ピルと血栓
ピルを飲んでいると血栓ができやすくなります。
低用量ピルは、黄体ホルモン(プロゲステロン)と卵胞ホルモン(エストロゲン)を少量配合した経口避妊薬です。
避妊効果が高いだけでなく、月経痛の緩和やPMS(月経前症候群)の改善などの効果もあります。
保険適応になって沢山の方がその恩恵を受けています。
自費診療だと経口避妊薬と呼ばれたり、保険診療だと低用量エストロゲン・プロゲステロン療法と呼ばれたりします。
注意が必要なのは血液が固まりやすくなるということ。
つまり、ピルの使用には【血栓症】のリスクも伴います。
最近では、低用量ピルを服用中の方で、この血栓症が心配ということで受診される方が増えています。
血栓症とは?
血栓症は、血管の中で血液の塊ができる病気です。
ピルで問題になるのは2つ。
主に、あしや、骨盤内の静脈にできる深部静脈血栓症(DVT)
です。
片足(まれに両足)がむくむ、痛むのが特徴です。
この足や骨盤内の静脈にできた血栓が、心臓、そして肺にとんでいくのが
肺血栓塞栓症(PE)です。
急に胸苦しい、息苦しい、胸が痛む、などの症状が出ます。
どんなときに心配すべき?
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片足の急な腫れ(特にふくらはぎ)
特にふくらはぎを握ると痛い、赤くなっているときは注意です。 -
急に息苦しくなる。
- 動悸がある
- 強い腹痛
- 激しい頭痛
- 長時間の座りっぱなし
などです。
血栓症のリスクが高い人は?
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喫煙
- 高血圧 糖尿病
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BMI 30以上
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血栓症の方が家族内にいる
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過去に血栓症歴がある
- トラネキサム酸を長期服用している
先天的に血栓ができやすい人
先天性アンチトロンビン欠損症
プロテイン C欠損症
プロテイン S 欠損症
のかたでは静脈血栓症をきたしやすい事がわかっています。
家系内に血栓症が多発している場合には何らかの先天性素因が存在する可能性があります。
実際何に注意すべき?
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使用前に自分の血栓症リスクを知る
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喫煙をやめる(特にピル使用者では必須)
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BMIの適正化
- 脱水を避ける
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座りっぱなし生活を避けて、こまめに動く
- 6ヶ月以上の低用量ピル服用時には、Dダイマーを定期的に測定してもらう
血栓の予防目的で弾性ストッキング(医療用の着圧ソックス)も使用できます。
当院で扱っておりますので、ご来院時にご相談ください。
循環器内科で行う検査は?
血栓症の疑いがある場合には
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Dダイマー測定:血栓ができると 異常値が出ます。
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下肢静脈エコー:静脈血流をエコーで確認 血栓が見えることもあります。
これらの検査はすでに血栓があるか調べることが出来ます。
実際に肺塞栓症になっているかどうかは
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肺動脈造影CT検査:肺血栓を直接見つけられます。
息苦しさや胸の痛みがあるときには必要な検査になります。 -
心エコー:右心室の圧力が不自然に上がっていないかの評価。
リスクが高い方や、判別しにくい症状があるときには当日心エコーを行います。
血栓症があった場合には、必要に応じて溶かす治療や、それ以上血栓が大きくならないように管理したり、必要によって高次機能施設へご紹介することもあります。
これらの検査を通じて、血栓の有無や重症度を決定し、適切な治療を行います。