メニュー

起立性めまい 起立性障害 たちくらみについて考える

[2026.04.07]

たちくらみは年齢のせいだけではないです。

立ち上がったときに、
「ふわっとする」
「目の前が白くなる」
「力が抜ける」
「なんとなく気持ち悪い」

そんな症状を感じたことはないでしょうか。

こうした症状の背景にあるのが、起立性低血圧です。

これは、寝ている状態や座っている状態から立ち上がったときに、血圧がうまく保てずに下がってしまう状態です。
最近のJAMA Internal Medicineのレビューでも、起立性低血圧はよくあるのに見逃されやすく、生活の質の低下や転倒、失神につながる大切な病態として整理されています。


doi: 10.1001/jamainternmed.2026.0284

 

起立性低血圧とは?

起立性低血圧は、立ち上がってから3分以内に


収縮期血圧が20mmHg以上
または
拡張期血圧が10mmHg以上 下がる状態


をいいます。

ただ、患者さんにとって大事なのは数字そのものだけではありません。

本当に大切なのは、

  • 立ちくらみがある
  • 朝に特につらい
  • 立つとふらつく
  • 長く立っていられない
  • 転びやすくなった
  • 一瞬気が遠くなる

といった日常生活への影響です。

なぜ立ち上がるとつらくなるのでしょうか

私たちの体は、立ち上がると重力の影響で血液が足やお腹の血管にたまりやすくなります。

すると、心臓に戻る血液が減って、一時的に血圧が下がります。

本来なら、体はすぐにこれを感知して、

  • 心拍数を少し上げる
  • 血管をきゅっと縮める
  • 血圧を保つ

という調整を自動で行います。
いわゆる自律神経の調整、とよんでいるものの働きです。

ところが、この調整がうまくいかないと、脳への血流が一時的に減って、めまい、ふらつき、だるさ、目のかすみ、失神などの症状が出てきます。

こんな方は要注意です

起立性低血圧は、単なる「体質」や「年齢のせい」で片づけない方がよいことがあります。

特に注意したいのは次のような方です。

  • 立ち上がると毎回ふらつく方
  • 原因不明の転倒がある方
  • 失神したことがある方
  • 高齢の方
  • フレイル傾向のある方
  • パーキンソン病など自律神経に関わる病気がある方
  • 利尿薬や降圧薬などを使用している方
  • 脱水ぎみの方

先程のレビューでも、起立性低血圧は高齢者や自律神経障害を持つ方で特に重要であり、症状がはっきりしない場合でも評価すべきケースがあるとされています。

 ときに見かけるのは、高血圧を合併していて、降圧剤を服用しつつ調節障害も合併していると、あたかも血圧が下がりすぎたせいでふらつく、と自覚しやすいことです。

これは降圧剤がすべての原因ではなく、もともと調節障害が背景にあるために、症状が強調される気がするため、血圧の治療が中断に至ることもあります。

結果、動脈硬化が進行していく、という事態も起こりえます。

原因はひとつではありません

起立性低血圧には大きく分けて2つのタイプがあります。

1. 自律神経の働きが弱くなっているタイプ

神経の病気や自律神経の障害によって、立ち上がったときの血圧調整がうまくいかないタイプです。

2. それ以外の原因によるタイプ

こちらは比較的よく見かけます。

たとえば、

  • 脱水
  • 貧血
  • 降圧薬などのお薬の影響
  • 長い臥床
  • 心機能の低下
  • 足やお腹に血液がたまりやすい状態

などです。

つまり、起立性低血圧を見つけたときは、

「ただ血圧が低い」で終わりではなく、その背景を探ることがとても大切です。

 

治療でいちばん大切なのは、まず生活の整え方です

レビューでも、起立性低血圧の治療はまず非薬物療法が土台とされています。

具体的には、

  • 水分をしっかりとる
  • 必要に応じて塩分摂取を見直す
  • 急に立ち上がらない
  • 長時間の立ちっぱなしを避ける
  • 飲酒を控える
  • 原因になりうる薬を見直す
  • 腹部バンドや弾性ストッキングを活用する

といった対策がとても大切です。

水分量の確保、塩分補充、圧迫療法、行動修正、薬剤見直しが治療の柱として示されています。

地味に見えるかもしれませんが、こうした対策が効く方は本当に多いです。

逆に、ここを整えずに薬だけ増やしても、思うように改善しないことがあります。

薬が必要になることもあります

症状が強い場合や、生活対策だけでは十分でない場合には、お薬を使うことがあります。

JAMAのレビューでは、薬剤も紹介されています。

日本では保険適応されていない薬剤や、そもそもその使い方では日本では用いられていないものも紹介されています。

添付文書というものがあり、細かく決められた用法用量や適応など決まっているものがあります。

日本で実際に使いやすい3つのお薬

起立性低血圧の治療では、まず水分や塩分の見直し、急に立ち上がらない工夫、原因となるお薬の調整などが基本になります。

そのうえで、日本で実際の診療で押さえておきたい薬は、ミドドリン、ドロキシドパ、アメジニウムです。
それぞれ効き方に少しずつ違いがあり、患者さんのタイプによって向き不向きがあります。

ミドドリン

ミドドリンは、血管をしっかり収縮させて血圧を支えるタイプの薬です。

日本では本態性低血圧、起立性低血圧が適応となっており、添付文書上は成人で通常1日4mgを2回に分けて内服し、重症例では1日8mgまで増量できます。

この薬のよいところは、立ち上がったときのふらつきや立ちくらみに対して、比較的わかりやすく作用しやすいことです。

「座っているときや横になっているときはそれほど困らないけれど、立つと急につらい」という方では、非常に相性がよいことがあります。

一方で注意したいのは、横になったときに血圧が上がりすぎることがある点です。

ミドドリンでは、外国の神経原性起立性低血圧の試験で臥位血圧の過度の上昇が報告されており、頭痛や動悸がそのサインになることがあります。

重い心疾患、重い血管障害、排尿障害のある方などでは特に慎重な判断が必要です。

ドロキシドパ

ドロキシドパは、ノルアドレナリンのもとになる成分を補う薬です。

日本では、パーキンソン病におけるたちくらみの改善に加え、シャイ・ドレーガー症候群、家族性アミロイドポリニューロパチーに伴う起立性低血圧、失神、たちくらみ、さらに起立性低血圧を伴う血液透析患者さんのめまい・ふらつき・たちくらみなどに用いられます。

この薬が特に大切になるのは、自律神経の働きが落ちているタイプの起立性低血圧です。

たとえば、パーキンソン病関連や神経原性の起立性低血圧では、単に血管を締めるだけではなく、足りなくなった交感神経系の働きを補うという意味で理屈に合いやすい薬です。

外来では、「朝起きたときがつらい」

「立ち上がると急に頭がぼんやりする」

「神経の病気が背景にある」

といった方で選択することがあります。

ただし、この薬もやはり効きすぎると血圧が上がりすぎる可能性があるため、飲む時間帯や最終内服のタイミングはとても大切です。

アメジニウム

アメジニウムは、交感神経の働きを助けて血圧を保ちやすくする薬です。

日本では本態性低血圧、起立性低血圧、透析施行時の血圧低下の改善が適応で、承認された用法用量は本態性低血圧・起立性低血圧では1日20mgを2回に分けて内服します。

この薬は、ミドドリンのように「血管を直接締める」というより、体の内側にある交感神経の力を後押しして、血圧を支えるイメージの薬です。

そのため、慢性的に血圧が低めでだるい方や、朝が弱い方、あるいは透析時の血圧低下が問題になる方で使われることがあります。

国内臨床試験でも、起立性低血圧や透析時低血圧で一定の改善率が示されています。

ただし、交感神経を後押しする薬なので、動悸、血圧上昇、不眠、頭痛のような症状には注意が必要です。

また、高血圧、甲状腺機能亢進症、褐色細胞腫、閉塞隅角緑内障、残尿を伴う前立腺肥大などでは禁忌とされています。

3つのお薬をどう考えるか

とても大まかに言うと、

立ったときの血圧低下をしっかり持ち上げたいときはミドドリン

自律神経障害や神経原性の背景を意識するときはドロキシドパ

慢性的な低血圧傾向を交感神経の面から支えたいときはアメジニウム

という考え方が実臨床ではわかりやすいと思います。

これは添付文書上の効能・作用機序を踏まえた実践的な整理です。

 

ただし、ここで大事なのは

「血圧を上げればそれでよい」わけではない

ということです。

起立性低血圧の治療目標は、血圧の数字をきれいに見せることではなく、症状を中心に考えること。

つまり

  • ふらつきを減らす
  • 転倒を防ぐ
  • 失神を防ぐ
  • 日常生活を楽にする

ことです。

さらに、横になると血圧が上がりすぎる仰向け時の高血圧を合併する方もいるため、薬は慎重に選ぶ必要があります。


「なんとなく不調」の中に隠れていることがあります

起立性低血圧は、はっきりした「めまい」だけで出るとは限りません。

  • 朝がつらい
  • 立つとぼーっとする
  • 疲れやすい
  • 首や肩が重い
  • 外出するとしんどい
  • お風呂のあとにつらい
  • 食後に眠くてだるい

こうした症状の中に、起立性低血圧が隠れていることがあります。

「年齢のせいかな」「疲れかな」で済ませず、一度きちんと確認する価値があります。

当院で大切にしていること

戸頃循環器内科クリニックでは、起立性低血圧を単なる血圧の問題としてではなく、
転倒予防、失神予防、生活のしやすさを守るための重要なサインとして考えています。

原因は脱水なのか、薬の影響なのか、自律神経の問題なのか、心臓の状態はどうか。
そうした点を丁寧に整理しながら、その方に合った対応を考えていきます。

「立ち上がるとふらつく」
「朝に特にしんどい」
「転びやすくなった」
「血圧が低めで心配」

そんなときは、どうぞ遠慮なくご相談ください。

立ちくらみは、我慢するしかない症状ではありません

原因を見つけ、対策を重ねることで、毎日の過ごしやすさは変えられます。


参考文献

Moloney D, Youssef A, Okamoto LE. Management of Orthostatic Hypotension: A Review. JAMA Internal Medicine. 2026.

HOME

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME