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2026年の心不全治療 その1

[2026.07.08]

この1か月、ずっと読んでいた論文です。

世界中で心不全治療は問題になっていて、各国の心臓病に携わるトップの方々が、今の時代の心不全治療についての共通同意項目についてまとめた文章です。

原文はこちら。

心不全はいつでも問題になっています。

今の時代では、心不全は「発症してから治療する病気」から「発症前に見つけて防ぐ病気」として考えることが重要であると言えます。

心不全という言葉を聞くと、多くの方は

「心臓がかなり悪くなった状態」

「入院が必要になる病気」

というイメージを持たれるかもしれません。

でも近年では、心不全に対する考え方は大きく変わってきています。

 

心不全を 症状が出てから見つける病気 ではなく

症状が出る前からリスクを見つけ、予防していく病気

として考えるようになったからです。

 

先に紹介した論文は今年、米国心臓協会、米国心臓病学会、欧州心臓病学会、世界心臓連合などが共同で、「心不全の第2次ユニバーサル定義」 を発表したものです。

これは、世界中の医師、研究者、医療システム、政策立案者が、心不全を共通の言葉で理解し、診断・予防・治療につなげるための重要な考え方の最新のまとめになっています。

 

特に重要なのは

心不全の定義をより標準化し、心不全の前段階である

pre-HF、つまり「心不全予備群」

をしっかり見つけることが強調されている点です。

 

心不全は、ある日突然始まるわけではありません。

心不全になるまでの準備期間、といえるものは

高血圧が長く続いている。
糖尿病や肥満がある。
腎機能が少しずつ低下している。
心房細動がある。
睡眠時無呼吸症候群がある。
心エコーで左室肥大や左房拡大がある。
BNPやNT-proBNPが少し高い。
冠動脈石灰化や動脈硬化がある。

このような状態は、まだ息切れむくみがはっきり出ていなくても、将来の心不全につながる可能性があります。

降圧剤を服用するかどうか迷っている方は、血圧のことを考えますが、循環器内科医は、その先の心不全にならないように、という強力で重大な問題を解決すべく、血圧治療について考えています。

 

今回の文書では、心不全のステージとして、次のように整理されています。

Stage A:心不全リスクがある段階
高血圧、糖尿病、肥満、動脈硬化性疾患、心毒性薬剤への曝露、心筋症の家族歴などがあるものの、まだ心臓の構造異常や心不全症状はない段階です。

Stage B:pre-HF、心不全前段階
症状はありませんが、左室肥大、心拡大、壁運動異常、拡張障害、充満圧上昇、BNPやトロポニン上昇など、心臓にすでに変化が出ている段階です。

Stage C:症候性心不全
息切れ、むくみ、起座呼吸、倦怠感など、心不全の症状や徴候がある段階です。

Stage D:進行した心不全
安静時や軽い動作でも症状が強く、入退院を繰り返したり、通常の治療だけでは管理が難しくなったりする段階です。

ここで大切なのは、Stage CやDになってから慌てるのではなく

Stage AやStage Bの段階で介入すること です。

予防できるのは、この段階だからこそ、といえます。

 

「症状がないから大丈夫」とは限りません

心不全の難しさは、初期には症状が目立たないことです。

「少し疲れやすい」
「年齢のせいで息が上がる」
「階段が少しつらい」
「最近、体重が増えた」
「足がむくむけれど、夕方だけだから大丈夫」

このような症状は、日常生活の中では見過ごされやすいものです。

 

しかし、心臓の検査をしてみると、左室肥大、左房拡大、拡張障害、弁膜症、心房細動、BNP上昇などが見つかることがあります。

先程のようなだるさ、を中心としたような症状の方が来院されたときに、当日、すぐに心エコーで評価して治療を組み立てていくことを当院が重要視しているのは、このためです。

 

心不全は、血圧や血糖値のように単純な数字ひとつだけで診断する病気ではありません。

今回のステートメントでも、心不全は症状、身体所見、血液検査、心エコー、胸部レントゲン、CTなどを総合して判断する臨床症候群と再確認しています。

特に、駆出率が保たれた心不全、いわゆるHFpEF(ヘフペフ)では、BNP・NT pro BNPが正常に近い場合でも心不全を否定できないことも確認されています。

つまり、「BNPが高くないから絶対に心不全ではない」とは言い切れません。

心エコーやCT、症状、身体所見などを駆使して、診断治療につなげます。

 

続きはその2へ

 

 

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