頭が痛いとき
頭痛には大きく二つのタイプがあります。
その原因に基づいて頭痛は分類されます。
1. 一次性頭痛(頭痛そのものが病気)
一次性頭痛は、脳の検査をしても明らかな異常が見つからない、頭痛そのものが病気であるタイプの頭痛です。
たとえば、片頭痛や緊張型頭痛などが該当します。
これらの頭痛は、「頭痛持ち」と呼ばれるように、繰り返し発生し、日常生活に大きな影響を与えることがあります。
これに悩まされる方も多く、原因ははっきりしないものの、ストレスや睡眠不足、気圧の変化などが引き金になることが多いです。
2. 二次性頭痛(他の病気が原因)
二次性頭痛は、他の病気が原因となって発症する頭痛です。
たとえば、風邪や二日酔いなど、日常的な原因による頭痛も二次性頭痛に含まれます。
しかし、時にはくも膜下出血や脳腫瘍といった重篤な病気が原因で起こることもあり、これが命に関わるケースです。
このような頭痛は、通常は非常に強い痛みが伴いますが、まれに軽度な症状で現れることもあり、見過ごしがちなので注意が必要です。
2019年にアメリカの神経学会雑誌 Neurologyに危険な頭痛を疑う特徴 15項目が報告されています。
SNOOP10リスト(スヌープテン)と呼んでいます。
医療従事者だけでなく一般的にも知っていると役に立つと思いますので紹介させていただきます。
「SNNOOP10リスト」(スヌープ・テン・リスト)は、頭痛が危険な病気によって引き起こされている可能性があるかどうかを判断するための重要なチェックリストです。
ここでは、そのリストに基づき、実生活での具体的な注意点や実例を交えて解説します。
1. 【S】発熱を含む全身症状
例:風邪のような症状で発熱がある場合もありますが、首が硬くなる(項部硬直)や、ぼんやりする、意識がもうろうとする場合には要注意です。
これらの症状は髄膜炎や脳炎といった重篤な感染症を示している可能性があります。
髄膜炎では、早期の検査と治療が重要で、特に若年者や免疫力の低い人は早めに医師に相談する必要があります。
2. 【N】新生物の既往(悪性腫瘍の病歴)
がん治療を受けた経験がある方は、頭痛が新たに出た際に脳転移を疑うことが大切です。
例えば、吐き気やめまい、ふらつきが伴う場合、これはCTやMRIなどの画像診断で原因を特定する必要があります。
特に、既存の腫瘍があった場合は、早めの対応が推奨されます。
3. 【N】神経脱落症状または機能不全(意識レベルの低下を含む)
例えば、突然手足がしびれる、または半身に力が入らないといった症状がある場合、それは脳卒中などの脳の病気の兆候の可能性があります。
軽い頭痛があっても、これらの神経症状が見られる場合には、速やかに病院で検査を受けることが必要です。
頭部CTや、状況によってMRI MRAなどが必要となります。
脳卒中は早期治療が回復に大きく影響します。
文字通り、1分=60秒 が価値を持つ状況といえます。
なるべく早くCT検査やMRIを受けられることが診断に、ひいては治療に重要です。
4. 【O】急または突然に発症する頭痛
実例として、急に頭痛が始まり、1分以内に痛みがピークに達する頭痛が起きた場合、それは雷鳴頭痛と呼ばれ、くも膜下出血の可能性があります。
患者さんのお言葉を借りると「金づちで頭を殴られたような痛み」と言われておりました。
これは非常に危険な状態で、すぐに救急車を呼んで病院へ向かうべきです。
時間との戦いになるため、迅速な対応が命を救います。
5. 【O】50歳以降で初めての頭痛
50歳を過ぎてから初めて強い頭痛を感じた場合は、特に注意が必要です。
年齢と共に、高血圧や糖尿病といった基礎疾患を持つ方は、血管の異常。つまりなどによる二次性頭痛のリスクが高まります。
例として、突然の強い頭痛や視覚の変化があれば、早めに医師に相談しCT検査などを受ける必要があります。
心房細動などの不整脈がある方でも、心臓から血栓が脳に飛び、突然の頭痛やめまいなどが起こることがあり得ます。
逆に脳梗塞予防で服用していたサラサラ薬(抗凝固薬)の影響や血圧が高い影響で脳出血の可能性も考えられます。
6. 【P】頭痛パターンの変化や新しい頭痛の発症
普段から頭痛持ちの方が、今までとは違う痛み方の頭痛を感じた場合や、頭痛の頻度や強さが変わった場合、他の病気の可能性があります。
例えば、脳腫瘍や脳血管障害の初期症状として、こういった頭痛の変化が現れることがあります。
頭痛の記録をつけておくと、変化に気づきやすくなります。
7. 【P】姿勢によって変化する頭痛
頭痛が立ち上がった時に悪化し、横になると楽になる場合は、脳脊髄液減少症が疑われます。
これは、脳脊髄液が漏れ出すことで脳の圧力が低下し、頭痛を引き起こす病気です。
普段から姿勢によって痛みが変わる場合には、一度医師に相談することをお勧めします。
8. 【P】くしゃみ、咳、運動で誘発される頭痛
くしゃみや咳、運動をするたびに頭痛がひどくなる場合、これはキアリ奇形や後頭蓋窩病変といった脳の異常によるものかもしれません。
このような場合には、脳の構造的な問題が疑われ、精密な検査が必要です。
9. 【P】乳頭浮腫
眼の奥にある視神経が腫れる状態を指しますが、これは頭蓋内圧亢進の可能性を示しています。
視力が急に低下したり、視界に異常が出る場合には、早急に眼科や脳神経外科を受診してください。
10. 【P】進行性の頭痛、非典型的な症状を伴う頭痛
頭痛が徐々に悪化し、普段とは異なる症状が現れる場合、たとえば持続的な頭痛が続き、痛みがどんどん強くなっていく場合には、二次性頭痛の可能性が高いです。
徐々に悪化する頭痛は、特に慢性疾患の兆候であることが多いため、注意が必要です。
11. 【P】妊娠中または産後の頭痛
妊娠中や出産後に突然の頭痛が現れた場合、これはホルモンの変化や血液凝固能の変化によるものかもしれません。
特に硬膜外麻酔を受けた後に強い頭痛が続く場合は、早めに医師に相談することが大切です。
12. 【P】自律神経症状を伴う眼の痛み
例えば、涙が止まらない、目が赤くなるといった症状と共に頭痛がある場合、これは群発頭痛の可能性があります。
しかし、同時に緑内障などの目の病気の症状でもあるため、医師による適切な診断が必要です。
13. 【P】外傷後に発症した頭痛
頭を強くぶつけた後に、意識がぼんやりする、またはその後数週間にわたり頭痛が続く場合、脳挫傷や出血の可能性があります。
特に高齢者では、数週間から数ヶ月後に慢性硬膜下血腫を発症することがあるため、外傷後の頭痛は見逃さないようにしましょう。
14. 【P】HIVなどの免疫系病態を有する患者
免疫力が低下している患者は、特に感染症や腫瘍による頭痛のリスクが高まります。
例えば、HIV感染者では、髄膜炎や脳リンパ腫などが発症することがあります。
免疫系の病気がある場合には、早期診断と治療が重要です。
15. 【P】鎮痛薬使用過多もしくは薬剤新規使用に伴う頭痛
痛み止めを頻繁に使用していると、薬の使い過ぎによって薬物乱用頭痛を引き起こすことがあります。
また、新しい薬を使用し始めた時に頭痛が出た場合も、副作用の可能性があるため、使用している薬について医師と相談することが大切です。
上記15個について、危険な頭痛の特徴というお話でした。
こういった頭痛では、なるべく早くCTなどをとって大丈夫かどうかを確認することも重要です。
実際には、運動不足、長時間のパソコン作業などによる肩こり、診断でいうと筋緊張性頭痛が多い印象です。
ストレッチや体操をしっかり行うと改善することもあります。
普段から体の柔軟性維持が大切というお話でした。