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睡眠時無呼吸症候群と肥満について

[2025.01.13]
前回に引き続き、睡眠時無呼吸症候群 SAS  サス についての話です。

SASは睡眠中に呼吸が断続的に止まる状態になります。

呼吸が止まる回数をカウントして、1時間あたり30回以上止まったら重症SAS、と診断します。

この1時間あたり呼吸止まる回数を AHI といいます。

正常では、 AHI 5回未満 です。 3−4回くらいは普通でも止まるよね、ということです。

 

SASの患者さんの半数は肥満型

喉周りに脂肪がつくと、寝ている間に気道が狭くなりやすくなるためです。

のこり半数は太ってはいません。

痩せているのにSASがある、という方もよくお見かけします。

アジア人では、顎がおくまっているので、骨格的に無呼吸になりやすい、と説明されています。

横になると、あごの脂肪が喉を圧迫し塞いでくるということです。

この骨格で、肥満になると、余計無呼吸が悪くなりやすい、とも言えます。

 

SASでは、極端な低酸素状態になるため、心臓や血管に多大な負担がかかります。

CPAPという機械で治療をします。

 

さらに、よく聞かれる質問があります。

痩せたら良くなるのか?

 

体重が10%痩せたら無呼吸の程度は改善すると言われています。

でも、「やせよう」 と言われてすぐやせるか? という問題があります。

 

理想的には体重が減ればいいが具体的にどうすればいいのか

という話です。

 

アメリカではチルゼパチドが やせ薬として使用されています。

糖尿病の治療薬ですが、体重減量効果に強い特徴があります。

 

肥満の睡眠時無呼吸症候群の方に、このチルゼパチドを使用したらSASは良くなるのか?

 

これを調べた研究が2024年秋に出ました。

 

N Engl J Med 2024;391:1193-1205

 
この研究は単純な比較です。
SASがあり、肥満の方を集めました。

BMI 30以上の方が集められましたが、実際あつまった患者さんでは平均BMI 39でした。
重度肥満ということになります。
 
 
第一弾では、50歳前後の方で、CPAP治療をせず、チルゼパチドを投与するv.s. 投与しない
という比較です。
 
いずれもAHI 無呼吸低呼吸指数;つまり一時間に何回酸素濃度が低下したかの回数で比較しています。
この数字が多いほど、色々悪いです。
もともとSASの中等症から重症の方を集めています。
 
CPAPを使いたくないかたや
1度はCPAP治療を試みたものの、なかなかうまく使えず、様子を見ているような方では
この結果がどうなったのか、大変気になるところです。
 
 
 
 
第二弾では、さらに、50歳前後の方で、CPAP治療をしながら、チルゼパチドを投与するv.s.投与しない
を比較しています。
 
CPAP治療をしているけれど、うまく使えないなとか
いつかCPAP卒業できないのかなとか思っている方では大変気になるところです。
 
観察期間は52週 つまり一年間です。
 
結果は以下の通りでした
プラセボとの比較で、被検者(=患者さん)も、担当医師も、どちらを注射しているかはわかりません。
 
 
 
 
AHI 無呼吸低呼吸指数で比較しています。
繰り返しになりますが、30以上で重症です。
 
第一弾trial1 では、チルゼパチドを使った方々では、AHI -25 です。
まいなす 25 です。
プラセボ群でも AHIは5程度減少しています。
 
 
CPAPを使っている方の第二弾 Trial 2の結果です。
 
チルゼパチドを使った方々では AHI -29 です。
 
 
チルゼパチド投与群では
 
AHIが低下したのみならず、

体重は −16%低下

高感度CRP低下
 
収縮期血圧低下
 
となりました。
 
 

この薬を用いた臨床試験では、1年間にわたって中等度から重度のOSAと肥満を抱える患者さんを対象に治療を行いました。

その結果、無呼吸・低呼吸指数(AHI)が大きく減少し、体重や血圧、睡眠の質にも改善が見られました。

なぜこれが重要なのか?

SASはが改善されると、昼間の眠気が軽減し、仕事や家事がはかどると言われることが多いです。

心臓病や脳卒中のリスクも低下します。

さらに、体重が減ることで日常生活の動きが楽になり、自信を取り戻す方も多いようです。

手術を含め、SASではいろいろな治療が試みられてきました。

CPAP治療が治療の唯一の方法と思っておりましたが、肥満の方では体重管理の重要性がわかります。

また、保険適応ではありませんが、チルゼパチドをSASかつ肥満のかたに用いることで1年で得られるメリットが有るということもわかります。

 

※※ この薬剤を使おう、ということではありません。

新規の薬剤がでてきて、今まで克服が難しかった問題を解決するかも、という可能性に触れ、常に学び続ける姿勢が大事であると自戒しています。

誰かのために仕事をすることが自分には向いていると思っています。

 

SASでは「たかがいびき」と見過ごされがちです。

それでも健康に与える影響はとても大きい病気です。

もし「いびきがひどい」

「朝起きても疲れている」

といった症状にお心当たりがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。

無呼吸症候群の検査に関して、当院ではすべて自宅で検査できます。

入院は不要です。

私たち戸頃循環器内科クリニックでは、患者さん一人ひとりの生活に寄り添った診療を心がけています。

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