メニュー

大動脈弁狭窄症

心臓の中には4つの弁があります。

大動脈弁

僧帽弁

肺動脈弁

三尖弁

です。

それぞれ、心臓の中を流れる血液に対して、逆流防止弁、として機能しています。

今回は、その大動脈弁が、狭くっなてしまう病気=大動脈弁狭窄症 についてです。

医療従事者は、AS Aortic Stenosis と呼ぶことが多いです。

 

原因

大動脈弁狭窄症(AS)の主な原因は以下の3つです:

  • 加齢性変性(退行性AS): 高齢者に多く見られ、弁尖の石灰化や線維化によって弁の可動性が低下する。

    日本だけでなく、平均寿命が長くなっている先進国では、加齢の影響が一番多いです。

    手術での治療が必要となる重症ASの80%以上は加齢によるものになりま

  • リウマチ性AS: 過去のリウマチ熱の影響で弁が瘢痕化し、狭窄を引き起こす

    令和時代は減少傾向です。

  • 先天性AS(二尖弁ASなど): 先天的に二尖弁である場合、加齢とともに石灰化が進行しやすい​

    通常は3枚ある弁尖(ふた)が2枚になっているというかたもいらっしゃいます。

    お年を召されると、徐々に狭窄が進行して行くことが多いです。

 

どれくらい割合でASの方はいるのか

70歳未満では有病率は1%未満ですが、80歳以上では約7%と増加します。

80歳以上の方が20人集まると、お一人はAS がある、という計算です。

 

心臓はどうなるのか?

 

  • 左心室の圧負荷増大: 大動脈弁が狭窄することで、心臓の血液の出口が狭まります。

    血液を出しにくい、という状態です。

    心臓の中、特に左心室にかかる圧力の負担が大きくなります。

    それにより、左室肥大が進行します。

    この左室肥大は、心電図や心エコーで見ればすぐに分かります。

    左心房も拡大してきますので、レントゲンで心臓が大きくなってきます。

  • 心機能低下: 左室肥大が進行すると、まずは、心臓が広がる力が落ちます。拡張障害という状態です。

    時間が立つに連れ、収縮障害も起こります。

    この状態は、心エコー検査で、 LVEF(左室駆出率)の低下、という指標でわかります。

    正常基準値では、50% 以上としています。

    最近、このASの治療判断では、このLVEFの指標の数値が引き上げられました。

    アメリカの心臓病学会では、LVEF 60%

    ヨーロッパでは、 LVEF 55 % 

    となっています。

    日本のガイドラインでは、まだ、50% となっています。

    LVEF 60%未満になったら予後が悪化する、という報告が多くでてきています。


    の数値を下回ったら、早期に手術治療を考えましょう、ということです。

    戸頃循環器内科クリニックでは、60%を指標としています。

    心臓の筋肉がダメージを受け始めている、ということで理解するといいと思われます。

  • 心不全・突然死リスクの上昇: 無症候性のASは長期間安定していることもありますが、一度症状(狭心痛、失神、心不全)が出現すると予後は急速に悪化し、5年生存率が著しく低下します。

    つまり、症状が非常に重要です。

    少なくとも、ASによる症状が出てきたら、手術治療を考える時期、といえます。

 

症状は「詳細なお話聞き取りが大事」

 

  • 息切れ(労作時呼吸困難)

  • 狭心痛(左前胸部痛)

  • 失神(運動時の意識消失)

  • 進行すると心不全症状(浮腫、起座呼吸など)

 

ASによる症状は、徐々に、徐々に出てきます。

本人が気づかないくらい、自然と慣れてしまうくらい時間をかけて出現してきます。

「歳のせいと思っていた」

ということも、よくあります。

このASの経過では、時々、ご家族からも最近の生活の状況をお聞きする、というが大事です。

無症状で手術治療になり、退院後の外来で、実はご自身が息切れがあったと言われることもあります。

それくらい、慣れてしまうということです。

心不全で入院してから、ASの治療では、その後の予後が良くないので、早めに治療へ移行することも大事です。

 

無症状のときは様子見でいいのか?

重要な点は3つ。

1.心エコーで LVEF を定期的に確認する。

LVEF 55−60% を下回ったら手術を考える。

中等症までなら12−24ヶ月おき程度。

重症なら6ヶ月おき程度の頻度で心エコーを考慮します。

 

2.運動負荷試験をする

運動負荷試験で血圧低下がない、ということを見ます。

ただし、加齢でのASのかたは、運動負荷試験そのものができない、ということも良くあります。

膝が痛くて、腰が痛くて、などしっかり調べられないことがあります。

 

3.BNP 100未満 を確認していく。

重症ASでも、BNPが上昇していなければ、1年以内に心不全入院する可能性は低いことが確認されています。

定期的に血液検査で BNPを測定し、確認することが重要です。

 

 

診断は?

まずは、心雑音です。

聴診器を当てればすぐにASかどうかがわかります。

ついで、心エコーです。

弁口面積・弁口面積を体表面積で割った係数・血流速度・圧較差などいくつかの指標を合わせて判断します。

これは日本循環器学会からの弁膜症ガイドラインに定められた重症度の分類です。

 

まずは、この流速 Vmax m/秒  4.0 を超えているかどうかということが重要です。

大動脈弁の中を通って流れる血液の速度を評価します。

この計測は技術と経験が必要です。

色んな角度・方向から血流速度を計測し、一番早いもので評価します。

 

 

さらに、ASでは冠動脈狭窄をよく合併します。

動脈硬化による狭心症の合併です。

以前はカテーテル検査で評価していましたが、現在では心臓CT(造影剤を用いて撮影)を行うことが増えています。

CTで、冠動脈に問題がないことが確認できれば、血管が狭い可能性はない、99%以上の確率で断言できることが強みです。

 

それでも、手術前にはカテーテル検査が必要なことが多いです。

これは、循環器内科医と心臓外科医、メディカルスタッフで作るハートチームで検討されます。

 

治療について

3本柱です。

1.内服薬の調整

動脈硬化に影響するもろもろの併存疾患の治療と合わせて、降圧剤などが選択されます。


2.外科手術 SAVR

開胸手術となります。
以前よりは国内でも手術件数が減ってきている傾向にあります。

3.カテーテルでの大動脈弁置換術 TAVI TAVR

高齢者や開胸手術が高リスクな患者には、低侵襲のTAVIが推奨されます。

実際には、ハートチームでどの治療法が良いのか検討をして、患者さんやご家族様と相談の上、どの方法で治療になるのか決まっていきます。

 

大動脈弁狭窄症は加齢性変化が主な原因となり、症状が出現すると急速に悪化します。

適切なフォローアップと治療介入が重要です。

重症例では外科的治療 カテーテル治療が有効な治療法となります。

 

戸頃循環器内科クリニックでは、この大動脈弁狭窄症の治療を行っています。

 

まずは、的確な診断が重要です。

毎日、いつでも心エコー検査が可能です。

定期的に症状確認や血液検査でBNP評価、 必要に応じて心臓CTなども行っています。

内服治療は、血圧値、年齢、腎臓機能、筋力や体力、合併疾患などに合わせて、患者さんごとに異なります。

 

手術治療が必要ないように治療を行っていくことと、必要時かどうかをすぐに判断できる体制を整えて診療にあたっています。

 

HOME

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME