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狭心症;誰が辛いと感じているのか

[2025.07.25]

前回は、狭心症の症状について、でした。

今回は、その症状をどんな人が感じているのか、でその診断の可能性が変わる、という話です。

 

大前提として

複数のリスクが重なったときに、動脈硬化は一気に進行します。

 

リスクファクター、あるいは危険因子、と表現します。

つまり、これがあると動脈硬化による病気になりやすい、ということです。

文字通り、多くの患者さんたちを集めて、こんなとには狭心症になりやすい、という過去の統計・研究の賜です。

 

① 高血圧(収縮期140以上または拡張期90以上)

→ 高い圧で血管が傷つきやすくなり、動脈硬化を進める。

② 高コレステロール(LDLコレステロール高値)

→ 血管の内壁に“プラーク”を作り、狭窄や閉塞の原因に。

③ 糖尿病(特に空腹時血糖高値やHbA1c高値)

→ 血管の内皮機能を障害し、動脈硬化リスクが2〜3倍に。

④ 喫煙(タバコ)

→ 血管収縮作用や酸化ストレス、血小板凝集亢進を引き起こす。

電子タバコも紙タバコも全く同じです。

⑤ 加齢(男性45歳以上、女性55歳以上)

→ 年齢とともに動脈硬化は進行します。

女性も閉経後はリスク上昇していきます。

⑥ 性別(男性に多い)

→ 女性は若年期はエストロゲンにより守られているが、閉経後は差が縮まります。

⑦ 家族歴(遺伝的要因)

→ 一親等(両親・兄弟姉妹)に心筋梗塞や狭心症の方がいれば遺伝的影響の可能性があります。

⑧ 肥満・運動不足

→ 体重過多や内臓脂肪はインスリン抵抗性・高血圧・脂質異常が起こります。

⑨ ストレス・睡眠障害・社会的孤立

→ 慢性的な交感神経活性・血管収縮・不整脈など多面的に影響してきます。

そして、現在はストレス社会です。


【リスクは“重なり”が重要】

狭心症は「1つのリスクがある」だけでは起きにくいものです。

複数のリスクが重なったときに、動脈硬化が一気に進行します。

たとえば…

  • 「高血圧 × 喫煙 × 糖尿病」の3つを持つと、心筋梗塞の発症リスクは10倍以上というデータもあります。

特に、糖尿病+喫煙の組み合わせは非常に危険で、無痛性心筋梗塞、つまり症状がほとんどない心筋梗塞も起こしやすくなります。

いつのまにか、心臓の血管が詰まっている、ということです。


できることから、ひとつずつ

「リスクファクター」と聞くと、重く感じます。

できれば、聞きたくないし、考えたくないです。

目を逸らせば、なかったことにできるのか、と考えたりもします。

 

でも実際には、減らせるリスク が多くあります。

  • 「少し歩くことから始める」

  • 「夜の食事の塩分を少し減らす」

  • 「まずは1日1本減らしてみる」

  • 「薬を正しく継続する」

1つでもリスクが減れば、心臓の未来は大きく変わります。


※ 一日20本のタバコ。

10本。

5本。

1本。

狭心症のリスクファクター、という観点からは、どの本数でも同じ程度のリスクです。

 

でも1本減らすこと から始めるがいいと思っています。

様々な研究からでも、3週間やめれば、もう習慣から抜けられます。

きっと、惰性で喫煙している、と感じている方もいらっしゃるのでは?

 



狭心症かどうか、という診断を考えるときに、症状をしっかり聞き取る、ということと

どんなリスクファクターがある方か
 
ということがとても大事になります。
 
この2つをしっかり把握し、画像検査や採血検査の結果等をふまえて治療方針が決まっていきます。
 
生活習慣改善、とどこでも言われていますね。
 
じつは、生活習慣、を変える、というのはとても繊細な話です。
 
 
実際に、いろいろなバリエーションがあります。

治療方針の組み立てにも影響します。
 
 
例えば減塩です。

 
ラーメンでは、麺にもスープにも塩分はそこそこに入っています。

高血圧の患者さんの生活指導で
 
じゃあラーメンは制限が必要か?
 
と考えます。

 
ラーメンが何よりも好きで、食べ歩くのが人生の楽しみだ、という方もいます。
 
そのような方に、減塩のためにラーメンはだめですよ、なんて言えません。
 
 
血圧の治療では、10年20年後の健康を考えて、今の血圧を管理していくものです。
 
ここから先、20年も好きなラーメンを我慢して長生きしてなんの意味があるのか、とつい思ってしまう気持ちを理解しています。
 
 
なので塩が口から入ってきても、尿の中に塩分が出るような薬剤を積極的に導入したりして、せっかくの楽しみを長く、不安なく堪能できるようなアプローチを考えます。
 
知識としては、減塩をご説明しますが、どう日常生活に無理ない形で導入するか、が長く続けれれるための技術、といえます。

 

心臓病は「突然の出来事」に見えますが、その背景には長年の生活習慣とリスクの積み重ねがあります。

逆に言えば、「今日から変えられる」ことばかりでもあります。



その人らしさ、とか、大切にしていること、をしっかりお聞きして、そこから始める診療を考えています。

 

狭心症の診断から考える、戸頃循環器内科クリニックの診療スタイルについてでした。

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