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大動脈弁狭窄症の進行を止める事ができるのか。

[2025.03.17]

心臓には4つの弁があります。

弁には狭くなる、もしくは逆流するという2つのタイプのトラブルが起こり得ます。

 

超高齢社会においては、特に大動脈弁が固くなり、弁の機能が低下しする大動脈弁狭窄症が問題となってきます。

当院ホームページでもこちらでの病気の解説を行っております。

時間経過で、大動脈弁狭窄症は徐々に進行していく特徴があります。

 

先月、2025年2月に、この大動脈弁狭窄症の進行を遅くする可能性がある研究について報告がありました。

Effect of Sodium-Glucose Cotransporter-2 Inhibitors on the Progression of Aortic Stenosis

SGLT2阻害薬を用いている方と、そうでない方を比べたときに

中等症以下の大動脈弁狭窄症の方が、重症=手術が必要な状態 にどの程度進行したかという比較になります。

 

これは、観察研究です。

ざっくりといえば、研究者が介入せずに、対象者の行動や健康状態を観察し、データを収集して、比較してみた、ということです。

因果関係の証明にはなりません。

SGLT2阻害薬を服用している458人と、服用していない11,240人の比較です。

SGLT2阻害薬を服用している方たちでは、重症大動脈弁狭窄症になる率は低かった、ということが報告されています。

 

この薬剤は

抗酸化作用

抗線維化作用

抗炎症作用など、いろいろな良い作用をもたらすことがわかっています。

そのため、こういった観察、比較が行われた背景があります。

 

同じ抗炎症作用や抗酸化作用があるといわれているスタチンも同様の研究があります。

スタチンは、LDL-c   悪玉コレステロールが高いときに用いられるお薬です。

 

Circulation. 2010;121:306-314

 

このスタチンを用いたASTRONOMER研究では、スタチンを用いても大動脈弁狭窄症の進行は抑制できなかったことが明らかにされています。

ロスバスタチン40mg (日本国内では、クレストールという先発品名で、最大投与量20mgの薬剤ですがその2倍量を用いています)でも、大動脈弁狭窄症の進行は抑制できなかったということです。

2010年の報告ですが、未だにこの論文を読んだときにがっかりした気持ちが思い出されます。

 

 

でも、昨年コレステロールの中でも、Lp(a)  リポプロテインエー についての注目論文が出ています。

Oxidized Phospholipids and Calcific Aortic Valvular Disease

Journal of the American College of Cardiology, Volume 84, Issue 25, 17–24 December 2024, Pages 2442-2445

 

この大動脈弁狭窄症の進行に、このLp(a)、OxPL-apoBが関与しているのではという報告がありました。

 apoB とはアポリポタンパクといいますが、動脈硬化の原因となる、といわれているタンパク質です。

 

 

現在、Lp(a)低下薬が開発・研究中であり、数年以内で利用可能になるのではないかといわれています。

2024年のアメリカ心臓病学会でもこの薬剤で、Lp(a)が8割低下した、という報告がありました。

実際それにより、動脈硬化性疾患がどれくらい減るのか、改善するのかがわかるのは先の話です。

こういった薬剤にも期待できる状況にあるように思えます。

 

こういった薬剤の多面的な効果や期待できる一面などについての情報も合わせて学んでいます。

定められた適応を遵守しつつ、眼の前の患者さんにより効果的で、かつ有用な薬剤の選択を考えています。

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