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心不全ガイドラインの更新について

[2025.03.31]

2025年版の心不全診療ガイドライン が新しく改訂されました。

 

心不全とは、息切れ、むくみ、疲れやすさ が主な症状です。 

実は症状が出る前から気をつけることで、心不全の発症を防ぐことができます。

今回の改訂では、心不全になる前の段階(ステージA・B)」での予防と管理がこれまで以上に重要だと強調されています。

これは以前から、循環器科医からはいわれていたことです。

実際に心不全になり、病院での治療が必要になる前からやれることがある、ということです。

そこで、今回は 心不全を未然に防ぐためのポイント についてお伝えします。

 

 

 

ステージA:心不全リスクのある方へ

「ステージA」 とは、まだ心不全にはなっていないけれど、リスクを抱えている状態です。

例えば、次のような方が当てはまります。

高血圧症

糖尿病

肥満

脂質異常症(コレステロールが高い)

慢性腎臓病

喫煙歴がある

家族に心不全や心筋梗塞の方がいる

 

以前は慢性腎臓病はここに入っていませんでした。

でも腎機能が低下している方は、心不全発症リスクがあり、注意が必要であることは明らかでした。

今回から、改めてリスクがある旨を提示されました。

 

ステージAで大切なこと

  1. 運動と体重管理を意識する

     1日30分程度のウォーキングを週5回、もしくは週150分程度の運動が目標です。
     
    運動は苦手…という方も、まずは 1日10分の散歩 から始めてみるのがおすすめです。

    最初は少しから、が基本です。

  2. 食生活の見直し

     塩分の摂取は 1日6g以下 に抑え、野菜・果物・魚を多めに取り入れる「地中海式食事」が推奨されています。

     外食時は 減塩 を意識し、ラーメンのスープは飲み干さないなど、少しずつ心がけることが大事です。
     
     スープを飲み干すほどにうまい、という表現がありますが、ご自身の身体を守るのは日々の選択によるものです。

  3. 禁煙・節酒を心がける

     喫煙は動脈硬化を進行させ、心不全のリスクを高めます。

     お酒も適度にされるのがよいです。


ステージB:前心不全の方へ

ステージBとは、まだ症状はないけれど、心臓にダメージが蓄積している状態です。

次の方は、すでにステージBといえます。

 高血圧が長く続いている

 心筋梗塞を経験した

 心エコーで心室肥大 心房拡大と言われた

 弁膜症や心筋症を指摘されている


 ステージBで大切なこと

この状態では、心臓の構造・機能に変化、低下が見られます。

そのため、まずはステージBであるということを判定することが重要です。

そのため、血液検査心エコー検査を併用する、ということが手助けとなります。

心エコーは心臓超音波検査、という表現も用いられます。

ステージA と考えられている方でも、心エコーの結果から、実はステージBであった、ということは日常よく拝見します。

この時期では、構造機能に変化が見られているため、食事運動管理のみならず薬物治療の選択も非常に重要になります。

血圧が高いから降圧剤を服用されている、は普通です。

しかし、ステージBでは、どの薬剤で降圧治療を行っているのか、が重要になります。

  1. ACE阻害薬・ARBの活用
     
     心筋梗塞後や左室機能低下がある方には、ACE阻害薬(エナラプリル、ペリンドプリルなど)や ARB(カンデサルタン、バルサルタンなど)が心不全の進行を防ぎます。
     
     最近では、ARNI(サクビトリル・バルサルタン  商品名 エンレスト)という薬剤で、治療を検討する医師も増えてきています。

  2. β遮断薬の適切な使用

     カルベジロール、ビソプロロール などのβ遮断薬は、心臓の負担を軽減し、長期的な予後を改善します。

  3. SGLT2阻害薬が有効

     糖尿病がある方には、SGLT2阻害薬(エンパグリフロジン、ダパグリフロジンなど)が、心不全発症を防ぐ効果が期待されています。
     
     この薬剤は、糖尿病のみならず、慢性腎機能障害や、心不全でも治療に用いられます。


内服薬を開始するのみならず、量の調整、増減が必要です。

やはり心エコーやレントゲン、心電図検査結果と血液検査、症状と合わせて投薬内容の調整を行っていきます。

予防段階において、とても重要な点です。

 

 BNP/NT-proBNPで早期発見を

今回のガイドライン改訂では、BNP / NT-proBNPのスクリーニング がさらに推奨されています。

ナトリウム利尿ペプチド と呼ばれています。

BNP(またはNT-proBNP)は、心臓にかかる負担を反映するホルモンです。

ステージA・Bの方でも、年に1回のBNP測定 で、心不全のリスクを早期に見つけることができます。

 心不全は、「早く見つけて、早く対策する」 ことが何より大切です。

 

心不全は予防できる。

2025年版ガイドラインでは、「症状が出る前に予防する」 という考え方が強調されています。

ステージA・Bでしっかり予防をしていけば、心不全の発症を防ぐことができ、将来の健康寿命を延ばすことにもつながります。

当院では、毎日心エコー検査が可能です。

BNP測定、生活習慣のアドバイス も行っています。

まだ大丈夫、と思っている今こそ、自分の心臓を守りはじめる最適時期です。

 

 戸頃循環器内科クリニックでは、毎日心臓検査が可能です。

気になる方は、いつでもお気軽にご相談ください。

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