新しい高コレステロール治療薬 ネクセトールについて
脂質代謝異常。
あるいは高コレステロール血症。
いわゆる生活習慣病と言われていますが、必ずしも生活上のあれこれによる影響だけではなく、体質、つまり遺伝子による影響でコレステロールが自然に上がってしまう、ということもあります。
生活を見直そう、とか
食べ過ぎ注意、とか言われても、ここから何を改善すればいいか?
もう食事のことを言われるのがストレスでしかない、と思われている方もおられると感じることがあります。
それでも。
心筋梗塞や脳梗塞担ってしまう方の中にはコレステロールが高い方はたくさんおられる。
動脈硬化による病気になるリスクが高くなる。
これもまた事実であります。
そうならないように、ということで薬物治療も開発研究されてきました。
今なら、スタチン、エゼチミブ、PCSK9阻害薬、などでコレステロールを下げることで、心筋梗塞になるリスクを減らせる、ということもわかっています。
でも、内服薬だけでは効果が不十分でコレステロールが下がりきらない、とか、注射の値段が高すぎて使えない、とか。
さらに。
スタチンでは筋肉痛や倦怠感を感じ、服用ができない、ということもあります。
スタチン服用ができない、でも動脈硬化性疾患のリスクが高い、というときには、高価な注射薬を用いる、という流れでした。
そこに新しい内服薬が出てきました。
2025年9月19日に製造販売承認
今日、11月12日に薬価収載 つまり値段が決まった薬です。
ネクセトールという商品名です。
ベムペド酸という成分です。
作用のメカニズムはシンプルです。
コレステロールは肝臓で合成されるのです。
たべすぎ、とか生活習慣が、とか言われて色々やってもコレステロールが下がりにくいのは肝臓でコレステロールを合成している、ということも大きく影響しています。
スタチンがコレステロールを合成するのをブロックします。
これは合成経路の最後の方で作用しています。
このネクセトールはこの合成経路のより最初の方で作用します。
それによりコレステロール合成が減る>血液中のLDL受容体が増加する>血中LDLが減る
という流れです。
更に都合がいいのが、肝臓だけで働く薬剤、ということです。
筋肉に対しては活性化しないので筋肉痛がでない(理論上はかなり出にくい)ということです。
2019年ごろから注目された研究がいくつか出ています。
1.まずはどれくらい悪玉LDLコレステロールが下がるのか?
N Engl J Med 2019; 380: 1022-1032
プラセボに対して、です。
内服開始1ヶ月で効果が出て1年続いています。
だいたいLDLが10−15%程度下がります。
平均だと16.5%下がったと報告されました。
LDL 160 mg/dl だったら140を下回るようになる、という感じです。
さらに。
保険適応で検査が非常にしにくいものの、当院の心臓ドックでは測定している動脈硬化性疾患の発症と密接に関わるAPO Bです。
従来このAPO Bを下げる薬剤はありませんでしたが、6%前後下がっています。
2.スタチン服用できない方でもちゃんと下がるの?
https://doi.org/10.1161/JAHA.118.011662 CLEAR Serenity試験
スタチン服用が合わない、服用できなかった方でもLDLは平均21.4%下がりました。
APO Bも15%程度下がりました。
3.LDLが下がったところで、実際心筋梗塞は減るの?
採血検査の結果が良くなることと、病気発生のリスクが減る、といことはかならずしも同じではないのです。
15%前後採血データがよくなったくらいじゃん、っていう気持ち、ありますよね。
そこを確かめる必要があります。
2023年に CLEAR outcome試験の結果が発表されました。
スタチンが服用できなかった方々で、このベムペド酸(ネクセトール)を服用して、心筋梗塞・脳梗塞がへったのか? を調べました。
1万4千人集めて、半分はプラセボ。半分はネクセトール服用。
平均40ヶ月。3年ちょっと経過を見ました。
最長5年の観察です。
ネクセトールではLDLが20%以上低下しています。
プラセボでも10%くらい低下しています。
食事運動管理はやはり大事。
結果は。
心筋梗塞・脳梗塞は13%低下しました。
3年で、13%。 つまり100人心筋梗塞・脳梗塞になるところだったが、13人ならずに済んだ、と言い換えられます。
でも。
このグラフのインパクトには まやかし、があります。
縦軸が20%で記載されています。
科学的に正しい表現はこちらです。
上のグラフとくらべた印象はいかがでしょうか。
ほとんど変わりがないようにも思えませんか。
とても注意が必要です。
こういうのを見たときに、どう感じさせられているか、ということです。
個人的には、LDLを下げる治療の効果というのは、この先、10年、20年とい続いていくものだと思っています。
むしろ3年5年程度で心筋梗塞や脳梗塞が減るのならば、長く続けて、自分が歳を重ねて動脈硬化が加速度的に進行していくのをしっかり止められるのではないか、と想像します。
この先の研究の延長成果を見たいものです。
4.副作用は何を気をつけるのか。
尿酸値が上昇することがあるようです。
どの研究でも5%くらいの患者さんで尿酸が上がり痛風発作を起こされる方が増えています。
肝臓や腎臓にもわずか影響が出た報告もあります。
当然、脂質管理をするうえで、尿酸や腎臓肝臓の機能をしっかり確認していくのは基本中の基本です。
治療の新しい選択肢がでてくるのは非常に望ましいことです。
またその有効性や効果をしっかり確認吟味していくことは重要です。
副作用についても、発生率がわずかだったとしても自分にそれが当たれば発生率なんて関係ない、ということが言えます。
食事運動療法の重要性と薬物治療の新しい選択肢をしっかり理解し、当院を頼ってこられた患者さんにはその時点でその方にベストを尽くそう、というのはいつも変わりがありません。
コレステロールが高くても、それだけでは症状はありません。
検診などでコレステロールが心配になられたらお気軽にご相談ください。
ぎんなんは善玉コレステロールを増やす効果があると聞いて食べてみましたが今のところ、善玉が増えた実感はありません。
短いですが秋を感じられたのがよかったです。
