狭心症;誰が辛いと感じているのか
前回は、狭心症の症状について、でした。
今回は、その症状をどんな人が感じているのか、でその診断の可能性が変わる、という話です。
大前提として
複数のリスクが重なったときに、動脈硬化は一気に進行します。
リスクファクター、あるいは危険因子、と表現します。
つまり、これがあると動脈硬化による病気になりやすい、ということです。
文字通り、多くの患者さんたちを集めて、こんなとには狭心症になりやすい、という過去の統計・研究の賜です。
① 高血圧(収縮期140以上または拡張期90以上)
→ 高い圧で血管が傷つきやすくなり、動脈硬化を進める。
② 高コレステロール(LDLコレステロール高値)
→ 血管の内壁に“プラーク”を作り、狭窄や閉塞の原因に。
③ 糖尿病(特に空腹時血糖高値やHbA1c高値)
→ 血管の内皮機能を障害し、動脈硬化リスクが2〜3倍に。
④ 喫煙(タバコ)
→ 血管収縮作用や酸化ストレス、血小板凝集亢進を引き起こす。
電子タバコも紙タバコも全く同じです。
⑤ 加齢(男性45歳以上、女性55歳以上)
→ 年齢とともに動脈硬化は進行します。
女性も閉経後はリスク上昇していきます。
⑥ 性別(男性に多い)
→ 女性は若年期はエストロゲンにより守られているが、閉経後は差が縮まります。
⑦ 家族歴(遺伝的要因)
→ 一親等(両親・兄弟姉妹)に心筋梗塞や狭心症の方がいれば遺伝的影響の可能性があります。
⑧ 肥満・運動不足
→ 体重過多や内臓脂肪はインスリン抵抗性・高血圧・脂質異常が起こります。
⑨ ストレス・睡眠障害・社会的孤立
→ 慢性的な交感神経活性・血管収縮・不整脈など多面的に影響してきます。
そして、現在はストレス社会です。
【リスクは“重なり”が重要】
狭心症は「1つのリスクがある」だけでは起きにくいものです。
複数のリスクが重なったときに、動脈硬化が一気に進行します。
たとえば…
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「高血圧 × 喫煙 × 糖尿病」の3つを持つと、心筋梗塞の発症リスクは10倍以上というデータもあります。
特に、糖尿病+喫煙の組み合わせは非常に危険で、無痛性心筋梗塞、つまり症状がほとんどない心筋梗塞も起こしやすくなります。
いつのまにか、心臓の血管が詰まっている、ということです。
できることから、ひとつずつ
「リスクファクター」と聞くと、重く感じます。
できれば、聞きたくないし、考えたくないです。
目を逸らせば、なかったことにできるのか、と考えたりもします。
でも実際には、減らせるリスク が多くあります。
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「少し歩くことから始める」
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「夜の食事の塩分を少し減らす」
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「まずは1日1本減らしてみる」
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「薬を正しく継続する」
1つでもリスクが減れば、心臓の未来は大きく変わります。
※ 一日20本のタバコ。
10本。
5本。
1本。
狭心症のリスクファクター、という観点からは、どの本数でも同じ程度のリスクです。
でも1本減らすこと から始めるがいいと思っています。
様々な研究からでも、3週間やめれば、もう習慣から抜けられます。
きっと、惰性で喫煙している、と感じている方もいらっしゃるのでは?
狭心症かどうか、という診断を考えるときに、症状をしっかり聞き取る、ということと
どんなリスクファクターがある方か
治療方針の組み立てにも影響します。
高血圧の患者さんの生活指導で
心臓病は「突然の出来事」に見えますが、その背景には長年の生活習慣とリスクの積み重ねがあります。
逆に言えば、「今日から変えられる」ことばかりでもあります。
その人らしさ、とか、大切にしていること、をしっかりお聞きして、そこから始める診療を考えています。
狭心症の診断から考える、戸頃循環器内科クリニックの診療スタイルについてでした。