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糖尿病治療方針についてのメモ その1

[2025.05.07]

欧米人と日本人・アジア人では糖尿病の成り立ちが違う?

糖尿病と聞くと「甘いものの食べ過ぎ」「太り過ぎ」といったイメージを持たれるかもしれません。

しかし実は、日本人を含むアジア人と、欧米人とでは糖尿病のなりやすさも、その背景にある原因も大きく異なっています。

日本人は「インスリンを出す力」が弱い体質

2型糖尿病は、ざっくり言えば「インスリンがうまく効かない」か「インスリンが十分に出ない」ことで血糖値が高くなる病気です。

欧米人では多くの場合、肥満が進みインスリンの効き目(感受性)が悪くなる「インスリン抵抗性」が主な原因です。

ところが日本人は、たとえ太っていなくてももともと「インスリンを出す力」が弱く、それが糖尿病の主な原因になることが多いのです。

また、日本人の膵臓では、肥満になってもインスリンを分泌する細胞(β細胞)の量があまり増えないという体質的な特徴も報告されています。

同じ「糖尿病」でも原因が違えば治療戦略も変わる

欧米では「まずは体重を落としましょう。

薬はメトホルミン(インスリンの効きを良くする薬)から始めましょう」というのが標準的な戦略です。

一方、日本では患者さんごとに

「インスリンの出が悪いのか」

「インスリンが効きにくいのか」

「年齢や合併症はどうか」

などをきちんと評価して、DPP-4阻害薬やGLP-1受容体作動薬などを柔軟に使い分けることが推奨されています。

当院ではよく75g OGTT検査を行っています。

初期の段階からどのタイプなのかを評価して、早期の段階からどう過ごしてくことが良いのか?

何に気をつけていれば、将来を守れるのか?

治療するならどのタイプの薬剤を選択するのがベストか?

そういった視点から治療に取り組んでいます。

当院のOGTT検査解説ページはこちら。

日本人の糖尿病は「やせ型」にも多い

驚くことに、日本人の2型糖尿病患者の中には、BMIが23未満、つまりいわゆる「やせ型」の方も少なくありません。

この場合、インスリンを出す力の弱さが主な原因となっているため、血糖値を下げる薬の選び方も欧米とは異なります。

2型糖尿病の薬物治療アルゴリズム というものがあります。

この中では、目標 HbA1cを決めてから

>非肥満・肥満 に分けて薬剤選択しよう、という事になっています。

その境目は、BMI 25 です。

でも実際にはBM 24と26には大きな差はないですし、そのあたりの体型の糖尿病の方も多くいらっしゃるために、なかなかBMIだけで薬剤を決めることは難しかったりします。

糖尿病と腎臓、心臓、血管病の合併は特別な対応が必要

さらに。

腎臓の機能、心不全、心血管疾患(狭心症とか心筋梗塞など)があるかどうかで薬剤が決まっていきます。

SGLT2阻害薬は、このどれにも有効であり、2025年時点における2型糖尿病治療では非常に重要な薬剤です。

GLP1受容体作動薬、というのは聞き慣れない表現かもしれません。

薬剤名で言えば、リベルサス(セマグルチド 内服薬)とかマンジャロ(チルゼパチド 週一回の注射薬) というものがあります。

糖尿病の血糖の管理状態と併存疾患の状況によりSGLT2阻害薬とGLP1受容体作動薬の併用を行うこともあります。

2025年ではこのGLP1受容体作動薬をうまく使うのが、将来の心臓病を減らし、腎臓を守っていくことができる鍵と思っています。(院長の個人の感想です。)

まとめると

  • 日本人・アジア人の糖尿病は「インスリンを出す力が弱い」ことが主な原因。

  • 治療薬の選び方も、この違いを踏まえた戦略が重要です。

  • やせ型でも糖尿病になる日本人では、早期発見と丁寧な評価が鍵となります。

当院では、患者さん一人ひとりの体質や生活習慣をしっかり見極めて、最適な糖尿病治療を提案しています。

「自分は太っていないから大丈夫」と思わず、健診などで血糖値などでなにか言われたら、気軽にご相談ください。

早めにちゃんと評価しておくと、安心して毎日を過ごせますよ。

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