卵と玉子とコレステロール
「卵」と「玉子」の違いをご存じでしょうか。
普段何気なく使っている言葉ですが、違う表現である以上、違うことを指していると思われます。
まず、一文字の「卵」。
これは、鳥や魚、虫など、孵化して成長する生き物のたまごを指します。
つまり、自然界に存在するたまご全般が「卵」というわけです。
鳥の巣にあるたまごや、川で見かける魚のたまごなど、まさに生命の象徴です。
一方で、二文字の「玉子」はというと、主に食用としてのたまごを指します。
特に、鶏のたまごをイメージする方が多いと思います。
ここが少しややこしいのですが、生の鶏卵を表す場合は「卵」、それを調理した後は「玉子」と書くのが一般的です。
例えば、生卵は「卵」、玉子焼きは「玉子」といった具合です。
12月21日 明日はコレステロールについての講演会を予定しています。
きっと聞かれるであろう、玉子は何個食べていいのか問題というのがあります。
厚生労働省が5年ごとに発表する「食事摂取基準」というものがあります。
2010年までコレステロール摂取量の目標値(成人男性は1日750mg未満、成人女性は1日600mg未満)でした。
コレステロール含有量の多い(210mg/個)鶏卵は 1個/日までという事になっていました。
黄身はコレステロールが豊富です。
しかし、この目標値は2020年度に削除されています。
食事中のコレステロール摂取量と、血中コレステロールが相関しないのでは? という疑問があるからです。
2013年にアメリカ心臓病学会とアメリカ心臓協会がコレステロール摂取量を減らしても体内のコレステロール値を低下させるのか、について明らかな根拠が無いと発表しました。
重要なことなので、もう一度。
コレステロールを制限しても、血中コレステロールは減るかどうか、怪しいよ、ということです。
コレステロールは体内で合成するからね、ということです。
血中コレステロールを下げたい、と思うのは、血管をつまらせたくない、脳梗塞や心筋梗塞にならないようにしたい、ということです。
玉子摂取でわずかにコレステロールが上昇するという報告はあります。
Effects of Egg Consumption on Blood Lipids: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Clinical Trials
2017
逆に、玉子 6個/週までは心血管リスクを低下させる、とのメタ解析研究(Eur J Nutr. 2020 Aug 31)もあります。
食べたものがすべて体内に吸収されるわけではない、ということです。
コレステロールに関しては、摂取していなくても体内で合成しています。
遺伝などで、たくさん合成してしまう方もいます。
体質と呼ぶこともあります。
家族性高コレステロール血症は日本では、500人に1人いると言われています。
遺伝子の影響で、大してコレステロールを摂っていなくとも、、血中コレステロールが多いかたもいるということです。
診察室でよくある会話で、そんなにあぶらとってないんですけどねー という言葉があります。
真実、そんなに取ってないんだと思います。
肝臓でたくさん合成してしまうということだと思います。
もちろん、甲状腺ホルモンの低下や女性ホルモンの分泌が落ちてくると血中コレステロール値は増加していくことがあります。
他の病気やライフステージの体の変化の影響です。
何個食べていいのか?という質問はたくさん食べたい、という気持ちの現われでしょうか。
確実に栄養としての玉子、というのは価値があります。
日本食品標準成分表 をみるとビタミンA ビタミンB ビタミンD ビタミンE 葉酸
カルシウム マグネシウム リン 鉄 亜鉛など素晴らしい成分が網羅された完全食品にも思えます。
コレステロール、という一つだけの焦点ではなく総合的に捉える必要があります。
昔から言う、ほどほどにー という表現は、たぶん一日一個の玉子くらいを想定しているのかな、と思いながら玉子がけご飯を食べたりしています。
あと、たべすぎには注意してくださいね、という医者の言葉はわかるようでわからない表現です。
その、すぎ、って何個なの? を教えてよという話でした。