寒くなると血圧が上がる
冬になると血圧が上がることは多いです。
「熱を逃がさない」ために交感神経を強めます。
少し難しく言うと
末梢血管を締める(収縮させる)=全身血管抵抗上昇 というシンプルな反応です。
うーさぶー ぶるぶる、というのは筋肉を収縮させて熱を作る反応ですが
その時には、血管はぎゅっとしまって、熱が逃げないようにもしています。
これにホルモン(RAAS・バソプレシン・エンドセリンなど)
体液・血液性状
運動量はへる(=寒いから外出たくない)
塩分/アルコール(=冬の鍋はうまい)
睡眠/ストレス変化(=寒くて寝付けない)
が上乗せになります。
睡眠の質が落ちると血圧は上がります。
冬は日中血圧が高くなります。
様々な研究データでは
「外気温が10℃下がると収縮期BPが≈5–6mmHgあがる」というと言われています。
冬は自宅で血圧を測るやる気も下がりぎみです。
血圧計のマンシェット、といいますが、うでにぐるぐるまくあアレです。
ひやって寒いと嫌ですよね。
夏はいいですが、本来は血圧が上がりやすい寒い朝にこそ穴測定が重要になります。
当院では、血圧計を選ぶときには、ヒヤッとしない血圧計を勧めています。
夏に血圧計を選ぶと、冷たいほうが気持ちよかったりしますからね。
血圧上昇メカニズムを詳しく考えると
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交感神経上昇による末梢血管収縮
皮膚温低下→温冷受容体→交感神経活性化→小動脈収縮→血管抵抗↑→血圧↑
寒さはカテコールアミン分泌やレニンアンギオテンシン活性も高め、圧受容体のリセットを介して高めの血圧を維持しやすくします。
このタイプでは、交感神経遮断薬やレニンアンギオテンシン阻害薬、などが血圧を下げるのに向いています。 -
体液変化(寒冷利尿・ナトリウム排泄変動)
寒いと尿がよく出るようになりますが、血管は収縮方向になります。
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血液性状・内皮機能
寒冷下では内皮NOの利用低下/機能低下が言われています。
血管のしなやかさがへりがち、ということです。
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モーニングサージ
冬は起床後サージ、つまり日内変動リズムでの血圧上昇が強く、脳卒中などが起こりやすい原因にもなっています。
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行動・環境要因
運動量はへり、、塩分/飲酒は増え、血圧は上がっていきがちです。
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屋外寒冷曝露や入浴時の温度差もトリガー
家の中でも暖かい部屋から、寒い部屋への移動で血圧は変動したりします。
どのくらい上がるか
大規模研究だと、外気温10℃低下でSBP ≈+5.7mmHg というデータがあります。
でもいろんな患者さんの血圧手帳を見てきた感覚だと10-15mmHg くらい上る感じです。
むしろ夏あたりで、それくらい下がる、という言うメージも持っています。
(これは完全に個人の主観です)
血圧に関して、 夏下がるタイプは、冬上がるタイプ、と思っています。
冬はどうしましょうか
家庭血圧測定は、秋からが重要性が増します。
測定習慣がない方では、突然冬になってから測り始めるより、今ぐらいからしっかり測り始めるのが良いです。
ヒートショック は暑さ、より寒さ、の問題。
住環境は18℃以上を目安(英NHS勧告)。
脱衣所・浴室のヒートショック対策です。
外出時の重ね着を徹底するのも良いです。
過去一番暑かった夏の終わり、秋の始まりに寒さ対策の話をしてもピンとこないと思いますが。
冬でも有酸素運動を途切れさせない
塩分/飲酒控えめ
睡眠大事。
過度な寒冷曝露下での急激な重労働は避ける。
(しなくていいなら)
冬に血圧が上がり、下げる必要があるときには、上記のようなことを考えつつ、なぜ上がってきたのかを推測し、おくすりで調整したり、環境や服装などを考えるのが、冬の血圧治療では重要という話でした。