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糖尿病は治らない病気なのか?

[2025.07.15]

「糖尿病って、一度なったら一生の付き合いですよね?」

本当にそうなのか。

という事を考えてみます。

たしかに以前はそう考えられていましたが、近年では「糖尿病は寛解(かんかい)できる病気」という考え方が広がっています。


寛解とは「治る」こと?

糖尿病の「寛解」とは、薬を使わずにHbA1cが6.5%未満の状態を1年以上維持している状態を指します(ADA, 2021)

完全に“治った”というより、【一時的に病気の影響が消えている状態】と捉えるのが正確です。

 

日本人における寛解率:JDDM73研究から

日本糖尿病データマネジメント研究(JDDM)グループが行ったJDDM73研究(2023年発表)は、

「日本人2型糖尿病患者における寛解の実態と予測因子」を初めて大規模に調査した研究です。

主な結果は

  • 観察対象:約3,600人の2型糖尿病患者(全国の糖尿病専門クリニック)

  • 寛解達成者は全体の7〜10%程度 

    10人にひとり、くらいの割合

     

  • 寛解しやすかった人の特徴は

    • 発症から5年未満

      検診でもなんでも見つかってから時間が経っていない
      つまり、糖尿病かも?と言われたら、「なるはや」で受診が大切。

    • BMIが27以上

      肥満、は問題ではないです。
      むしろ、可能性を感じます。

      肥満が主因でインスリン抵抗性が高まっている場合、減量でインスリン感受性が改善し、寛解が起きやすい、ということです。

      【Look AHEAD試験】【DiRECT試験】などでも、10%以上の体重減少で寛解率が大きく上昇してます。

      肥満≒可逆性が高い糖尿病>>現代なら、どうにかできそう、ともいえます。

    • HbA1cが8.0%未満

      軽症ほど、寛解しやすい、のは想像通りかもしれません。

    • インスリン分泌が保たれている(空腹時Cペプチド > 1.0)

      75g OGTT検査をして、インスリン分泌が正しく評価します。
      当院では、積極的に検査をしています。

    • 集中的な生活習慣改善やGLP-1治療を導入していた

      どの治療薬を選ぶか、でも寛解に影響・効果の違いが出る、ということです。



重要なポイント

欧米人より痩せ型で、インスリン分泌不足が主体の日本人では、体重減少だけでは寛解に至らないことも多い、です。

しかし、早期から適切な介入をすれば、寛解は十分に現実的な目標となります。

(JDDM研究グループ・2023年日本糖尿病学会年次集会発表)

 

 寛解後も安心ではない>再発のリスク

寛解したからといって、それで安心とはいえません。

  • DiRECT試験(英国)】では、寛解達成者のうち約50%が5年以内に再発

     

  • JDDM73でも、体重の再増加や運動習慣の中断でHbA1cが再び上昇するケースが報告されています


つまり、寛解は「スタート地点」であり、継続的な生活習慣管理が必要です。

寛解しなきゃ、だめなのか。

そんなこともありません。

しっかり研究されています。


糖尿病が残っていても心臓は守れるの?

これは非常に重要なテーマです。

最近のスウェーデンの大規模研究(Swedish NDR, N Engl J Med 2018)では、

糖尿病がある人でも、「血糖(A)・血圧(B)・コレステロール(C)」の3つをしっかり管理できている人は、
心筋梗塞や脳卒中のリスクが、糖尿病のない人とほぼ同じだったと報告されています。

 寛解よりも“ABC管理”が大切

当院では、寛解そのものをゴールとするのではなく、心血管リスクの低減=健康寿命の延伸を第一に考えています。

そのために重視しているのが「ABC管理」です。

項目 管理目標(目安) 意味
A = HbA1c(血糖) < 7.0% あるいは<8.0% 糖尿病の進行と合併症を予防
B = Blood Pressure(血圧) < 130/80 mmHg 脳卒中・腎症のリスク低減
C = Cholesterol(LDL-C) < 100 mg/dL(動脈硬化があれば70未満) 動脈硬化と心疾患の予防

これらを総合的に管理することで、糖尿病のある人でも心臓・血管の病気を防ぐことができます。


大事なことは

糖尿病が「寛解」する人もいます。

けれど、「寛解しなかったからダメ」ということではありません。

重要なのは、「血糖・血圧・脂質を含めた全体のリスクをしっかり整えていくこと」です。

そしてそれは、決して一人では難しいことです。

私たち戸頃循環器内科クリニックは、糖尿病のその先=心臓・血管・腎臓を守る医療を目指しています。

 

 

“数値を下げる”

ことだけが目的ではなく

“毎日を安心して暮らせる体づくり”

を一緒に考えていきます。

 

 

参考文献・出典

 

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