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1万歩より大切かもしれない「歩き方」

[2026.03.17]

インターバル速歩が注目されている

健康のために「毎日1万歩を目標にしましょう」と聞くことは多いと思います。

実際に、外来でも「毎日しっかり歩いています」とお話ししてくださる方はたくさんいらっしゃいます。

それ自体は本当に素晴らしいことです。

歩く習慣があることは、それだけで大きな財産です。

ただ一方で、こんなお声をいただくこともあります。

「ずっと1万歩を続けているのに、体重も血圧もあまり変わらない」

「頑張っているのに、思ったほど体力がついた感じがしない」

こうしたときに大切になってくることがあります。

「どれだけ歩いたか」だけではなく、「どんなふうに歩いたか」という視点です。

最近あらためて注目されている、「インターバル速歩」

これは、信州大学の研究グループが長年にわたって研究を重ねてきた方法で、中高年の体力や脚力、血圧や代謝の面で良い変化が期待できるとして知られています。

名前だけ聞くと少し難しそうですが、やり方はとてもシンプルです。

3分間、少し速めに歩く
3分間、ゆっくり歩く
これを交互に繰り返す

たったこれだけです。

速めに歩く時間は、「少し息が上がるかな」「少しきついかな」と感じるくらいが目安です。


一方、ゆっくり歩く時間は、普段通り会話ができるくらいで大丈夫です。

 

つまり、「ずっと頑張り続ける」のではなく、少し頑張る時間と、楽に歩く時間を交互に入れていく歩き方です。

なんとなく、人生にも通じるものを感じます。

 

なぜ普通に歩くだけでは変わりにくいことがあるのか

私たちの体は、同じ刺激に慣れてしまう性質があります。

毎日歩くことはもちろん健康によいのですが、ずっと楽な強さのままだと、体に「もっと強くなろう」という変化が起きにくいことがあります。

 

研究では、普通の歩行と比べて、インターバル速歩を行ったグループのほうが、脚の筋力や体力がより改善し、血圧にも良い変化がみられたと報告されています。

つまり、同じ「歩く」という運動でも、ほんの少し“強さ”を工夫することで、体の反応が変わってくるのです。

 

体力が上がる、というのはどういうこと?

「体力がつく」と聞くと少し漠然としていますが、日常生活に置き換えると

坂道や階段で息が切れにくくなる

以前より疲れにくくなる

長く動いてもへばりにくくなる


といった変化につながります。

この論文を紹介した一般紙などで「10歳若返る」といった印象的な表現が使われることもありますが、そこは少しわかりやすく言っている部分もあります。


ただ、研究としてみても、心肺機能の改善が期待できる歩き方であることは確かです。

 

歩くだけで脚力にもよい影響がある

インターバル速歩の面白いところは、体力だけでなく、脚の筋力にもよい影響が期待できることです。

 

普通の散歩では、主に「持久力」を支える筋肉が働きます。

一方で、少し速く歩く時間を入れることで、太ももやお尻の筋肉への刺激が増えます。

そのため

階段が少し楽になる

立ち上がりやすくなる

つまずきにくくなる

歩く姿勢がしっかりしてくる

といった変化にもつながる可能性があります。

年齢を重ねると、体重や採血データだけでなく、「しっかり歩ける」「転びにくい」といったこともとても大切になります。

そういう意味でも、インターバル速歩はとても実用的な運動だと思います。

 

血圧にもよい影響が期待できる

運動が血圧に良いことはよく知られていますが、インターバル速歩は、その中でも比較的しっかりした変化が期待される方法として注目されています。

もちろん、これだけで全員が薬をやめられる、という話ではありません。

ただ、「ただ歩く」よりも、「少しだけ息が上がる時間を入れて歩く」ほうが、血圧の管理に役立つ可能性が高いのです。

外来でも、「歩きましょう」だけで終わるのではなく、「どう歩くか」までお伝えできることには大きな意味があると感じています。

炎症や老化との関係も注目されている

最近では、運動の効果を、体重や血圧だけでなく、炎症や老化の仕組みの面から調べる研究も進んでいます。

インターバル速歩についても、慢性的な炎症に関わる仕組みに影響を与える可能性があることが報告されています。

ここはまだ一般の方にとっては少し難しい話かもしれませんが、簡単に言うと、運動はただカロリーを消費するだけではなく、体の中の“調子を整える力”にも関わっている、ということです。

動脈硬化、糖代謝異常、フレイルなど、年齢とともに気になってくる問題は、こうした慢性的な炎症と無関係ではありません。

ですので、歩くことを「痩せるためだけ」と考えるのではなく、「将来の体を守るため」と考えると、とても意味のあることだと思います。

血糖や糖尿病の面でも期待されている

インターバル速歩は、糖尿病や血糖の管理という面でも期待されています。

少し強度の高い運動では、筋肉が糖を取り込みやすくなり、血糖の管理に良い方向に働くことがあります。

糖尿病のある方を対象にした研究でも、代謝や身体機能、筋力にとって有益な可能性が示されています。

激しい運動は続かない、ジムはハードルが高い、という方でも、歩き方を少し変えるだけなら取り入れやすいかもしれません。

その意味で、インターバル速歩はとても現実的な方法です。

 

骨の健康にも関心が集まっている

最近は、骨密度との関係にも注目が集まっています。

特に閉経後の女性を対象にした研究では、骨密度が低めの方で改善がみられたという報告もあります。

まだ「これだけで骨粗鬆症が治る」と言える段階ではありませんが、骨に適度な刺激をかけながら、脚の筋力も保てるという点では、骨折予防やフレイル予防の観点からも興味深い方法です。

 

実際にはどう始めればよい?

始め方はとてもシンプルです。

まずは3分間、少し速く歩く
次に3分間、ゆっくり歩く
これを繰り返す

研究では1日5セットくらい行う方法が多いのですが、最初からそこまでできなくてもまったく問題ありません。

最初は1セットでも2セットでも十分です。

大切なのは、「少し息が上がる歩き方」を生活の中に入れてみることです。

速歩きの目安は、

少し息が上がる
会話はできるけれど少し話しにくい
全力ではなく、ややきつい

このくらいです。

 

歩くときは、

少し前を見る
歩幅を少し広げる
お尻の筋肉で地面を押すように意識する

こうしたことを意識すると、自然と速歩きらしいフォームになりやすいです。

こんな方は無理をせず、まず相談を

とても良い方法ではありますが、どなたでも急に始めてよいとは限りません。

胸痛がある方

強い息切れがある方

不整脈が疑われる方

膝や腰の痛みが強い方

転びやすさが心配な方

心臓や肺の病気がある方

こうした方は、無理をせず、まず主治医に相談してから始めることが大切です。

「ややきつい」と感じる強さは人それぞれ違うため、ご自身に合った強度で行うことが何より大事です。

 

1万歩の習慣そのものを否定する必要はまったくない、ということです。

歩く習慣があること自体、とても素晴らしいことです。

そのうえで、もし「頑張っているのに思ったより変わらない」と感じているなら、歩数をさらに増やす前に、少しだけ歩き方を変えてみるのもよいかもしれません。

3分だけ少し速く歩く

それを普段の散歩や通勤の中に取り入れてみる

たったそれだけでも、体の反応は変わる可能性があります。

 

インターバル速歩は、3分の速歩きと3分のゆっくり歩きを繰り返す、とてもシンプルな運動法です。

信州大学の研究を中心に、中高年の体力、脚力、血圧、代謝などに良い影響が期待できることが報告されています。

「たくさん歩くこと」ももちろん大切です。

でも、それと同じくらい、「少し息が上がる時間を上手に取り入れること」も、体を元気に保つうえで大切なのかもしれません。

思ったほど変化が出ないと感じたら
「もっと歩かなきゃ」と自分を追い込むのではなく、「少し歩き方を変えてみようかな」と考えてみるのもいいと思います。

 

健康づくりは、特別なことを始めることよりも、毎日の習慣を無理なく少し整えていくことの積み重ねだと思います。

その意味で、インターバル速歩は、忙しい方にも、運動が苦手な方にも、取り入れやすい方法のひとつです。

これから暖かくなり、少し外を歩きやすい季節になります。
いつもの散歩や通勤の時間のなかで、まずは3分だけ、少し速く歩いてみる。
そんな小さな一歩が、これから先の体調や体力を支えてくれるかもしれません。

ご自身のペースで、無理のない範囲から。

毎日の歩く時間が、皆さまの健康を守るやさしい習慣になっていけば、とても嬉しく思います。

 

参考文献

 

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