感染性胃腸炎の流行について
この2週間での当院外来では明らかに腹痛・嘔吐・下痢でつらい思いをされている方の来院が増えています。
ほぼ感染性胃腸炎の診断です。
感染性胃腸炎とは、ウイルスや細菌などの病原体による嘔吐、下痢を主症状とする感染症です。
中でもウイルス(ノロウイルス、ロタウイルスなど)が原因となることが多く、毎年秋から冬にかけて流行します。
冬季になると増加する感染性胃腸炎。その主な原因となるのがノロウイルスとロタウイルスです。
特に小さなお子さんや高齢者の方は重症化しやすいため、しっかりとした予防と対策が必要です。
今回は、感染経路、症状、治療、そして家族や周囲への感染拡大を防ぐ方法について解説します。
感染経路
ノロウイルスとロタウイルスは、いずれも経口感染を主な感染経路です。
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ノロウイルス:感染者の嘔吐物や便に含まれるウイルスが手指や食品を介して広がります。
患者のノロウイルスが大量に含まれるふん便や吐ぶつから人の手などを介して二次感染した場合
感染経路で言われているのは以下です
家庭や共同生活施設などヒト同士の接触する機会が多いところでヒトからヒトへ飛沫感染等直接感染する場
食品取扱者(食品の製造等に従事する者、飲食店における調理従事者、家庭で調理を行う者などが含まれます。)が感染しており、その者を介して汚染した食品を食べた場
汚染されていた二枚貝を、生あるいは十分に加熱調理しないで食べた場
ノロウイルスに汚染された井戸水や簡易水道を消毒不十分で摂取した場合 -
ロタウイルス:主に乳幼児が感染しやすく、患者の便や唾液を通じて感染が拡大します。
5歳までの急性胃腸炎の入院患者のうち、40~50%前後はロタウイルスが原因です。
感染者の下痢便1グラムの中には1000億から1兆個のロタウイルスが含まれているといわれています。
便に含まれるウイルスの量が多いことで知られているノロウイルスと比べても、その100万倍ものウイルス量です。
特に保育園や幼稚園で流行しやすいのが特徴です。
感染力は強く、10~100個くらいのロタウイルスが口から入ることで感染します。
ロタウイルスは、ロタウイルスによる胃腸炎の患者の便に大量に含まれています。
患者の便を処理した後、たとえ十分に手洗いをしても、手や爪に数億個ものウイルスが残っていることがあり、ロタウイルスが付いた手などから感染が広がっていきます。
主な症状
感染後の潜伏期間と症状は以下の通りです。
ウイルス | 潜伏期間 | 主な症状 |
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ノロウイルス | 24~48時間 | 吐き気、嘔吐、下痢、腹痛、軽い発熱 |
ロタウイルス | 2~4日 | 水様性の下痢(白色)、嘔吐、発熱、腹痛 |
ノロウイルスは大人でも感染しやすいですが、ロタウイルスは特に乳幼児に多くみられます。どちらも脱水症状に注意が必要です。
治療法
現在、ノロウイルスやロタウイルスに特効薬はありません。
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水分補給(経口補水液やスポーツドリンク)をこまめに摂取する
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嘔吐がひどい場合は点滴治療が必要になることもあります。
当院での治療
吐き気があり、内服薬が使えない方には、まずは点滴水分補給により脱水を改善しつつ、吐き気止め注射を用います。
内服薬が飲めるようになったら、水分摂取と薬物治療により更に体調改善を確認します。
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下痢止めの使用は推奨されません(ウイルスが体外に排出されにくくなるためです)
通常、3~7日程度で回復しますが、体力が低下している高齢者や小児では入院が必要になるケースもあります。
予防のポイント
感染性胃腸炎の予防には以下の点が重要です。
(1) 手洗いの徹底
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石鹸を使い30秒以上手を洗う(指の間や爪の間もしっかり)
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アルコール消毒では不十分 → 流水+石鹸での手洗いが最優先
(2) 食品の取り扱いに注意
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二枚貝(カキなど)は85~90℃で90秒以上加熱
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調理器具は使い分ける(生ものと加熱調理済みのものを分ける)
(3) 環境の消毒
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ノロウイルスはアルコールに強いため、次亜塩素酸ナトリウム(塩素系漂白剤)を使う
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ロタウイルスも環境中で長く生存するため、適切な消毒が必要になります。
(4) 感染拡大を防ぐための注意点
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嘔吐物や便を処理する際は手袋とマスクを着用
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汚染された衣類やリネン類は85℃以上で洗濯
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トイレのフタを閉めて流すことでウイルスの飛散を防ぐ
トイレから感染する可能性が非常に高く、ご家庭内では一番注意する場所です。
(5) ワクチンの活用(ロタウイルスのみ)
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ロタウイルスはワクチンで予防可能(生後6週~24週までに接種推奨)
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ノロウイルスにはワクチンなし → 予防策を徹底する
家族や周りの人にうつさないために
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感染者が使用したタオルや食器を共有しない
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家庭内で感染者のトイレは最後に使う(使用後に消毒)
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回復後も1週間程度はウイルスを排出 → 感染拡大に注意
ノロウイルスやロタウイルスによる感染性胃腸炎は誰でも感染する可能性がある疾患です。
特に、家庭内や施設内での感染拡大を防ぐための対策が重要です。
日常生活の中で手洗い・消毒・食品管理を徹底し、予防に努めましょう。
当クリニックでは、感染性胃腸炎の症状がある方は予約がなくとも当日診療いたします。
お困りのときにはご相談ください。