ニトロ製剤。狭心症発作について
狭心症の診断。
あるいは、狭心症の疑いがある、というとき。
ニトロスプレー(ニトロールスプレーやミオコールスプレー)を処方すると、よくこんな言葉をいただきます。
「先生、これって“最後の手段”みたいで怖いです…」
「使ったらダメな気がして、バッグに入れっぱなしです」
お気持ちはよくわかります。
心臓の薬、と聞くと、特別で強いイメージを持たれるのは自然なことです。
でも。
ニトロスプレーは“最後の薬”ではありません。
むしろ、“最初の味方”です。
ニトロスプレーってどんな薬?
ニトロスプレーは、狭心症の発作時に胸の痛みを和らげる即効薬です。
使い方はとても簡単。
舌の下にシュッとひと吹きするだけ。
その作用で、心臓の筋肉に栄養血液を送る冠動脈が拡張したり、心臓へ戻る余分な血液の量を減らし、心臓の負担を軽くしてくれます。
1〜2分ほどで胸の圧迫感がスーッと和らぐのが特徴です。
ニトロは怖い薬ではありません
「使ったら癖になるのでは?」
「発作が重いときしか使ってはいけないのでは?」
そんな心配は不要です。
むしろ、「少しでも痛いと思ったら、迷わず使っていい」のがこの薬の正しい使い方。
“痛みがあるのに使わないこと”の方がリスクになります。
▷使うかどうか迷ったら、使ってみるタイミングです。
中には「スプレーするとクラクラした」という方もいらっしゃいます。
これは一時的に血圧が下がるためで、座ってから使えば気になりません。
ニトロールとミオコールの違いは?
当院では、以下の2種類を処方することがあります。
製品名 | 特徴 | 噴霧回数 |
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ニトロールスプレー | 細いプラスチックボトル。やや刺激感あり | 約100回 |
ミオコールスプレー | 太い金属缶。刺激は少なめ。 | 約100回 |
どちらも有効成分はニトログリセリン0.3mg/噴霧で、効果は同じ。
ちょっとニトロールのほうが作用持続時間が長いです。
刺激の感じ方や携帯のしやすさで選んでいただけます。
正しく使えば、人生を守る薬
もし発作が起きたとき、ニトロをすぐ使えたことで救急搬送を避けられた方も少なくありません。
ニトロは、安心を支える“お守り”です。
✔ バッグに常備する
✔ 発作時は座って舌下に1噴霧
✔ 効果なければ2〜3分あけて追加(最大3回まで)
✔ それでも痛みが続けば、狭心症の症状ではないか、救急車を呼ぶ事態になっているか
1本で100回使えます。
ただ、その場に持っていないと使うこともできません。
奥に仕舞い込んでも、出すのが面倒になってしまいますので、いつでも手の届くところへおいておくのが安心です。
キャップを開けて、黒い部分を、したのした
舌の下にシュッとスプレー。
そうすると素早く吸収されていきます。
錠剤もあります。
ニトロペン、は財布や枕元のなかに忍ばせておくのが吉。
使用期限がありますので、時々チェックです。
大事なことは
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ニトロスプレーは怖い薬ではなく、早めに使うほど効果的
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発作が出たら、迷わず使うのが正解
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正しく使えば、あなたの生活を支える強力な味方
当院では、狭心症の治療をしっかり行っております。
なるべく生活習慣管理や薬物治療、リスクの軽減による将来の心筋梗塞を極力予防する、狭心症の症状が出ないようにする、が目標です。
心エコーや冠動脈CTなど、冠動脈や心臓の状態を正しく正確に評価し治療につなげています。
できるだけカテーテル手術にならないように、早期に、かつ、長期に、かつ安全に、しっかり管理をしていくことが重要です。
不安なことがあれば、いつでもご相談ください。