コレステロールの治療薬が心不全を減らす可能性について
高コレステロール血症。あるいは脂質代謝異常。
当然これらの病気では生活習慣管理が重要です。
油物を避け、日常的な運動を行なっていきます。
お薬では、スタチン、という薬剤が第一選択になります。
日本で選択できるこのスタチン系列は現状全て特許が切れており、いわゆるジェネリック、後発品として利用可能です。
この、スタチンはコレステロール、特に悪玉コレステロールLDL-cを下げるだけでなく、炎症を抑える作用があることがわかっています。
動脈硬化は、血管壁内にLDL-cが迷入し炎症性代謝を受け、粥腫、いわゆるプラークになっていきます。
プラークが増えれば、血管は狭窄していき、血流が低下していきます。
十分な血流がなければ、虚血、きょけつ という状態になります。
スタチンは、このプラークの増加を抑えてくれたり、LDLを減らしてくれる作用があり繁用されております。
この、スタチンは実は心不全発症を減らす、ということも報告されております。
J Am Coll Cardiol 2006;47:2326–31
この論文では、スタチンは、特に心筋梗塞などの心臓血管リスクの高い方々が服用していると、スタチンを飲んでいない方々に比較して、狭心症、心筋梗塞になりにくい、かつ、心不全の発症も抑制する、ということが示されています。
心臓関係で突然、入院するような事態を減らしてくれる、ということです。
European Heart Journal (2015) 36, 1536–1546
これは、メタ解析といって、多くの研究を束ねて解析したものです。
同様に、心筋梗塞患者さんで、スタチン内服加療を行っていると、心不全入院を抑えることができている、ということです。
さらに、一次予防、つまりまだ心不全になったことがない、あるいは二次予防、心不全で退院後の再発に対して
その両方で、スタチンが心不全入院を減らした、ということが報告されています。
当院では、コレステロール治療において、LDL-cが高値かどうか、という視点や、将来の心筋梗塞リスクの評価、現状の動脈硬化や血管の状態なども加味し、スタチン治療の必要性を検討しています。
異常な数値を正常化させることは、目標とはなり得ません。
目標値、という表現を用いますが、真の目標は違います。
心不全にならないこと
心不全になったとしても、再発をしないこと
狭心症にならなようようにすること
狭心症の再発を防ぐこと。
心筋梗塞にならないようにすること。
心筋梗塞の再発を防ぐこと。
狭心症では、カテーテル治療で血管を広げる治療も行われます。
でも再発しないようにしっかり徹底的に食事や運動管理、薬物治療を行っていき、もう二度とつらい目に合わないようにすることが重要であると考えます。
血液検査はあくまでも指標の一つ、ということです。
今回は、スタチンが心不全を予防する可能性についての話でした。
でも、お薬を一つ飲めば、すべてが解決するわけではありません。
他の薬との組み合わせや、ご自身の体調との相性や都度都度の状況も変わってきます。
定期的な外来での診察や検査などでしっかり状態を評価しつつ必要・不必要な治療の調整を行って参ります。