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シンプルに考えるということ

[2024.08.19]

もう10年以上、週2回某クリニックで非常勤という形で外来診療を行っています。

循環器内科での標榜ですが、実際には内科一般の病気の方、時に皮膚科や泌尿器科、整形外科領域の患者さんなども拝見しています。

後日専門の先生に相談するということも長年繰り返してきました。

先日クリニックにある患者さんが訪れました。

その方は長い間、体調の不安に悩まされ、どこに相談してもなかなか解決策が見つからず、気持ちが沈んでいました。

病気そのものだけでなく、「自分はこの先どうなってしまうんだろう」という漠然とした不安に包まれ、日々が複雑な思考に囚われていたのです。

診察室に入ると、その方は私に今までの経緯を詳しく話し始めました。

症状のこと、不安なこと、そしてそれにどう向き合ってきたか。

時間が経つにつれて、話はどんどん複雑になり、糸が絡まるように様々な悩みが積み重なっていました。

聞けば聞くほど、迷路に迷い込むような感覚になりました。

私は話をじっと聞きながら、頭の中で整理を始めました。

悩みとは、多くの場合、物事を複雑にしてしまうものです。

あれこれ考えすぎたり、先のことを心配しすぎたりすることで、私たちは自分自身を追い詰めてしまいます。

けれども、考えるということは、その逆に、物事をシンプルにしていく作業です。

要するに、どうやって問題を一つひとつ解決し、前に進むかを考えることです。

私はその方に、「まずは一つずつ、一緒に解決していきましょう」とお伝えました。

焦りは不安に、時限は重みになってしまいます。

少しでも前に進んでいく感覚を感じてもらうのが大事です。

そして、目の前にある問題をシンプルに切り分けて、今できること、これからどうするべきかを整理しました。

その方が抱えていた症状には治療方法があり、不安には具体的な対応策があると理解してもらえるように、私は一つひとつ説明しました。

次第にその方の顔からは、少しずつ笑顔が見え始めました。

私は相手の表情をすごく見ます。

眉の角度やおでこのシワだけでなく、仕草や動き、声の揺れ、息遣いなども見ています。

言葉以上のメッセージがそこにはあります。

Yesと言葉で話していても、仕草はNoと語っていることなどよくある話です。

私はそうだと思うんですけどね、といいながら顎を触っていたり、ネクタイを触っていたら自信がないことを言われているんだろうなとか推測してしまうので、また別の表現方法で説明を切り替えたり、追加します。

なので相手の理解や受け入れなどを確認しながら、ひとつひとつ確認して積み上げていくことが大事と思っています。

複雑だった悩みがシンプルに整理され、これからの道筋が明確になると、自然と心が軽くなります。

患者さんの悩みを聞き、解決の糸口を見つけ出し、シンプルな形で伝える。

医療では最近自己責任という考えが持ち込まれていますが、私自身はその考え方はあまり好みません。

共同責任という形が理想と思っていて、共に考えともに選択し作り上げていくイメージを持っています。

相手の話を聞いて、問題を整理し簡略化してそれぞれを解決していく。

それが私の役割です。

それは単に診療行為にとどまらず、一人ひとりの患者さんの生活や心の負担を軽減する手助けでもあります。

そして、それが誰かの助けになるのであれば、私はこの仕事を続けていきたいと思っています。

悩みを抱えたとき、それを複雑にするのは簡単です。

しかし、本当に大切なのは、どうすればシンプルにできるかを考えること。

私たちのクリニックでは、そのサポートを全力でしていきます。

 

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