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利尿剤と言われたら尿がたくさん出る薬と思うという話。

[2024.05.22]

高血圧の治療は、基本減塩を中心とした食事療法と定期的な運動療法です。


そのうえで、降圧剤、いわゆる投薬による血圧管理を行い、気温季節や生活上の様々な影響による血圧の変動をみつつ、患者さんと血圧治療を行っていきます。

その降圧剤は、数種類が選択されます。診療ガイドラインでも大体の推奨などはあります。それぞれどんなタイミングや組み合わせ、量の調整などは、医者の腕、のような部分もあり、目の前の患者さんの生活スタイルによっていろいろなことをお話しながら調整をしていくものです。

降圧剤の中に「降圧利尿剤」というものがあります。


サイアザイド系利尿剤という表現もしますが、これは簡単に言えばおしっこの中に体内の塩を捨てる、という原理です。
薬局に行って利尿剤が追加れましたね、と説明されますが、そう聞くとトイレに頻回に行くことになるから嫌だということで内服されていなかったということがあります。


全く服用しないまでも、バスに長時間乗るから、とか旅行に行くから、ということで利尿剤を服用しなかったという話を患者さんからお聞きます。


旅行中に頻回にトイレにいくのは嫌だ。多少血圧が上がったとしても内服はしないようにしておこう、という気持は良くわかります。ただ、旅行中は外食、旅館、ホテルなどでご馳走を食べることが多くなります。美味しい食事、は一般的に塩分量が多いです。


旅行中に塩分摂取過多となり、血圧が上昇しやすくなります。お酒を飲まれる方ならなおさら、お酒のおつまみからも塩分はたくさん入ってきます。


高血圧の治療をしっかりしましょう、という観点では、旅行中ほどサイアザイド系利尿剤を飲んでもらいたくなります。
では、、サイアザイド系利尿剤で本当に尿量・尿回数が増えるのか?
はい、でもあり、いいえ、でもあります。


体内に塩分が多量に貯留している状態や食塩過剰摂取状態では、多量の塩分を排泄するために尿量を増加し、尿(液体)に塩(固体)を溶かして排出します。
食塩過多では尿量もそれに応じて増えていきます。


なので、サイアザイド系利尿剤を飲み始めた2週間くらいでは、それまで溜まっている余計な食塩を排出するために尿量が増えます。(これを初期利尿と呼びます)


ラーメン、カレー、麻婆豆腐は現代の食塩過多食の代表ですが、こういった食事をった数時間以内は、とくにサイアザイド系利尿剤を服用しているかたは尿が増えます。少しトイレに行く回数が増えたかな、程度ではありますが。


服用開始し、2週間を過ぎると、内服薬のせいで尿量が増えることはありません。
それでもトイレ頻回の日があったとすると、食塩を過剰にとった可能性を考えます。


先日、旅行に行くのにこのサイアザイド系利尿剤を飲むのをやめて、その後も飲んでなかったら血圧は上がり、足も少しむくんだという方とお話をしていて、上記のようなお話をしてよくご理解とご納得をいただき、内服再開していただき、2週間で尿は増えたが血圧もむくみも良くなった、ということでした。


ただ、薬は大事だから飲んでください、ではうまくいかないです。

なんで血圧が下がったほうがいいのか、血圧が高いとどんな怖いことがあるのか、なんてお話もいいのでしょうが、人はみな体調を悪くしたいわけではないです。

患者さんごとに何を気にされて、何が嫌で、何が不安で治療をうまく受けることができないのか。
何を困られていて、どう対処すれば、うまくいくようになるのか

その問題を一緒に探して、一緒に考えて、一緒に解決していく。

多くの患者さんたちと長い長い付き合いをしてきて、色んな人がいて、いろんな考え方のご家族様がいて、いろんな治療の仕方があるのは経験的にわかっています。


患者さんに寄り添う、なんて言葉がありますが、実際にはもっと泥臭い話と思います。


これからも、相手をしっかり見ることからはじめ、目の前の患者さんにとって最適であると思うことしっかり考えて、できる限りやっていこうと思った一日でした。

以上、利尿剤と言われたら、尿が出すぎるのは嫌だなと思うのも当然だし、それをうまく理解して治療をより良いものにしていきましょうという話でした。

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