経口補水液とスポーツドリンクのちがいについて
脱水時・日常・持病がある方での正しい使い分け
夏の暑さや感染性胃腸炎、嘔吐や下痢があるときに。
「スポーツドリンクを飲んでおけば大丈夫ですか?」
と聞かれました。
しかし、それは状態によっては逆効果になることもあります。
特に、高血圧や心不全がある方では注意が必要です。
今回は、経口補水液とスポーツドリンクの違いに加え、持病がある方の塩分・水分管理の視点からの正しい使い分けをご紹介します。
経口補水液とは?
経口補水液(ORS)は、感染性胃腸炎、嘔吐、下痢、発熱などによる脱水時に用いる、医療的な水分補給飲料です。
薬局ではOS-1 という商品名で売られているものが有名と思います。
世界保健機関(WHO)も推奨しており、水分だけでなく失われたナトリウム(塩分)やカリウムを効率よく補えるように設計されています。
市販品は「特別用途食品(病者用)」として国の制度に基づいて製造・販売されており、スポーツドリンクとは成分が大きく異なります。
◆ スポーツドリンクとの違い
成分 | スポーツドリンク | 経口補水液 |
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ナトリウム | 10〜50mg/100ml程度 | 80〜115mg/100ml前後 |
カリウム | 少ない | 多い |
糖分(ブドウ糖) | やや多い(味が甘い) | 少なめ(吸収補助) |
使用目的 | エネルギー・水分補給 | 医療的な脱水対応 |
普段の飲用 | ○ | ×(脱水時に限る) |
◆ 経口補水液を使うべき場面
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感染性胃腸炎による下痢・嘔吐
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発熱による脱水
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高齢者や乳幼児の水分摂取量が不十分なとき
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熱中症の初期対応
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食事・水分がとれない状態での短期的な補給
注意:高血圧・心不全の方はどうすべき?
高血圧の方へ
経口補水液はナトリウム(塩分)が多く含まれているため、日常的に飲むと塩分摂取量が過剰になるおそれがあります。
特に「減塩指導」を受けている方は、脱水時でも医師の指示がない限りむやみに経口補水液を飲まないよう注意しましょう。
心不全の方へ
心不全の管理では「水分制限と減塩」が重要です。
水分や塩分を過剰に摂取すると、体内に水が溜まり、息切れやむくみの悪化を引き起こすことがあります。
心不全の方が下痢や発熱で経口補水液を使う場合は、必ず医師に相談のうえ、必要量だけ飲むことが鉄則です。
また、「経口補水液だから安心」と思って1日1本を毎日飲むような使い方はNGです。
普段の水分補給は?
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健康な方:水、麦茶、薄めたお茶などを中心に
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高血圧や心不全の方:医師の指導のもと、水分制限・塩分制限に合わせた量で
※スポーツドリンクや経口補水液を「日常的に飲み物として摂る」ことは基本的には避けてください。
スポーツドリンクは糖分も多く、飲み続けると高血糖・糖尿病に至る可能性もあります。
経口補水液は非常に優れた医療ツールですが、正しく使ってこそ効果を発揮します。
高血圧や心不全など慢性疾患がある方では、むしろ悪化の引き金になることもあるため、必要に応じて医師の判断のもと使いましょう。
スポーツドリンクと並んで薬局で売っているのをよく見かけますが、危険だなと思っています。
状況に迷うときは、いつでも戸頃循環器内科クリニックへご相談ください。
つまり
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経口補水液は、脱水時専用の医療用飲料
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スポーツドリンクとは成分と目的が異なる
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高血圧・心不全の方は、医師の指導なしに経口補水液を常用しないほうがいい
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脱水が心配なときは、自己判断せずに医師へ相談を
参考ページ
消費者庁 経口補水液について