腎臓病を守る<糖尿病性腎症> その1
腎臓は血液をろ過します。
尿は、いらないもの、として体外に出されていきます。
2つの腎臓があり、その中にはろ過システム、としてネフロンが100万個あります。
とくにネフロンのには糸球体(しきゅうたい)があります。
文字通り、糸くずみたいな形で、血液を ところてん、のようにろ過して、尿を作ります。
この糸球体を顕微鏡で見てみます。
左は正常です。
右は、糖尿病があるかたの糸球体です。
硬化といって、潰れている感じが見て取れます。
腎臓の機能は血液検査で評価ができます。
BUN Cr といった検査項目は多くの方が見られていると思います。
でも重要なのは、GFRという指標です。
血液検査でeGFR (e はEstimate 推定という意味)で出てきます。
このeGFRは 時間とともに> 加齢とともに低下していきます。
40歳を超えたくらいからどんどん糸球体は減っていきます。
それに合わせて、eGFRもその頃から低下していきます。
ろ過装置が減れば効率が悪くなるのは仕方がありません。
この自然低下の速度が重要です。
つまり、病気があるとこの自然な低下カーブが加速して低下するようになります。
代表的なのは、糖尿病です。
高血圧や、腎臓に悪影響があるような薬剤でも低下します。
低下した腎機能は基本的に回復しません。
自然に低下する速度へ戻れるかどうか、ということが次の関心項目になります。
介入、と書きましたが、これは治療だったり手術だったり。
うまく行けば元の低下速度に戻ります。
あるいは、低加速度が加速し、更に悪化することもありえます。
では、いつ介入するのがいいのでしょうか。
Aポイント。
Bポイント。
どちらで治療を始めるべきか。
どちらで治療を始めると、腎臓の機能は持つか。
ESRDと書きましたが、これは末期腎不全 End stage renal disease.
血液透析が必要な状態です。
Aポイントで治療を開始したほうが、腎臓はより長く持ちます。
早期発見や早期治療、というのはこういう違いとして現れます。
実際には年単位の違いです。
だから、実感しにくいのです。
Aポイントで治療を受け始めたAさんは、きっと治療を始めるときに思うでしょう。
「私はそんなに悪くないのに、どうしてお薬が増えたり、食事や運動のことこんなに言われるの?」
「診察のときには、わかりました、といったけれど納得いかない」
10年後にも腎臓の機能はうまく保っているでしょう。
BポイントBさんはどうでしょう。
せっかく治療を始めたのに、すぐに腎臓が悪くなっていくから治療が悪いんじゃないか。
そう感じるかもしれません。
治療にはいいタイミングがある、ということかもしれません。
さらに。
腎機能障害、はeGFR 60が一つのラインです。
これを下回るごとに、心不全の発症リスクが上がります。
eGFR 45 で心不全発症リスクは eGFR 75 のときと比べて2倍を超えます。
心不全の発症を減らそう、よくしていこう、と考えたときに、腎臓の機能を見極めていくことの重要性がわかります。
かつ、悪くしない、という発想は2025年6月でも最重要ということになります。
特に、2型糖尿病があるときに、この腎臓を守れるよ!というおくすりは3つだけです。
ARB アンギオテンシン受容体拮抗薬
▷▷降圧剤です。腎臓の治療なのに血圧の薬?と思いますか。
腎臓はところてん方式なので、ろ過する圧力が高すぎると壊れます。
それをも守ってくれるイメージです。
圧がかかると蛋白尿が漏れてきます。
蛋白尿が出ている、ということは腎臓が壊れ続けているというふうに考えてもいいです。
もう少し複雑な理論がありますが、バッサリです。
SGLT2阻害薬
▷▷理論上とても複雑なことを言われていますが、心臓にも、糖尿病にも、腎臓にもよいとんでもない薬剤です。
エンパグリフロジン、ダパグリフロジンが一般名です。
フィネレレノン
薬剤名はケレンディア といいますが、無名です。
2型糖尿病での、蛋白尿の改善、腎機能低下速度を遅らせる、などのしっかりした効果がわかっています。
循環器内科では、腎臓の機能をしっかり評価し対策を立てて治療を進めています。
次回は、このSGLT2阻害薬とフィネレノンのどちらを使うといいの?という話です。