鉄欠乏性貧血の治療について
若い女性の診察では、時に疲れやすい、めまい立ちくらみがある、顔色が悪い、ということで循環器内科を受診されることがあります。
心臓や血圧が心配、ということでの受診と思います。
しかしながら、調べてるみと、心臓ではなく貧血が原因であったといことがあります。
疲れやすい:ちょっとした動作で息切れや疲労感が強く、日常生活が辛く感じることがあります。駅の階段を登る時も息切れし、その後の倦怠感がすごい。
めまい・立ちくらみ:突然の立ち上がりや体勢変更で、ふらつきを感じることが多い。
動悸:なんとなく自分の心臓の鼓動が強い気がする。心臓が動いているのを感じる。
顔色が悪い:顔が青白く、周りからも心配されることが増えた。
このような症状です。
貧血は赤血球が少ない、つまり血液が薄い、という状態です。
月経の影響のこともあれば、何か出血する素因があってのこともあります。
原因を調べつつ、治療を平行します。
若い女性の場合には、大抵月経関連ですので、婦人科に相談することもありますし、貧血自体の治療を当循環器内科で行うこともあります。
基本は鉄分補給になります。
症状が出るほどの貧血では、食事では追いつかないので、鉄剤を用います。
内服と注射があります。
鉄剤は、服用後気持ち悪くなったりムカムカしたり、という消化器へ負担のかかることによる症状(=副作用)が出ることがあります。
あまりに服用が難しい時には、注射での投与がありますが、数回は必要ですし、時間もかかるので負担になります。
私自身は、数種類ある中で、クエン酸第二鉄水和物(商品名はリオナ) という薬剤がその有効性や副作用の少なさで良いと考えています。
昨年、この女性で鉄欠乏性貧血がある患者さんへの鉄剤の内服法についての研究論文が出ました。
薬剤の添付文書では、どの鉄剤も毎日服用すること、となっています。
この論文では、隔日摂取法が新たに検討されています。この方法では、連日摂取と同じ効果がありながら、副作用(特にお腹の痛みや便秘)を減らした、との報告です。
例えば、「毎日飲んでいるとお腹が張って困っていた」という患者さんに、隔日で飲む方法を提案し、症状が改善したケースもありました。
治療を始める際には、患者さん一人ひとりの生活スタイルや体調に合わせて調整することが大切です。
毎日の服用が決まりだから、ではなく、1日おき、隔日での服用で効果があり、副作用が少ない、といことがわかりました。
治療の状況によっては、調整することができる、ということです。
循環器内科ではありますが、貧血の治療も行います。
心臓と血液、血管は密接な関係があるからです。
また、その貧血になった原因に関しては、消化器内科や婦人科の先生のお力をお借りすることもあります。
越谷の地域には優れた先生がいらっしゃいますので、その先生達とも合わせて、治療に当たらせていただきます。
Alternate day versus consecutive day oral iron
supplementation in iron-depleted women: a randomized
double-blind placebo-controlled study.
eClinicalMedicine. 2023;65: 102286