夏のインフルエンザとワクチンの記憶
猛暑が続いています。
クリニックでも冷房環境を強化して、少しでも心地よく受診いただけるよう環境整備をしております。
当院には【発熱外来】を併設しております。
体温を超える最高気温、という表現もよく使われていますが、さらにその気温を上回るような発熱で苦しまれている方もいます。
容易に脱水にもなりやすく、注意が必要な季節です。
もう新型、と呼ぶには随分と定着してしまった感のある新型コロナの感染の方もいます。
7月のインフルエンザにかかられている方もいらっしゃいます。
季節性インフルエンザ、とはいうものの、夏にもインフルのことを考えます。
今年はそのインフルエンザのワクチンに関して、ニュースがあります。
予防できることは予防しておく、というのが大事と思っていますが、ワクチンはその代表です。
2024年末から明けての正月でインフルエンザが大流行したことはつい先日に感じます。
それがもう次のシーズに備えてワクチンのことを考えるのですから時がすぎるのは早いもの。
インフルエンザが陽性の方の診察のときに心がざらつくのは
「ワクチンを打ったのにかかってしまった」、という言葉です。
ワクチンは重症化を防ぐことが主な目的です。
国立感染症研究所 厚生労働省健康・生活衛生局感染症対策部感染症対策課 令和5年12月19日
ワクチンではすべての感染を防げるわけではありません。
でも重要化を防ぐ、とか、入院しないで済む程度、でも一定の役割はあります。
ワクチンは加齢により有効性が低下することも知られています。
免疫低下、という現象です。
ワクチンの有効性が落ちつつも、入院や重症化のリスクが高い高齢者の方のためにもう一歩強い予防策を講じられたら……
そう感じていたところに登場したのが、新しいワクチン「エフルエルダ」です。
エフルエルダは、60歳以上の高齢者の方のために特化して開発された、4価インフルエンザワクチンです。
エフルエルダって
「4価」とは、4種類のインフルエンザウイルス(A型2種、B型2種)に対応しているという意味です。
従来のワクチン(3価ワクチン)ではB型のうち1系統にしか対応できず、もう一方の流行株には効かない年もありました。
その教訓から、現在はB型も2系統しっかり含めた4価のワクチンです。
さらに、エフルエルダはこの4価に加えて抗原量が通常の4倍。
高齢者ではワクチンによる免疫の立ち上がりが弱くなりがちですが、この高用量設計により、より強い免疫反応が期待できるのです。
戸頃循環器内科クリニックには、動脈硬化、高血圧、心不全といった持病をお持ちの高齢の患者さんが多く通院されています。
こうした方々がインフルエンザにかかると、肺炎や心血管イベント(心筋梗塞など)といった重篤な合併症につながることがあります。
だからこそ、より確実な予防策が必要です。
アメリカでは65歳上の方に、イギリスでは60歳以上のリスクの高い方に
ドイツでは60歳以上の全ての方にこの高用量インフルエンザワクチンをガイドラインで推奨しています。
それらの状況を踏まえたうえで
当院では今年、希望される60歳以上の方に対して、積極的にこのエフルエルダを選択していきたいと考えています。
すでに海外で広く長く使われているワクチンがついに日本で利用可能になったのはとても良いことと思っています。
有効性も安全性もしっかり検討評価され尽くしています。
年末年始の感染爆発を防ぐために
毎年、12月から1月にかけては人の移動が増え、感染症の流行がピークになります。
昨冬のように、「気をつけていたのに家族みんなが寝込んでしまった」という声を数多く聞きました。
「一人暮らしだけど、インフルエンザにかかってしまったらどうしよう」という不安の声もお聞きしました。
このエフルエルダをしっかり使うことで、地域全体の重症者・入院者を減らすことにもつながります。
つまり、私たちが1人ひとりにできる予防が、家族や社会を守ることにもなるのです。
漠然とした不安にも立ち向かうこともできます。
最後に
「前は効かなかったから、もう打たなくてもいいや」と思われた方にこそ、今年のエフルエルダはぜひお勧めしたいワクチンです。
60歳以上のかた限定です。
安心して年末年始を過ごせるようしていきたいです。
【発熱外来】は一年中稼働していますが、予防をしっかりしておくことにも価値があります。
こんな猛暑のなかでも、秋から冬のことを考えています。
予定ではインフルエンザワクチンは2025年10月ごろから開始予定で準備を進めています。
正式に決まったらお知らせいたします。