心不全ガイドラインの更新について
2025年版の心不全診療ガイドライン が新しく改訂されました。
心不全とは、息切れ、むくみ、疲れやすさ が主な症状です。
実は症状が出る前から気をつけることで、心不全の発症を防ぐことができます。
今回の改訂では、心不全になる前の段階(ステージA・B)」での予防と管理がこれまで以上に重要だと強調されています。
これは以前から、循環器科医からはいわれていたことです。
実際に心不全になり、病院での治療が必要になる前からやれることがある、ということです。
そこで、今回は 心不全を未然に防ぐためのポイント についてお伝えします。
ステージA:心不全リスクのある方へ
「ステージA」 とは、まだ心不全にはなっていないけれど、リスクを抱えている状態です。
例えば、次のような方が当てはまります。
高血圧症
糖尿病
肥満
脂質異常症(コレステロールが高い)
慢性腎臓病
喫煙歴がある
家族に心不全や心筋梗塞の方がいる
以前は慢性腎臓病はここに入っていませんでした。
でも腎機能が低下している方は、心不全発症リスクがあり、注意が必要であることは明らかでした。
今回から、改めてリスクがある旨を提示されました。
ステージAで大切なこと
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運動と体重管理を意識する
1日30分程度のウォーキングを週5回、もしくは週150分程度の運動が目標です。
運動は苦手…という方も、まずは 1日10分の散歩 から始めてみるのがおすすめです。
最初は少しから、が基本です。
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食生活の見直し
塩分の摂取は 1日6g以下 に抑え、野菜・果物・魚を多めに取り入れる「地中海式食事」が推奨されています。
外食時は 減塩 を意識し、ラーメンのスープは飲み干さないなど、少しずつ心がけることが大事です。
スープを飲み干すほどにうまい、という表現がありますが、ご自身の身体を守るのは日々の選択によるものです。 -
禁煙・節酒を心がける
喫煙は動脈硬化を進行させ、心不全のリスクを高めます。
お酒も適度にされるのがよいです。
ステージB:前心不全の方へ
ステージBとは、まだ症状はないけれど、心臓にダメージが蓄積している状態です。
次の方は、すでにステージBといえます。
高血圧が長く続いている
心筋梗塞を経験した
心エコーで心室肥大 心房拡大と言われた
弁膜症や心筋症を指摘されている
ステージBで大切なこと
この状態では、心臓の構造・機能に変化、低下が見られます。
そのため、まずはステージBであるということを判定することが重要です。
そのため、血液検査と心エコー検査を併用する、ということが手助けとなります。
心エコーは心臓超音波検査、という表現も用いられます。
ステージA と考えられている方でも、心エコーの結果から、実はステージBであった、ということは日常よく拝見します。
この時期では、構造機能に変化が見られているため、食事運動管理のみならず薬物治療の選択も非常に重要になります。
血圧が高いから降圧剤を服用されている、は普通です。
しかし、ステージBでは、どの薬剤で降圧治療を行っているのか、が重要になります。
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ACE阻害薬・ARBの活用
心筋梗塞後や左室機能低下がある方には、ACE阻害薬(エナラプリル、ペリンドプリルなど)や ARB(カンデサルタン、バルサルタンなど)が心不全の進行を防ぎます。
最近では、ARNI(サクビトリル・バルサルタン 商品名 エンレスト)という薬剤で、治療を検討する医師も増えてきています。 -
β遮断薬の適切な使用
カルベジロール、ビソプロロール などのβ遮断薬は、心臓の負担を軽減し、長期的な予後を改善します。 -
SGLT2阻害薬が有効
糖尿病がある方には、SGLT2阻害薬(エンパグリフロジン、ダパグリフロジンなど)が、心不全発症を防ぐ効果が期待されています。
この薬剤は、糖尿病のみならず、慢性腎機能障害や、心不全でも治療に用いられます。
内服薬を開始するのみならず、量の調整、増減が必要です。
やはり心エコーやレントゲン、心電図検査結果と血液検査、症状と合わせて投薬内容の調整を行っていきます。
予防段階において、とても重要な点です。
BNP/NT-proBNPで早期発見を
今回のガイドライン改訂では、BNP / NT-proBNPのスクリーニング がさらに推奨されています。
ナトリウム利尿ペプチド と呼ばれています。
BNP(またはNT-proBNP)は、心臓にかかる負担を反映するホルモンです。
ステージA・Bの方でも、年に1回のBNP測定 で、心不全のリスクを早期に見つけることができます。
心不全は、「早く見つけて、早く対策する」 ことが何より大切です。
心不全は予防できる。
2025年版ガイドラインでは、「症状が出る前に予防する」 という考え方が強調されています。
ステージA・Bでしっかり予防をしていけば、心不全の発症を防ぐことができ、将来の健康寿命を延ばすことにもつながります。
当院では、毎日心エコー検査が可能です。
BNP測定、生活習慣のアドバイス も行っています。
まだ大丈夫、と思っている今こそ、自分の心臓を守りはじめる最適時期です。
戸頃循環器内科クリニックでは、毎日心臓検査が可能です。
気になる方は、いつでもお気軽にご相談ください。