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私にとってちょうどいい運動は?

[2025.02.10]

前回は、健康のための運動を考えるとき、強さ、と、継続時間、の2つが大事です、という話でした。

その続きになります。

ライフステージの中ではいろんな生活状況や、体の特徴があります。

その中で、特に心不全を合併しているメタボリックシンドローム状態での運動、というものについて考えたいと思います。

 

運動をしよう!と思うときには、目的が重要です。

闇雲に動けばいい、というわけではなく、得られるメリットと注意点がわかると安心して運動が続けられます。

 

心不全とメタボリックシンドローム(内臓脂肪の蓄積、高血圧、高血糖、脂質異常)の両方を考慮します。

心臓に負担をかけずに脂肪燃焼と筋力向上を目指すことが重要です。

とくに内臓脂肪を減らすには、この2つの軸がとても大事です。

  • 心不全:運動耐容能を向上させ、息切れを減らし、生活の質を改善する。
    動いても苦しくなりにくい体のことです。

  • メタボリックシンドローム:脂肪を減らし、血圧・血糖・脂質を改善する。
    ぽっこりお腹をへこませる。特に内臓脂肪を減らす。

1. 運動の基本方針

  1. 心臓に過度な負担をかけない

    • 強度を低めに設定し、ゆっくり進める。
    • メッツで言えば、3−4メッツ程度。
    • 心拍数でいえば、安静時心拍数+ 10−20bpm程度。
    • 少し息が切れるくらい、で十分です。

    • 心拍数が急上昇しないように注意する(ウォームアップ・クールダウンをしっかり)。

  2. 内臓脂肪を効率よく減らす

    • 低~中強度の有酸素運動(心拍数 100~120 bpm 目安)を中心にする。
      ただし、この心拍数は、βブロッカーなどの内服薬を飲んでいないとき、の話です。
      カルベジロール、ビソプロロールなどのβブロッカーを服用中であったり、ペースメーカーが入っているときには、安静時心拍数+ 10〜20を指標にするのがおすすめです。

    • 長時間継続できる運動(30~60分)が理想的です。
      心不全では、歩いているとすぐにだるくなったり、息切れします。
      そのため、5分程度から始めて、1,2週間程度で、+5分 運動時間を伸ばすのも良いです。
      疲れたら、休む。 
      「金メダルを目指しているわけではないのです。」

  3. 筋力維持・向上も組み合わせる

    • 軽い筋トレ(自重や軽負荷)筋肉を落とさず、基礎代謝を維持。
      100円ショップでストレッチ用のゴムバンドが売っています。
      椅子に座りながら、これを伸ばしたり、ひっぱったりするのも良いです。
      足で踏んで腕で伸ばす、というのも有効です。
      筋力にも、ストレッチにも効果があります。

    • 血圧上昇を防ぐために息を止めない(呼吸を意識)
      息を止めての運動は、無酸素運動になります。
      疲れますので、リラックスして、呼吸はゆったり続けるのが吉。


2. 運動の強度設定

① 心拍数での目標

  • 安静時心拍数 + 10~20 bpm

    運動負荷試験を行って運動強度を出す方法が一番いいのですが、手間暇が多くかかります。
  • 心不全の治療では上記の安静時に足し算するのが、おすすめです。
運動の種類 目標心拍数 (bpm) Borgスケール(主観的強度) METS
ウォーキング(速歩) 100~115 11~12(やや楽) 3~4
エルゴメーター(軽負荷) 100~120 12~13(ややきつい) 3~5
軽い筋トレ(スクワット等) 100~110 11~13(やや楽~ややきつい) -

 

3. おすすめの運動プログラム

(1)有酸素運動

目標: 脂肪燃焼と心肺機能の向上

 ウォーキング(おすすめ)

  • 1回 30~60分, 週5回以上
  • 心拍数 100~115 bpm を目安に、会話ができる程度のペースで
  • 階段や坂道は避ける(負荷が高すぎるため)
    膝や腰に負担がかかり、のちのち痛みの原因となると、運動どころではなくなります。

 エアロバイク・自転車エルゴメーター(屋内)

  • 1回 20~40分, 週3~5回
  • 軽めの負荷(ペダルが軽く感じる程度)で回転数を維持(RPM 50~60程度)
  • 心拍数 100~120 bpm を超えないよう注意しましょう。
  • 飽きるので、音楽かけて軽快に。

 水中ウォーキング(推奨)

  • 関節への負担が少なく、心臓に優しい
  • 1回 30~45分, 週3~5回
  • 水温は 体温と近い方が血圧の急変を防げます。
  • 近所にプールがあるのなら、生活に組み入れるのも良いと思います。

(2)レジスタンストレーニング(筋トレ)

目標: 筋肉量を維持し、基礎代謝を向上(負荷は軽めに)

 スクワット(壁に寄りかかる or 椅子スクワット)

  • 10回 × 2~3セット(膝が痛くない範囲でしましょう)
  • ゆっくり動作する(反動を使わないのが良いです)


ゴムバンドを使った軽い筋トレ

  • レッグプレス(椅子に座ってバンドを使う)
  • 腕の軽い筋トレ(500g程度のダンベル ペットボトルは太い、重いので勧めません)
  • 1セット 10~15回、週2~3回
  • 最近はニューロスティックを用いて、体操するのをおすすめしています。

呼吸を止めずにゆっくり

  • 息を吐きながら動作することで血圧上昇を防ぐ

 

(3)ストレッチ(リラックス目的)

目標: 柔軟性向上、血流改善

運動前後のストレッチ(10分)

  • 太もも・ふくらはぎ・背中のストレッチ
  • 深呼吸を意識しながらゆっくり
  • 一番気持ちの良い時間です。

 

4. 運動時の注意点

 運動中の症状に注意

  • 動悸、めまい、胸の痛み、気持ち悪さ があれば即中止です。
  • 運動後に疲労が数時間続く場合は強度を下げた方が良いです。
    目標心拍数を  マイナス5bpm  する、などの対処です。
    運動時間、は短くする必要はありません。

食後1時間以内の運動を推奨(血糖コントロール)

  • 糖尿病がある場合では、低血糖を防ぐために空腹時の運動は避けます
  • 軽い糖分補給(バナナ半分など)を考慮しましょう

水分補給をこまめに

  • 脱水は血液の粘度を上げ、心不全のリスクを高めます
  • 運動中も100~200mL程度の水を30分ごとに摂取します

過度な負荷をかけない

  • 急激な負荷の増加は心臓にも関節、筋肉にも負担となります
  • ウォームアップ(5~10分)、クールダウン(5~10分)を必ず行う
  •  

「無理せず、楽に続けられる運動を習慣にする」ことが一番重要です。

  • ウォーキングや自転車エルゴメーターを中心に、低~中強度の有酸素運動を継続
  • 筋トレは軽い負荷で週2~3回(呼吸を意識しながら)
  • 運動中に異常を感じたらすぐに中止

 

状態に応じて、少しずつ運動量を増やしていくことが大切です。

楽しくやっていれば、続けたくなりますよ!

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