2026年の心不全 第四話 HFpEFは治療法がある心不全といえるようになった
少し前まで、HFpEFは循環器診療の中でも非常に難しい病気でした。
心臓の収縮力、つまりLVEFは50%以上保たれている。
それなのに、
- 息切れ
- むくみ
- 運動すると苦しい
- 心不全入院を繰り返す
という事が起こる。
心臓のポンプ力には問題ないように見えるのに、血液が行き渡っていない症状が困る。
これがHFpEFです。
以前は治療の選択肢が少なかった
2021年頃までのHFpEF治療は、
- 利尿薬
- 高血圧治療
- 心房細動治療
- 糖尿病治療
- 冠動脈疾患治療
などが中心でした。
しかし2026年ESCガイドラインでは状況が変わっています。
HFpEFに対する基礎薬として、
SGLT2阻害薬とMRA
が明確に位置付けられました。
さらに必要に応じて、
- ACE阻害薬
- ARB
- ARNI
- 利尿薬
などを組み合わせます。
HFpEFは一つの病気ではない
HFpEFの難しいところは、患者さんによって原因が違うことです。
たとえば、
- 肥満
- 高血圧
- 心房細動
- 腎臓病
- 糖尿病
- 冠動脈疾患
- 心アミロイドーシス
- 睡眠時無呼吸症候群
などが関係します。
そのため2026年の考え方は、
「HFpEFという診断を付けて終わる」のではなく、「なぜこの患者さんがHFpEFになったのか」を探す
ということが当たり前になってきました。
むくみ、高血圧、肥満、不整脈、腎臓病、心臓の血管の病気、心アミロイドーシスなど、一人ひとりの原因や悪化要因を見つけて、それぞれを治療することが大切です。
細かく言うならば
- 体に水がたまっている → 利尿薬で余分な水分を減らす
息切れや足のむくみがある場合は、体にたまった水分を減らす治療を行います。
- 血圧が高い → 血圧をしっかり下げて心臓の負担を減らす
高血圧は心臓に強い負担をかけるため、適切な血圧管理が重要です。
- 肥満がある → 体重を減らして心臓の負担を軽くする
肥満が心不全の原因や悪化要因になっている場合は、セマグルチドやチルゼパチドなどを含めた減量治療を検討します。
- 心房細動などの不整脈がある → 脈の速さやリズムを整える
脈が速すぎたり不規則だったりすると心臓に負担がかかるため、薬や必要に応じてカテーテル治療を行います。
- 腎臓の機能が低下している → 心臓と腎臓の両方を守る治療を行う
心臓と腎臓は強く影響し合うため、腎機能を守ることも心不全治療の大切な一部です。
- 心臓の血管が狭い・詰まっている → 心臓への血流を改善する
狭心症や冠動脈疾患が原因の場合は、薬物治療に加えて、必要に応じてカテーテル治療やバイパス手術を検討します。
- 心アミロイドーシスなど特殊な原因が隠れている → 原因に合わせた専門治療を行う
特に高齢の方の心不全では、心筋に特殊なたんぱく質がたまる病気が隠れていることがあります。
原因が分かれば、その病気に応じた治療が可能です。
「心不全を早期に発見し、LVEFを越えて基礎治療を早く導入し、原因・肥満・腎臓・鉄欠乏などまで含めて包括的に治療する心不全診療」
の時代であることを強く認識しています。
