心不全予防
心不全は予防可能です。
食事、運動などの生活習慣の管理が一番大事です。
さらに、心不全の危険因子に対する適切な治療が重要です。
ステージ分類については別項を参照していただければと存じます。
ステージA/Bでは、心不全の発症を予防することが最重要目標です。
ステージC/Dでは、症状改善のみならず、生命予後を改善する、元気に長生きする、ということが重要です。
その意識を持って患者さんとともに治療に当たります。
予防するために何をどうすればいいのか?
それぞれの対処項目を列挙していきます。
どうにかできるものをどうにかすると、予防力が増します。
-
高血圧
高血圧を適切に治療すると、心不全になりにくくなり、長生きできます。
減塩、体重減量(もし肥満なら)、生活習慣の修正が重要です。
降圧剤(ACE阻害薬、ARB、利尿剤、ベータブロッカーなど)で治療を行うと心不全になりにくくなるということは様々な研究で明らかなとなっています。
とくに、サイアザイド系利尿薬は心不全の予防効果が強いことが言われています。
アメリカでは、降圧剤の第一選択薬としてこのサイアザイドが選ばれることが多いです。
薬価も安く、副作用も少ないことがその理由です。
-
冠動脈疾患
ACE阻害薬
βブロッカー
スタチン(脂質代謝異常、高コレステロール血症の治療薬が心不全予防に繋がります。)
MRA
SGLT2阻害薬
などのが心不全予防や悪化を防ぐ効果があるのが明らかとなっています。
カテーテル治療は、2024年現在で心不全発症予防効果は明らかではありません。
食事運動管理と薬物加療が重要です。
-
肥満
太っていると心不全になりやすくなり、痩せるとそのリスクが減る、ということです。
特にHFpEF へふぺふ (LVEF 50%以上の心不全)では、体重減量の効果は顕著です。
糖尿病の治療薬として世に出てきたSGLT2阻害薬は、体重減量がみられ、心不全治療薬としても腎不全進行予防薬としても有用です。
-
糖尿病
糖尿病のかたは、それだけで心不全に進行するリスクが高く、しっかりした治療が必要です。
食事運動管理に加えて、SGLT2阻害薬を服用することで、心不全リスクが低下することが知られています。
-
喫煙
そもそも全ての人間に、喫煙は害となります。
心不全の患者さんが禁煙すると、死亡率低下、心不全再入院率低下、心血管系入院率低下が確認されています。
禁煙です。
辛いでしょうか。
たばこをやめるのが辛い、のならご相談ください。
自分が禁煙している、と思うから辛いのです。
生まれたときは吸ってなかったのですから、もともとは喫煙者ではないです。
我慢が辛いですか?
もともと吸ってないのだから、我慢ではないです。
手持ちぶたさの時間にやることが思いつかないからつい一服。
やることを見つけましょう。
ガムを噛むとか、誰かと話すとか、ニュースを見るとか。
3日後の天気を予測して天気図を見てみるとか。
食後につい、となるのでしょうか。
その時間に散歩に出かけませんか。歩いて外の空気を吸うと気持ちがいいですよ。
外気を一服ですね。
外来で気軽に相談ください。
まだ吸ってても大丈夫かどうか、など他の先生には聞きにくいような質問や相談をお受けすることもあります。
-
アルコール
百薬の長も飲みすぎれば、毒になります。
近すぎ過ぎず飲みすぎず。適量が大事です。
一本、一杯、一合。
つまみは、野菜がお勧めです。
しょっぱいと、あぶらっこいと、酒は進みますが、塩も油も一緒に体に入ってきます。
「酔えばどうでも良くなってしまう。
酔いが冷めて後悔してもまた繰り返してしまう」
そうおっしゃっていた方がいました。
酒飲みの気持ち、ということです。
美味しく飲み続けるために量を調整するのは大事な考え方です。
-
日常運動
1日30分、週5回の散歩で十分です。
腰や膝が痛ければ、それをどうにかしつつ、ラジオ体操などのストレッチ、軽い全身運動がお勧めです。
体重が多い方は、体重減量のサポートも致します。
足腰の負担を減らしながら、体脂肪を減らし、筋力をつけることが最短の道です。
急がば回れ、とはこの事をいいます。 -
さらには
続けることが非常に重要です。
思い立ったらすぐにやる。
これは大事ですが、少しづつでいいと思います。
はじめはなんちゃってから始めていき、習慣になったらとてもよいのです。
一回試みて、うまくいかなかったからといって諦めることはないです。
別な方法を試してみるのもいいものです。
うまく習慣化出来た方や、なかなか出来ない方など沢山の方をみてまいりました。
受診いただいたときに、そのような話を含めてご相談ください。
できるだけサポートをしていきたいです。