心不全講演会
本日は、獨協医科大学埼玉医療センター循環器内科主任教授の田口先生のご講演の座長役をさせていただきました。
いうまでもなく、全国でも非常に有名な先生から直接ご講演をいただける機会ですのでとても楽しみにしておりました。
SGLT2阻害薬はもともと糖尿病の治療薬として世の中に出てきましたが、心不全にも腎不全にも有効ということが分かってきた薬です。
心臓の機能を調べるために、心エコー検査によりLVEF(左室駆出率)を測定します。
そのEFがどれくらいの値かにより心不全の治療内容は変わってきます。
特に個別化医療(テーラーメイド)といって、その患者さんの特徴(心拍数や不整脈の有無、血圧)に合わせて治療内容を調整しようという考えがあります。
SGLT2阻害薬はいずれの患者さんにおいても選択される薬剤です。
かつ、どのような臨床試験でも、大きく問題となる有害事象は見らず、尿路感染症・性器感染症に気を付けることが注意点となります。
今回は、フォシーガ(ダパグリフロジン)についてのデータを多く見せていただきました。
私も参加した世界的臨床研究のデータも紹介され、講演中にうれしくなりました。
心不全で、服用の条件が合致した場合には、心不全が悪化しにくくなり、腎臓の機能が服用しないよりは保つことができ、結果的に死亡が減る、寿命が延びる、ということになります。
有効性が高く、危険性が低いのだから、適応がありその有効性をうまく届けるという意味で、しっかり用いていこうというお話でした。
実際の状況はどうか。
ここに紹介する論文では、ガイドラインで使用を推奨されているにもかかわらず、アメリカではSGLT2阻害薬が十分に用いられていない、という報告です。
Prescription Patterns for Sodium-Glucose Cotransporter 2 Inhibitors in U.S. Health Systems
JACC. 2024 Aug, 84 (8) 683–693
心不全になったらしっかり治療するのは当然ですが、戸頃循環器内科クリニックでは、心不全にならないように治療を行っていくという目標があります。慢性心不全になっても増悪しないようにしていく、ということも大切なミッションとして持っています。
田口教授のお言葉にもありましたが、心臓の機能が低下することより、腎機能が悪化していて治療が大変になる経験は循環器の医者なら誰でも経験がある、というお話を伺いました。
高血圧、糖尿病がある段階、(心臓治療でいえばリスクがあるだけの早期の段階に当たります)から、しっかり心臓のみならず腎臓にも配慮し治療方針を調整していくことが非常に大事と思いました。
さらに、心臓病の方はほとんどが腎臓は悪くなってきていると思っても差し支えない、治療法には大きく変化がないというお言葉は、心臓も腎臓もしっかり管理してきている先生だからこそ言えることと思います。
もう一つは、私が質問させていただいたことです。
ある条件がそろうと、そのままでは悪化していくことがあるから、こういった治療が重要であると。
逆に、どういった条件を達成するとその治療を中止あるいは弱めることができるのか、という質問です。
非常にクリアカットにお答えをいただきました。
基幹病院に治療を委ね、その後状態が良くなっていわゆるかかりつけ医に患者さんが戻ったあと、新たに治療を開始された薬剤や治療をどの条件で中止するかの共通認識というのは非常に重要です。
アクセルを踏み込みっぷりより、ブレーキの加減こそが、運転の大事なポイントと考えています。
自分がこれから見させていただく患者さんの治療方針について、さらに深く考えていこうと思った夜でした。
私自身は、個別化医療に関して言えば、心拍や血圧、腎機能などの臓器や機能、数値で見るだけではありません。
その人の生活背景や、家族構成、今まで過ごしてきた時間やこれから過ごしていきたい先のこと、何が楽しみと思い、どんなことをつらいと思うのか。
好きな食べ物は何で、お酒を飲まれる方なのか。
飲酒が多い方でも、酒なしで生活をやっていけるくらいストレス耐性がある方なのか。
他になにかストレス発散するための仕組みやきっかけを作れないか、など。
そういった捉え方も個別化された医療、というか、その人のための医療だと思っています。
そんな論文はなかなかないので、根拠やエビデンスなど少ない中で手探り、試行錯誤をすることも多々あります。
答えがない問題こそが考えるべきことです。
さらに、何が問題となっているのか見えない、いわば未分化の問題、というのも人間を相手にする上では重要な捉え方と思っています。
いつでも、Simple,Safety,Speedy.
ややこしいことでも、簡単にして、安全を保ちながら、結果、自然と速やかに。
クリニックの準備で朝から夜までずっとバタバタしていますが、この地域で仕事がこれから仕事ができることをとてもうれしく思った一日でした。
普通に日記みたいな文章になってしまいましたが、次回からまたお役に立つ情報を発信させていただきます。