人間ドックで「頸動脈エコーでIMT肥厚」と言われました。
心臓、特に狭心症や心筋梗塞などの冠動脈疾患、脳血管障害などは、動脈硬化性疾患という枠組みで考えます。
発症リスクは年令を重ねるごとに増えることがわかっています。
長生きするほどに、発症リスクも上がる、ということです。
男性では、50代以降。
女性では60代以降に動脈硬化性疾患は増えていきます。
発症する日まで、症状はきっと何もなかったはずです。
痛い、苦しい、ふらつき、めまい、などなんの症状もない状態だったのに、ある日突然発症することがあります。
しかし、その前の段階で本当に何もなかったのか?
動脈硬化がなかったのか?
ということを明らかにするための検査のひとつに、頸動脈エコー検査があります。
頸動脈エコーでは、内膜中膜複合体(通称 IMT)を測定します。
人間ドックではオプションで検査が行われます。
当院での心臓ドックでは、基本的な検査の一つです。
このIMT が厚くなった状態がプラークと呼びます。
脂の塊、という状態です。
正確には、3層構造ある動脈の壁、の中膜の部分に酸化LDLコレステロールが変性蓄積した状態です。
簡単に言えば、脂がたくさん血管に溜まっていると、心筋梗塞になりやすい。
脳梗塞になりやすい、ということが予測できます。
IMTには2つの指標、評価の仕方があり、これが非常に重要な点となります。
一つには、頸動脈の数カ所のIMTを測定して平均して割り出す、平均IMT mean IMTとよびます。
意外にもこれは、動脈硬化の重症度、つまり心筋梗塞になりやすいかどうかなどの予後との関連は薄いのがわかっています。
もう一つの指標が、最大IMT MAX IMT と呼びます。
一番IMTが分厚いところ、といえます。
このMax IMTにより2つのことが予想できます。
1.冠動脈疾患があるかどうか
狭心症、心筋梗塞につながる冠動脈の動脈硬化による狭窄
2.生命予後
命に関わる心臓脳の発作のリスクがるかどうか。
Maximum carotid intima-media thickness improves the prediction ability of coronary artery stenosis in type 2 diabetic patients without history of coronary artery disease
特に65歳以上の方では、Max IMTが1.18mm以上 になると心臓血管トラブルが上昇することがわかっています。
Carotid-Artery Intima and Media Thickness as a Risk Factor for Myocardial Infarction and Stroke in Older Adults
このグラフは、横軸が右に行くほど、Max IMTが高値(頸動脈の壁が厚い)
縦軸は、1000人あたりの1年あたりの心筋梗塞・脳卒中の発症人数、になります。
IMTが厚い=肥厚していると言われたら
動脈硬化がある。あるいは進んでいる、と解釈できます。
血圧や脂質、血糖の状況はどうか、ということを合わせて考えることが重要です。
タバコや体重といった要素も関わってきます。
まずは食事管理の徹底です。
改善できるところがあるのか?という視点で自分の食生活を見直してみるのが良いです。
自身で見直すのは難しいです。
おすすめは、管理栄養士さんなどに、食事の嗜好を聞いてもらい、それを踏まえて指導してもらうのが良いと考えます。
戸頃循環器内科クリニックでは、一人ひとりに合わせた栄養指導を提案しています。
次に運動療法の力を用います。
運動習慣があれば継続ですし、なければ少しからでもできるような散歩などを行っていくことが大切です。
腰痛や膝の痛みなどの要素は大事ですし、仕事や生活のパターンの中で、運動する時間を見つけていくことも必要です。
さらに必要に応じて薬物治療を考えます。
コレステロールを下げる薬や血圧、血糖管理などがとても重要になります。
これは主治医の先生と相談していくこととなります。
また、半年後、あるいは1年後、2年後と再度検査を行い、MaxIMTに変化、進行がないかを確認することも検討されます。
実際、冠動脈にプラークがあるかどうかなど、直接的に心臓の血管を評価する心臓CTもあります。
当院で行っている検査です。
プラークがあるかどうかだけでなく、プラークの硬さ、柔らかさ、心筋梗塞に結びつくタイプかどうかなども解析しております。
心配なときにはご相談ください。