ヒトメタニューモウイルス感染症について
どんなウイルスか?
気管支炎や肺炎などの呼吸器感染症をひきおこすウイルスの一種です。
2001年に初めて見つかりました。
1~3歳の幼児の間で流行することが多いです。
大人にも感染します。
母親からもらった移行抗体が消失する生後 6 カ月頃から感染が始まり、 2 歳までに 50%、10 歳までにほぼ全員が1度は感染しています。
幼少期では、何度も感染し、次第に免疫を獲得していき、症状は軽症化していきます。
症状
潜伏期間は5日前後です。
咳 (1週間程度持続する)
発熱 (5日程度持続する高熱)
悪化すると
ぜいぜいする(呼吸がひゅーひゅーいう)
呼吸困難
肺炎・気管支炎の症状が強くでてきます。
ときには、下痢や軟便、嘔吐などを伴うことがあります。
中耳炎や細菌感染などを合併することもあります。
ただし、成人では70%近くが、感染していても発症しないと言われています。
ウイルス排泄は1−2週間続くため、この間は周りに感染を広めてしまう可能性があります。
周りに感染を広めないために、マスク着用が非常に重要です。
流行季節
日本では毎年3−6月に流行しています。
最近ではRSウイルス感染症の流行期と重なることが多く、判断が難しくなってきました。
経過
通常では、1週間で症状は改善します。
発熱が続くときには、肺炎や中耳炎などの細菌感染の合併を考える必要があります。
診断
検査として、迅速抗原検査キットがあります。
鼻腔に綿棒をいれて検査する方法です。
ただし、保険診療では、肺炎が疑われる6歳未満の患者さんが検査対象です。
軽い症状の小児や7歳以上では保険診療で検査はできないため、注意が必要です。
COPD(閉塞性肺障害・肺気腫)の方では肺炎など重症化する可能性があります。
治療法
基本的に対症療法となります。
ウイルスの増殖を抑える特効薬はありません。
解熱剤やせき止め、整腸剤などで症状を楽にする治療が中心となります。
細菌感染を合併した場合は抗生物質の点滴や内服治療を行うこともあります。
気管支喘息の持病がある方は、喘息発作が起こることもあり、吸入治療が必要になることもあります。
高齢者では重症化する可能性があり、特に肺炎合併には注意を要します。
予防について
予防接種・ワクチンはありません。
ヒトメタニューモウイルスは 飛沫感染と接触感染です。
感染症の予防の基本は、手指消毒、手洗い、うがい、マスク着用です。
重要なことなのでもう一度
風邪などの上気道炎の原因となるウイルス感染では、このヒトメタニューモウイルスを含めて皆同じように考えます。
手や指を介しての接触により感染することがあります。
うがいは喉の対策です。
手洗いや手の消毒の徹底は、風邪の伝染防止に有効な対策です。
当院では発熱外来を行っております。
急な熱やせき、喉の痛みなどでお困りの方はご相談ください。
参考文献
Papenburg J, Boivin G, Rev Med Virol 20: 245-260, 201