2026年の心不全 第一話 「HFmrEF」が消えた
心臓のポンプ機能45%は、もう“中間”ではなくなったという話です
心不全では、心臓がどれくらい血液を送り出せるかを示す「左室駆出率(LVEF)」という数字を重視します。
これまでのESC心不全ガイドラインでは、
- LVEF 40%以下:HFrEF
- 41~49%:HFmrEF
- 50%以上:HFpEF
という3つに分類していました。
当院でも、今まで心臓病の患者さんでは心エコー検査を行ったときにはかならず患者さんと共有するLVEF という数字です。
ところが2026年ESC心不全ガイドラインでは、この分類が大きく変わりました。
HFmrEFというカテゴリーがなくなりました。
LVEF 50%未満をHFrEF (ヘフレフ)
50%以上をHFpEF(ヘフペフ)
とする2分類になりました。
すっきりです。
これまで「EF 45%」は少し宙ぶらりでした。
たとえば心エコーでLVEF 45%だった場合、以前は「軽度低下」「中間型心不全」という扱いになりました。
LVEF 30%の患者さんほど積極的にHFrEF治療を行うべきか、やや曖昧な部分がありました。
しかし近年、心不全治療薬の効果を詳しく解析すると、LVEF 40%を境に治療効果が突然消えるわけではないことが分かってきました。
心臓の病気は、数字できれいに二分できるものではありません。
LVEF 39%と41%で病態が突然別物になるわけではないのはわかっていたのです。
2026年からは「50%未満なら収縮機能低下」と考える
新しい考え方では、LVEF 45%であっても「軽いから様子を見る」のではなく、
HFrEF として、心不全治療を積極的に考える
方向になりました。
ただし重要な注意点があります。
LVEF 41~49%の患者さんに対するβ遮断薬やACE阻害薬、ARNIなどのエビデンスは、LVEF 30%前後の患者さんほど強固ではありません。
2026年ガイドライン自身も、この領域だけを対象とした大規模試験が十分ではないことを認めています。
大切なのは「EFの数字」だけを見ないこと
LVEF 45%という数字だけを見るのではなく、
- 息切れ
- むくみ
- NT-proBNP
- 心臓の大きさ
- 弁膜症
- 不整脈
- 冠動脈疾患
- 腎機能
などを総合的に評価する必要があります。
2026年ESCガイドラインは、心不全診療を「40%という数字で区切る診療」から、一歩前に進めた改訂と考えています。
「EFを細かく分類して治療を分ける心不全診療」の時代は終わったと思っています。
「心不全を早期に発見し、LVEFを越えて基礎治療を早く導入し、原因・肥満・腎臓・鉄欠乏などまで含めて包括的に治療する心不全診療」
の時代であることを強く認識しています。
