点鼻薬性鼻炎
花粉症、アレルギー性鼻炎の本格的な時期になってきています。
そんな中、患者さんから時折相談をいただく、市販薬を使っているがなかなか良くならない、余計悪くなって気がする、というときに考えることについてのお話です。
鼻水や鼻づまりが治らなくて、スッキリする鼻薬を使ったことはありませんか?
これらの鼻薬の中には、ナファゾリンやフェニレフリンなどの血管収縮薬が含まれている場合があります。
これらの薬は血管を一時的に縮めることで鼻の通りを良くします。
ただし、基礎にある炎症を治すものではありません。
これらの薬を連続して使うと、体が薬に慣れてしまい、効果が減少してきます。
そして、さらに鼻薬を吸いたくなるという、悪循環に険まれてしまいます。
これが、点鼻薬性鼻炎、と呼ばれる症状です。
このリバウンド現象で鼻の血管が広がり、かえって炎症が悪化してしまいます。
このような鼻薬の使用は、基本的に1週間くらいまでが安全と言われています。
ガイドラインによると、最長でも2週間以内に減量や使用を止めることが推奨されています。
出典: 日本耳鼻科学会 「鼻炎治療ガイドライン」
推奨は、ステロイドの点鼻薬です。
ステロイド点鼻薬(例:フルチカゾン、モメタゾン)は、炎症を抑える作用があります。
アレルギー性鼻炎や慢性鼻炎の治療に広く用いられています。
血管収縮薬と異なり、リバウンド(点鼻薬性鼻炎)を引き起こす心配はありません。
ただし、副作用の可能性の可能性もあります。
ステロイド点鼻薬は、適切に使用すれば副作用のリスクは低いですが、以下のような症状が現れる可能性があります。
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局所的な副作用
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鼻の乾燥や刺激感
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鼻出血(特に鼻中隔に噴霧し続けた場合)
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喉の痛みや嗄声(声のかすれ)
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全身性の副作用(極めてまれ)
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長期間の使用や過剰使用で、副腎抑制(ステロイドの自己産生が低下)
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小児の場合、成長抑制のリスク(高用量を長期間使用した場合)
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眼圧上昇(緑内障の悪化)や白内障の可能性(極めて稀)
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安全に使用するポイント
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用法・用量を守る(通常は1日1~2回、医師の指示に従う)
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鼻中隔に直接噴霧しない(やや外側に向ける)
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乾燥が気になる場合は生理食塩水で保湿
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自己判断で長期使用せず、症状が続く場合は医師に相談
何事も適切に用いることで、メリットを活かし、デメリットを極力減らす、回避することができます。
点眼薬でも、充血した目をスッキリ、とか、赤い目が白くなる!
という謳い文句の点眼薬には、この血管収縮薬が使われています。
同様の理由で、目薬を使うと充血が取れるがまた、すぐ戻る。
点眼>充血>点眼>充血 というサイクルに陥ることも見かけます。
もし長期にわたって点鼻薬に依存している感じがある、点鼻薬の効果が落ちてきたと感じる方は、どんな原因が隠れているか確認するためにも、一度受診されることをお勧めします。
心臓や血管の健康を守るためにも、体調にあった薬を正しく使いたいものです。