2つの咳といくつかの治療法
ゴホンといえば龍角散、というキャッチフレーズは耳に残ります。
咳が続けば息苦しいし、夜も眠れなくなります。
出来ることなら、止まってほしい。
この辛さから脱出したい。
一回咳をすると2キロカロリーを消費します。
1分間に1回の頻度で10時間咳をすると、約1200キロカロリーを消費します。
これは約3時間のランニングに匹敵します
疲れます。
なぜ咳が出るのでしょうか。
咳は体から異物を取り除くための防御反応です。
ですから、むやみに咳を止めることが、必ずしも良いことでもないから難しい点があります。
咳止め薬で止めないほうがいい咳があるのか?
咳を医学用語でいうと咳嗽 がいそう と呼びます。
乾性咳嗽、湿性咳嗽、なんて区別します
乾いた咳、たん絡みの咳、といういう言葉で表現しますね。
乾性咳嗽は止めたほうがいいです。
そのほうが楽になるので、咳止め薬で止めてしまいます。
湿性咳嗽、たん絡み、は咳止めが使いにくいです。
痰切り薬、通称 去痰薬 と呼ばれているおくすりを選びます。
咳を止める、というより、咳が出なくてもいいようにする、というイメージです。
痰を外に出すために咳が出ている、という考え方ができるため、単純な咳止め薬を使うより、痰きり薬を選ぶことが基本です。
よく使われる痰切り薬は2つあります。
ムコダイン(後発品名 カルボシステイン)
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粘液の「粘り」を減らします。
→ 気道粘液中の糖タンパクの合成を調整し、たんをさらさらにする。 -
粘膜の正常化します。
→ 鼻や気管支の粘膜修復にも効果が期待できます。
ムコソルバン(後発品名 アンブロキソール)
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線毛運動を活性化します。
→ 気道の繊毛の動きを高め、たんを外へ出す働きを助けます。 -
サーファクタント分泌促進
→ 肺胞の安定化や気道防御機能の向上につながります。 -
抗酸化・抗炎症効果も報告されています。
他にも痰切り薬は色々ありますが、割愛します。
痰が出てくる原因により痰切り薬を使い分けます。
慢性の痰、鼻水が喉に垂れ込んでいる(後鼻漏)、粘っこいたんならカルボシステイン
咳が強いときや、気管支炎で痰が出ているならアンブロキソール
アンブロキソールは小児用あり
一日一回服用タイプもある
のような感じで選んだりしますが、実際には各先生のお考えや経験によります。
リン酸コデインという最強の咳止め薬がありますが、強烈な便秘になりがちなので、下剤と一緒に副余数することが多いです。
一回3錠を一日4回復用するので、おくすりの数が増えて大変です。
ドラッグストアなどで手に入る総合感冒薬のなかには咳止め成分が入っています。
見ると、いろんな成分が入っています。
その時の症状にとって、必要な成分が少なかったり、必要ないような成分まで入っていることもあります。
たまに、市販薬が効かないから2倍、3倍の量を飲んでみたりする方もお見かけしますが、記載されている用法用量を守られたほうが安全です。
クリニックを受診されたほうが早いと思います。
3日程度市販薬を使っても良くならなかったら、受診をおすすめします。
単なる風邪ではない可能性があります。
咳喘息なら吸入薬で咳がおさまります。
アトピー咳嗽なら、吸入薬は効果なく、抗ヒスタミン薬(アレルギーの治療薬)で治療します。
乾性咳嗽の特徴は
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音:「コンコン」「ケホケホ」と乾いた感じで
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痰:ほとんど出ない、または全く出ない
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感覚:のどがイガイガ、むずむずする
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回数:しつこく、頻繁に出ることが多い
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多くの場合、気道の刺激や中枢性の反射が原因
🔹 原因となる病気や状態
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ウイルス性の初期の風邪
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インフルエンザ、咽頭炎、気管支炎初期
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百日咳
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アレルギー(例:アレルギー性鼻炎、喘息初期)
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胃食道逆流症(GERD)特に朝方の咳が特徴です。
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薬剤性(例:ACE阻害薬の副作用)
>>>ACE阻害薬は レニベース、ペリンドプリルなどがあります。
高血圧の治療や、心不全の治療で必要になります。
薬を飲み始めてから、咳が出ることがあります。
高齢者では、この咳の副作用により誤嚥性肺炎を防ぐ効果があるので、咳が軽度なら状況により、内服を続けることもあったりします。 - 感染後の咳
インフルエンザや新型コロナ感染の後に、熱も下がり痰も出なくなったにも関わらず、咳が続くことがあります。
この時には、肺炎を合併していることもあります。
大抵はレントゲン検査でわかりますが、中にはCTスキャンでないとわかりにくいこともあります。咳の出方や、直近の発熱などの症状から、CT検査の必要性を考えます。
*余談ですが、当院ではCTが常時撮影可能です。
即日検査、即日結果説明です。
もし、当院にCTがなかったとしたら。
こういった咳の原因を調べるときに、他施設にCT検査を依頼し、紹介状を作成し、予約し、受診してもらい、CT検査の予約を取り、後日CT検査を受けに行き、さらに後日、CTの結果を聞きに行き、そこで治療が始まることになるのか、と想像します。
お金も時間も治療タイミングも、ロスが大きすぎると思います。
湿性咳嗽の特徴は
🔹 特徴
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音:「ゴホンゴホン」という響きで、重たく感じる
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痰:絡む、または出てくる。
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感覚:胸に違和感や重さがある
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回数:持続的だが、痰が出た後は一時的に楽になることも
🔹 原因となる病気や状態
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風邪の中期〜後期
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気管支炎、肺炎、COPD(慢性閉塞性肺疾患)
- 咳喘息
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喘息の痰が多いタイプ
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副鼻腔炎の後鼻漏
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慢性の感染症(例:結核、気管支拡張症)
心臓の機能が低下しているせいでも咳が出ることがあります。
つまり、心不全でも咳が出ます。
レントゲンや、心エコー、血液検査などで咳の原因を調べる必要があることもあります。
「咳止め薬ください」と患者さんが言われた時には、本当は薬が欲しいのではないですね。
咳をしない状態になりたい、と言うことですね。
痰の具合や咳の原因、他に合併している病気などに応じて治療が決まって行きます。
戸頃循環器内科クリニックでは、咳が出るのが肺、気管支、喉、鼻、食道、心臓からなのか、しっかり診察を行い治療に当たります。
咳が良くなれば、しっかり眠れて快適な一日が過ごせるようになります。