タイパ時代にあって
今年も、SEIKO 時間白書 2024 が発表されました。
時間に対する考え方の、今の風潮についてのレポートです。
これを読みながら、社会の中にあって医療、特に戸須循環器内科クリニックではどうあるべきかということを考えています。
1. タイパ社会の進展と医療の課題
セイコーの調査によると、社会全体で「タイムパフォーマンス」(略してタイパ)の意識が定着し、無駄な時間を減らすことを重視する人が増えています。
医療の現場においても、この流れは明らかです。
患者さんの視点
予約システムやオンライン診療の導入により、待ち時間を最小限にする工夫が求められています。
当院でもなるべく待ち時間を減らすこと、さらに待っている間の時間を有効に活用していただくよう、無料WIFIやTVモニターで情報発信を行っています。
「短時間で的確な診察・説明を受けたい」と考える方が増えており、診察の効率化と質の両立が重要です。
よく話を聞いてほしい、という方もいらっしゃれば、逆にとっとと薬を出してよ、という方もいらっしゃいます。
医療従事者の視点
限られた時間の中で、より多くの患者さんに質の高い医療を提供する必要があります。
新しいテクノロジー(AI診断補助、電子カルテの活用)を活用して、業務の効率化が求められます。
しかし、タイパを重視しすぎると、患者さんとのコミュニケーションが希薄になり、不安を十分に取り除けないこともありえます。
2. 医療と日常生活の時間バランス
タイパ重視の社会では「効率化」が優先されがちですが、医療や健康管理においてはあえて時間をかけることが重要な場面もあります。
予防医療の観点
「忙しいから健康診断を後回しにする」
「クリニックに行く時間がもったいない」
という考えは、結果として健康リスクを高める原因となりえます。
早期発見・早期治療のためには、適切なタイミングで診察を受けることが、長期的な時間の節約につながります。
適切なタイミングがわからない場合は、「とりあえず今日受診する」という選択も良いでしょう。
当院では、予約システムに加えて、予約外受診、緊急受診でも症状に合わせて迅速に対応するように仕組み化を進めています。
生活習慣の改善
短時間で済ませる食事や運動習慣が増えていますが、健康維持には一定の時間投資も大切です。
例えば、短時間で効果的な運動(HIITやストレッチ)を取り入れつつも、食事はバランスよく時間をかけて摂るといった工夫が重要です。
個人的には、趣味の時間をゆっくり取ることをおすすめしています。
メンタルヘルスの視点
すべての行動に「タイパ」を求めすぎると、「タイパ疲れ」を引き起こし、精神的なストレスが増加していると セイコー白書にはありました。
例えば、日々の生活の中で「イライラ」や「ぱたぱた」とした感覚を持つことが増えているのは、現代社会の反映かもしれません。
医療現場でも、「診療のスピード」ばかり求められると、患者さんの心のケアが不足し、安心感を得ることが難しくなります。
「じっくり話をする・聞く」「時間の余裕を持つ」といった工夫は、結果的に患者さんの安心感につながるものと思っています。
3. 医療機関として
タイパを意識しつつ、適切な時間配分を行うことが、医療の質向上と安心へつながるものと思っています。
スムーズな診療
予約システムや問診システムを活用し、待ち時間を短縮しています。
事前に症状や相談内容を記入できる仕組みを導入し、診療時間を有効活用しています。
診察のメリハリをつける
簡潔かつ分かりやすい説明を心がけつつ、患者さんの不安を解消するために時間をかけることを重視しています。
「納得する」ということが、医療の満足度に大きく関わると考えています。
長期的な健康管理をサポート
タイパ重視の傾向がある一方で、「健康管理が後回しになる」という問題も見受けられます。
そのため、オンライン診療や定期的なフォローアップを活用し、健康管理の継続をサポートする必要があります。
なるべく入院検査をしなくていいように、自宅でできる検査は自宅で、大きな病院へいかなくとも病院レベルの検査を当院で、と考えて体制を作っています。
また、生活習慣の改善を手軽で続けやすい形に落とし込む工夫も重要です。
患者さんとお話しする際に私自身が特に気をつけているのは、
頑張らないとできない方法は続かない
ということです。
習慣化しやすい方法を提案し、そのサポートをスタッフとともに行うことが、当院の重要な役割だと考えています。
2025年では
病気の治療という観点からは、早めの受診が結果的に時間の節約になるといえます。
時間白書2024を見ると、タイパ意識の高まりによって、医療機関にも効率的な診療が求められると感じます。
しかし、同じくらい重要なのは、「健康や病気予防には時間をかけること」だと考えています。
医療機関として、効率化と「時間をかけるべき部分」のバランスを取ることが求められる時代です。
タイパ重視の意識を理解しつつ、適切な健康管理のための時間活用を提案することが、今後の医療にとって大切な課題となるでしょう。
結果として、効率的かつ納得感のある医療を提供することが、現代に求められていると感じています。