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7月のつぶやき ある患者さんへの返答

[2026.07.07]

今回は、医療知識の話ではありません。

 

 

医師を30年近くしていると長い付き合いの患者さんもおられます。

孫の顔を見てみたい、とか、定年までバリバリ仕事をしたいから、などとお聞きしながら入院・外来での診療を継続している患者さんもいらっしゃいます。

 

定年までたどり着いたけれど、この先どうしようかな、とか考えてしまうことがあるんだよね、とある方が言われておりました。

生きがい、といことかなと感じました。

 

自分はどうだろうかと、考え続けています。

 

おいしいものを食べたとき。
きれいな景色を見たとき。
仕事がうまくいったとき。
病気がよくなったとき。

そうした瞬間には喜びはあります。

しかし、もう少し深いところで考えると、人間の生きがいはかなり本質的には、

愛されたい
役に立ちたい
ありがとうと言われたい

という気持ちに支えられているように思います。

これは単なる精神論ではありません。

医学的に見ても、人とのつながり、役割、感謝、安心感は、心と体の健康に大きく関わっていると思っています。

人は「つながり」の中で生きている

人間は、ひとりで完結する生き物ではありません。

自分のためだけに生きていくほど強くなれないとも思っています。

家族、友人、職場の仲間、地域の人、医療者、患者さん。
誰かと関わり、誰かに気にかけてもらい、誰かを気にかけることで、自分の存在を確認している気がします。

「自分はここにいていい」
「自分を待ってくれている人がいる」
「自分のことを覚えてくれている人がいる」

この感覚は、心の安定にとても重要と考えています。

自分にとっても、相手にとっても、ですね。

逆に、孤独や社会的孤立は、心だけでなく体にも影響します。

気分の落ち込み、不眠、食欲低下、活動量の低下につながることがあります。

長い目で見ると高血圧、糖尿病、心血管病、認知機能低下、フレイルにも関係してきます。


歳を重ねれば、なおさらでしょう。

孤独は、ただ「寂しい」という感情の問題だけでないと思っています。

医学的にも、健康に影響する大切な因子である、と様々な研究で目にします。

「愛されている」という感覚は安定につながる

人は、誰かに大切にされていると感じると、安心します。

また、だれか、なにか、を大切にしている、という気持ちも同様です。

推し活している方は目がキラキラしているのが常、でもあります。

 

安心すると、呼吸が落ち着き、眠りやすくなり、血圧や脈拍も安定しやすくなります。

反対に、不安や緊張が強い状態が続くと、自律神経のバランスが崩れ、動悸、胸部不快感、息苦しさ、胃腸症状、不眠などが出やすくなります。

循環器内科にも、
「胸がドキドキする」
「息が吸いにくい」
「夜中に目が覚める」
「血圧が急に上がる」
という訴えで来院される方がいます。

もちろん、心房細動、狭心症、心不全、肺疾患、甲状腺疾患、貧血など、医学的に見逃してはいけない病気をきちんと調べる必要があります。


ただ、その一方で、強いストレス、不安、孤独、緊張が体の症状として表れているのでは? 

としか考えられない瞬間もあります。

 

人間の体は、心と切り離されていません。

その区別をつけるのは困難、というより意味がない、とも思っています。

「安心できる関係があるかどうか」は、体調にも関わこともある、ということです。

人は「役に立っている」と感じると元気になる

もうひとつ大切なのが、役割です。

人は、ただ守られるだけではなく、誰かの役に立ちたい生き物です。

家族のために食事を作る。
孫の顔を見る。
職場で頼りにされる。
地域の集まりに参加する。
友人の話を聞く。
患者さんに声をかける。
犬の散歩をする。
庭の植物に水をやる。

どれも立派な役割です。

 

年齢を重ねると、病気が増えたり、体力が落ちたり、以前できていたことが難しくなったりします。

すると、本人は「もう自分は役に立たない」と感じてしまうことがあるようです。

 

しかし、これはとても危険な感覚に思えます。

「自分にはまだ役割がある」
「自分を必要としてくれる人がいる」
「自分にもできることがある」

この感覚は、活動量を保ち、生活リズムを整え、治療への意欲を支える力になります。

医学的に見ても、活動量の低下は筋力低下、食欲低下、睡眠の質の低下、血糖・血圧管理の悪化、フレイルの進行につながります。


一方で、小さな役割を持ち続けることは、体を動かす理由になり、生活の張りになります。

 

そう考えているからこそ。

「患者さんが、この薬一生飲まなきゃいけないの? 」とか

「長生きなんかしたくないんだどね」とか

言葉にされたとき。

 

医学的な説明はたぶん無力で、この先の人生、というと重いですが生活の見通しに不安を感じられているのだろうなと考えたりします。

 

外来診療中にその返答をどうするか。

採血結果を説明するようにはいきません。

その問い、に対して真摯に答えるにはあまりにも時間が短いと思います。

「ありがとう」は、最高の薬のひとつかもしれない

「ありがとう」と言われることは、人にとってとても大きな意味を持ちます。

ありがとうと言われると、自分の行動が誰かに届いたと感じます。

自分の存在に意味があったと感じます。

苦労が報われたように感じます。

私の尊敬する人はいつも、ありがとうと愛しているは出し惜しみしない、と言っています。

 

医療の現場でも、患者さんからの「ありがとう」という言葉は、医療者にとって大きな力になります。

 

病院勤務医時代に、昼も夜も明け方もまた昼も夜も明け方も永遠に続くと感じていた入院患者さんや救急外来からの緊急患者さんの対応で、体もメンタルもボロボロの時でも、なんとか助かった患者さんやそのご家族様からありがとうと言われた一言で何度もこちらが救わました。

 

だからこそ、入院とか手術とかしなくても済むように早期に病気を発見し、早期にしっかり治療をすることで、大きな病気の予防につなげていきたいと渇望したのが、戸頃循環器内科クリニックという形になっています。


同じように、患者さん自身も、家族や周囲から

「いてくれてありがとう」
「助かっているよ」
「一緒にいてくれてうれしい」

と言われることで、治療や生活に前向きになれることがあるんだろうと思っています。

人間は、検査値だけで動いているわけではありません。

血圧、血糖、コレステロール、心電図、心エコー、CT。これらはもちろん重要です。

しかし、それだけで人は生きていないです。

 

検査値が基準値内になったから、なに、ということです。

当然ですよね。

「また歩けるようになりたい」
「家族と旅行に行きたい」
「孫の成長を見たい」
「仕事を続けたい」
「人の役に立ちたい」

こうした気持ちがあるからこそ、薬を飲み、食事を見直し、運動を続け、検査を受けることができます。


治療の目的は、数値をよくすることだけではない

循環器内科では、高血圧、脂質異常症、糖尿病、心房細動、狭心症、心不全、睡眠時無呼吸症候群など、多くの病気を診療します。

これらの病気では、数値の管理はとても大切ではあります。

血圧を下げる。
LDLコレステロールを下げる。
血糖を整える。
心不全を悪化させない。
不整脈による脳梗塞を予防する。
睡眠時無呼吸を治療する。

どれも大事です。

しかし、治療の本当の目的は、単に数字をきれいにすることではありません。

その人が、その人らしく暮らせる時間を守ること。

大切な人と過ごす時間を守ること。

役割を続けられるようにすること。

「まだ自分にはできることがある」と思える生活を支えること。

これが医療の大切な目的だと思います。

生きがいは、大げさなものでなくていい

生きがいというと、大きな夢や使命のように感じますね。

でも。

実際にはもっと小さくていいんだろうと思います。

朝、家族に「おはよう」と言う。
近所の人と挨拶する。
植木に水をやる。
散歩に出る。
好きなテレビを見る。
友人に電話する。
通院の帰りにカフェに寄る。
誰かに「ありがとう」と言う。
誰かから「ありがとう」と言われる。

こうした小さなことの積み重ねで十分に思います。

医学的にも、生活リズム、睡眠、食事、運動、社会参加はすべてつながっています。

心が少し前を向くと、体も動きやすくなります。

体が少し動くと、また心も前を向きやすくなります。

戸頃循環器内科クリニックができること

私たちのクリニックは、病気を診る場所です。

しかし、病気だけを見ているわけではありません。

その人が何に困っているのか。
何を不安に思っているのか。
何を守りたいのか。
どんな生活を続けたいのか。
誰のために元気でいたいのか。

そこまで含めて診療することが大切だと考えています。

血圧を測ることも、心電図をとることも、CTや心エコーを行うことも、薬を調整することも、すべてはその人の生活を守るためにあります。

薬を服用するのは目的ではなく手段です。

検査もそうです。

その結果から何を導くのか、ということです。

人間は、愛されたいし、役に立ちたいし、ありがとうと言われたい生き物です。

だからこそ、医療は病気を治すだけでなく、

その人が誰かとつながり、自分の存在に意味を感じながら生きていくこと

を支えるものでありたいと思います。

体の健康と、心の健康と、人とのつながり。
これらは別々のものではありません。

戸頃循環器内科クリニックでは、当院に来られるひとりひとりの健康を支えていきたいと考えています。

 

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フィットネスルームの前のオリーブにいつの間にか実がなっていました。

着々と成長しています。

クリニックも同じように思っています。

スタッフが集まり、いい仕事をしてくれて、その結果、喜んでいただいたり頼りにしていただいたりする患者さんも増えてこられました。

近隣のクリニックの先生方からも、患者さんの紹介をいただけるようになり、精一杯のことをさせていただくようにしております。

ありがとうございます。

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