脈がバラバラになる。
「最近胸がドキドキする」
「脈が不規則で気持ち悪い」
「少し歩いただけで息切れがする」
と感じることがあります。
多くは一過性の不整脈や心配のいらない症状であることもあります。
しかし中には 心房細動(しんぼうさいどう) という重大な不整脈が隠れていることがあります。
心房細動は放置すると 脳梗塞 を引き起こす可能性があり、日本における脳梗塞の原因のひとつとして知られています。
しかも発症すると重症化しやすく、後遺症が残るリスクも高いのです。
今回は「心房細動の初期症状」について考えてます。
1. 心房細動とは何か?
まずは正常から。心臓のリズムについて
私たちの心臓は、一日約10万回、リズムよく収縮と拡張を繰り返しています。
このリズムは心臓の電気信号によって調整されています。
自律神経が調節しているものでもあります。
規則正しくリズムを刻むことで、全身に血液を効率的に送り出すことができます。
心房細動の状態
心房細動では、この電気信号が乱れて心房(心臓の上の部屋)が「小刻みに震える」ような状態になります。
その結果、心室(心臓の下の部屋)に不規則な信号が送られるため、脈が 速くなったり、遅くなったり、バラバラになったり します。
何人ぐらいいるのか?
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日本では 100万人以上 が心房細動を持っていると推定されています。
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年齢とともにリスクは増加し、80歳以上では約10人に1人が発症すると言われます。
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高血圧、糖尿病、心臓弁膜症、甲状腺機能異常などの病気があると、さらに心房細動になるリスクが高まります。
2. 心房細動の初期症状とは?
心房細動は「症状が出る場合」と「まったく症状がない場合」があります。
実際、患者さんの半数近くは無症状で発見されると言われています。
症状が出る場合によく見られるもの
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動悸:「突然胸がドキドキして落ち着かない」「心臓が暴れているように感じる」
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脈の乱れ:「脈が飛ぶ」「リズムがぐちゃぐちゃで不安になる」
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息切れ:「以前は平気だった階段で息切れする」「体力が落ちたように感じる」
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めまい・ふらつき:脳に十分な血流が届かず、立ちくらみのようになる
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胸の圧迫感:胸が重苦しい、苦しい
症状がない場合
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健診の心電図で「不整脈あり」と指摘されて初めて気づく
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スマートウォッチなどで脈の不規則性を自動検知してわかる
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家族が「脈が変だね」と触れて気づく
つまり、「自覚症状が軽いから大丈夫」とは限りません。
症状があれば受診、となることが想定される中では、むしろ症状がない方のほうが大きなトラブルになり初めて症状が出る、ということもあります。
対策の立てようもありません。
無症状の心房細動の方がかえって脳梗塞リスクを見過ごしてしまいやすいのです。
3. 心房細動と脳梗塞の関係
なぜ脳梗塞になるのか?
淀んだ血液は、固まりやすい、ということです。
心房細動になると、心房がしっかり収縮しないために血液が心房内でよどみます。
すると血液が固まりやすくなり、血栓(血のかたまり) ができます。この血栓が血流に乗って脳の血管に詰まると脳梗塞が発症します。
知っておいたほうがいいこと
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心房細動に関連する脳梗塞は 重症化しやすい
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失語、麻痺などの後遺症が残ることが多い
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再発リスクも高い
統計的には
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心房細動があると脳梗塞のリスクは 5倍以上 に増えると報告されています。
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日本では心房細動関連脳梗塞は全脳梗塞の約20〜25%を占めるとも言われます。
4. 心房細動の種類
心房細動は持続時間によって分類されます。
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発作性心房細動
数分〜数日で自然に止まる。初期はこのタイプが多い。 -
持続性心房細動
1週間以上続き、薬や電気ショックが必要になる。 -
永続性心房細動
治療してもリズムを戻せず、慢性的に持続する。
初期症状で気づけば「発作性」の段階で発見できることが多く、治療の選択肢も広がります。
重要なことは
初期には、たまにの発作。
だんだん長くなっていく。
そのうち、ずっと心房細動のまま、になる。
ということかと思います。
総じて、重症化していく、と表現しています。
5. 検査方法
当院で行っている検査でいえば
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心電図:もっとも基本的な検査。短時間でも心房細動が記録されれば診断できます。
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ホルター心電図(24時間心電図):発作的に起こる場合に有効。日常生活中の脈の変化を記録できます。
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心エコー:心臓の構造や弁膜症の有無、血液の流れを確認します。
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心臓CT:心房内の血栓の有無や、冠動脈疾患の合併を調べられます。
6. 治療方法
治療は患者さんの状態に合わせて選択します。
いろんな背景、生活環境、薬の飲み合わせ、年齢や怪我しやすい仕事かどうか、などでも様々に変わります。
脳梗塞予防(最重要)
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抗凝固療法:血をサラサラにする薬
脳梗塞のリスクを「CHADS2スコア」という指標で評価します。
誰が服用したほうがいいのか、服用の必要が少ないのか。
メリットだけではなく、デメリットもあります。
その両方を天秤にかけて考えます。
服用開始後も、適宜、本当に続けて服用したほうがいいのか?ということを考えます。
不整脈のコントロール
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薬物治療:抗不整脈薬で脈を整える、または心拍数をコントロールする治療になります。
簡単に言うと、
【心拍数管理】脈が早すぎれば遅くし、遅すぎれば早くするようにするタイプの治療
あるいは
【リズム管理】バラバラの脈から正常の脈へ戻す、維持するタイプの治療です。
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カテーテルアブレーション:心臓にカテーテルを入れ、異常な電気信号の発生源を焼灼する。
発作性心房細動では特に有効です。
言い換えれば、発作性心房細動のうちに、進行悪化する前に考える治療とも言えます。
7. 生活習慣と心房細動
日常生活の習慣は心房細動の発症・悪化に大きく関わります。
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飲酒:アルコールは発作を誘発することがある(ホリデーハート症候群)
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カフェイン:過剰摂取は不整脈を誘発する場合がある。
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睡眠不足・ストレス:自律神経の乱れから不整脈を起こす。
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肥満・高血圧・糖尿病:心房細動のリスクを高める。
つまり「生活習慣病の管理」が心房細動予防にも直結します。
8. スマートウォッチと心房細動
近年、Apple Watchなどのスマートウォッチが心拍リズムの乱れを検知できるようになり、早期発見のきっかけになるケースが増えています。
ただし「アラート=必ず心房細動」とは限らず、必ず専門医で確認が必要です。
9. 受診の目安
次のような場合は早めに循環器内科を受診してください。
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動悸や脈の乱れが繰り返し起こる
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脈が速い・遅いが続く
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息切れや胸の不快感を伴う
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健診で不整脈を指摘された
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スマートウォッチで「心房細動の可能性」と表示された
10. 当院でできること
戸頃循環器内科クリニックでは、
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心電図・ホルター心電図による診断
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心エコーやCTによる心臓の精密評価
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抗凝固療法の管理 トラブル対策
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必要に応じて専門病院と連携したカテーテル治療紹介
- アブレーション後の再発徹底予防管理
まで、一貫した診療を行っています。
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心房細動は 初期に気づくことが何より大切です。
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自覚症状は「動悸」「脈の乱れ」「息切れ」などですが、無症状のことも多いのが注意点です。
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放置すると脳梗塞のリスクが高まります。
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検査と適切な治療で予防できる
「最近脈が不規則」
「胸がドキドキする」
「検診結果で不整脈って書いてあった」
そんな時は、ぜひ早めにご相談ください。
