閉塞性動脈硬化症についてのお話
閉塞性動脈硬化症についての説明を書きました。
少し書き足しです。
足の血管が完全につまっていても、何も症状がないことがあります。
つまっているのに、いくら本人さんにお話を聞いても別に痛くもなんとも無い、ということです。
でも、たまたま足の小指をタンスにぶつけたような、僅かな傷がなかなか治らず、詳しく調べたら足の血管がつまっていた、ということが起こります。
その方にカテーテル治療を行い血管が開通し、血流が良くなると、実は歩くと脚がだるくなってた、痛かったみたいだと言われます。
もう慣れてしまい、こんなものだ、靴のせいだ、運動不足のせいだ、歳のせいだ、などと思っていたとのことです。
自覚症状は案外当てにならないことがある、ということです。
だからこそ、当院の心臓ドックでは、ABI検査を必須にして、症状がなくとも動脈硬化が進んでいないかどうかを確認するようおすすめしています。
痛いのは辛いです。
症状との戦いについての話です。
2022年に日本循環器学会からでたガイドライン p45では以下の記載があります。
歩いていて脚が痛くなる、休むと楽になる間欠性跛行の症状に苦しんでいる方で、
リスクファクターの管理に加えて、シロスタゾールとスタチンを服用しましょうということです。
3番目、運動療法は監督下が望ましい、と書かれています。
監督下、とは、メディカルスタッフが見ている中で行うということです。
痛みが出るくらい歩行して、
痛みが中等度になったら休憩し、
1回30−60分繰り返し、
週3回、
少なくとも3ヶ月間行う
ことが推奨されています。
患者さん1人でこれを行うのは無理です。
気持ちが折れます。
なので、スタッフとともに運動することが重要です。
この論文では、LEADの患者さんで、痛みを感じない程度の運動(低強度運動群)と、感じる運動(高強度運動群)での比較をしています。
ABIの数値自体は改善しないものの、歩行距離がのびて歩行速度も速くなり、体のバランス、立ち座り動作も改善したと示されました。
痛みを感じない程度で運動を行った方々はそれらの改善は、なしでした。
さらに運動時間に着目すると興味深いことがわかります。
一週間あたりの運動時間比較になります。
低強度運動群 平均運動時間 145分
高強度運動群 77分
時間は短くとも、足の苦痛を耐えて運動した方々のほうが、色々良かったということです。
足が痛くなる、しびれる、という症状では脊柱菅狭窄症がありますが、こちらは痛みがある中での運動は避けるべきです。
悪化する可能性があります。
症状は似ていますが、対処は逆です。
なので、足の血管状態をしっかり把握する必要があります。
同じような症状でもどう向き合っていくのかは異なります。
1人では無理です。
医学的にも心理的にもサポートが必要です。
しっかりした検査や適切な薬の調整も重要です。
カテーテル治療などのタイミングの判断も重要です。
足に動脈硬化が起こった、ということは、心臓や脳にも同じことが起こる可能性を考えます。
心臓の血管、冠動脈の状態は心臓CTでわかります。
頸動脈はエコーでわかります。
循環器内科医は血管・動脈硬化の管理のみならず、リスクの管理をしっかりおこなっていきます。
当院では医師とメディカルスタッフが患者さんのサポートを行います。
薬出して、はいおわり、では良くならないからこそ、良いことを正しく理解いただき、ともに治療にあたっていこうとおもっています。