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NAFLDからMASLDへ 脂肪肝と心臓病について

[2024.11.12]

脂肪肝、という言葉は日常生活でも使われるようになっています。

でも、この病気を正しく説明するのは少し知識が必要です。

 

脂肪肝とは、肝細胞に中性脂肪が蓄積した状態のことです。

 

さまざまな肝障害を引き起こします。

食事で摂った脂質や糖質は小腸で吸収され、肝臓で脂肪酸やブドウ糖に分解され中性脂肪がつくられます。

 

この中性脂肪は肝細胞の中に溜め込まれ、必要に応じてエネルギーとして用いられます。

 

消費エネルギーと摂取エネルギーのバランスがとれていればいい状態です。

 

ただ、運動不足の状態で脂質や糖質を摂りすぎると使用するエネルギーよりも中性脂肪の方が多くなり、肝細胞や皮下脂肪にどんどん溜まっていきます

この中性脂肪が肝細胞に30%以上たまった状態が脂肪肝です。

 

BMIが高い人ほど脂肪肝の頻度も高い傾向にあります。

ただし、BMIが25未満で肥満体型ではない見た目がスリムな痩せ型の人にも脂肪肝がみられる場合があります。

これを「隠れ脂肪肝」と呼びます。

 

また、脂肪肝の多くはメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)と関係しており、脂質異常や動脈硬化、糖尿病の主要な原因になりうる可能性もあります。

 

脂肪肝は、肝臓の問題だけでなく、心血管疾患のリスクになる、ということです。

 

アルコールを飲みすぎて肝臓に中性脂肪がたまる脂肪肝をアルコール関連肝疾患 ALDといっています。

飲酒をやめると、改善してくることが多いです。

 

いわば、思い当たることがある、という状態です。

でも、お酒をめったに飲まないのに脂肪肝になることもあります。

今日はここの話です。

 

NAFLDと心血管疾患の関連性

以前は、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)と呼ばれていました。

ナッフルディーと読むことが多っかたです。

2023年6月から、この名前をやめて、MASLD(マッスルド・マッスルディー どちらも通じます) と呼ぶことになりました。

 

脂肪肝に加え、肥満、耐糖能異常(糖尿病)、高血圧、高中性脂肪血症、低HDL血症のいずれかを併発している疾患を指します

 

アルコールを常用していると起こる脂肪肝が、飲まない人なのに脂肪肝になっている、というところから名付けれた経緯があります。

 

なぜ、英語で呼ぶのか?

答えは簡単です。

日本語でいうと、「代謝機能障害関連脂肪性肝疾患」が正式名称だからです。

呼んでられません。

 

肝線維化と心血管イベントのリスク

NAFLDの進行に伴い、肝線維化が進展すると、心血管イベントのリスクも増加することが報告されています。

Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular BiologyVolume 42Issue 6June 2022Pages e168-e185

 

2022年の論文なので、当時のNAFLDという言葉を使っています。

この報告で一番重要なことは、NAFLDでは一般人口と比較して、全死亡率・肝疾患死亡率が増加すること。

特に、心血管イベントリスクが増加することです。

 

さらに。

Association between non-alcoholic fatty liver disease and cancer incidence rate
Kim, Gi-Ae et al. Journal of Hepatology, Volume 68, Issue 1, 140 - 146

この論文ではNAFLDの死亡原因は多い順が解析されています。

 

心血管イベント(心筋梗塞など)

肝以外の悪性新生物(子宮がん 乳がん 前立腺がん 大腸がん 肺がん)

肝関連イベント (肝硬変へ移行していきます)

であると報告されています。

 

肝臓の専門の先生と話をすると、脂肪肝の本質は肝臓の線維化にあり、その線維化を評価していくことが大事だといわれます。

しっかり評価するには、肝生検、つまり組織をとって顕微鏡で見るということになります。

負担が大きすぎるので気軽には進められません。

最近では、血液検査でAST/ALTと 血小板数、年齢で評価するFIB-4 indexと、エコー検査である程度評価が可能です。

 

ただし。

この論文では、肝線維化と心血管イベントの関連は乏しい、と書かれています。

 

ではどう考えるか。

脂肪肝があるのなら、心電図評価をしっかり行うこと、脳や心臓血管疾患の既往があるかどうかを評価することが非常に重要であるといえます。

 

日本消化器病学会と日本肝臓学会が2020年に出したNAFLD/NASH診療ガイドラインでは

肝線維化の程度に応じて、肝疾患関連イベントだけでなく、心血管系イベント他臓器悪性疾患などの肝疾患関連以外のイベントも考慮したフォローアップを行うことが推奨されています。

 

脂肪肝、というと消化器内科の先生たちの領域に思えますが、循環器内科医としてはしっかり評価が必要です。

 

メタボ、アルコール常飲などのかたでは脂肪肝の評価を行い、MASLDに当たるのならば、しっかり心臓血管の評価と治療を行っていくことが重要です。

 

脂肪肝を治療することが、  心臓病の予防になるのです。

 

まとめ

NAFLDは肝疾患だけでなく、心血管疾患のリスクも高めることが明らかになっています。

特に、肝線維化の進展やメタボリックシンドローム関連因子の存在が、肝臓の状態の悪化や、心血管イベントの発症リスクや要因となります。

 

新たな疾患定義であるMASLDの考え方の導入により、より包括的な、患者さん自身の全体像をとらえたリスク評価と管理が可能となることが期待されます。

 

日常生活においては、適切な食事、運動、生活習慣の改善を通じて心臓血管リスクを減らしていくことが大切です。

 

戸頃循環器内科クリニックでは、このMASLDをしっかりと評価し、治療を進めていきます。

 

腹部エコー検査で脂肪肝を見つけることができます。

当院では、毎日エコー技師2名体制なので、予約がなくとも検査可能です。

その際には、食事を抜いて、食べずにいらっしゃっていただければ当日検査可能です。

食後は、胆のうが縮むため、各臓器が見えにくくなるためです。

早期発見こそが、治療を容易にし、よりよい生活につながると考えています。

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