をすると尿糖が4+かどうかで実薬群かプラセボ群か主治医にはわかってしまうという弱点を抱えていました。結果にはほぼ影響がなかったと今でも思っています。

 

HOME

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME