脂肪肝は肝臓だけの病気ではないのです
健康診断で「脂肪肝」と言われたとき、まあ体重あるし、程度で見過ごしているような話をよくお聞きします。
脂肪肝ってなに?
と言われることもあります。
最近は脂肪肝を MASLD マッスルでぃー と呼ぶことが増えました。
代謝機能障害関連脂肪性肝疾患 という意味です。
英語で呼びたくなる日本語名です。
この脂肪肝、マッスルディー
MASLDは心臓・血管のリスクが上がっているサイン
だと捉えるほうが、臨床的に役に立つということがわかってきています。
脂肪肝の方は、将来的に肝臓の病気だけでなく、心筋梗塞・脳卒中・心不全・腎機能低下・心房細動といった循環器領域のトラブルが起きやすいことが分かってきました。
つまり脂肪肝は、肝臓の話で終わらせずに、循環器内科では 「総合リスク管理の入口」として捉えます。
循環器内科で脂肪肝を重視する理由
当院の外来でよく見る典型は、だいたいこのセットです。
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高血圧
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脂質異常症(LDLや中性脂肪)
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境界型〜糖尿病
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内臓脂肪型肥満
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睡眠時無呼吸症候群
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健診の腹部エコーで脂肪肝
この状態は一言でいうと、動脈硬化が進みやすい体質です。
脂肪肝は、その“体質”が肝臓に表れているサインのひとつ。
だから循環器内科としては、脂肪肝を「肝機能が少し高いだけ」と放置せず、心血管リスク管理のスイッチとして拾い上げたいのです。
脂肪肝の評価は「脂肪の量」+「線維化リスク」
脂肪肝の診療で大事なのは、単に「脂肪があるかどうか」ではありません。
ポイントは2つ。
1)脂肪がどれくらいあるか(脂肪化の程度)
これは生活習慣の影響が強く、改善も期待できます。
「脂肪肝ですね」ではピンとこないものです。
検診で腹部エコーを受けられて、脂肪肝がある、と言われてもどの程度なのか?
前回検査の時と比べて良くなってるのかどうか?
そもそも脂肪肝と言われてどこの誰に相談すればいいのか?
全くわからない。
当院ではこの部分を重要視しています。
脂肪肝の程度を数値で見える化できる方法がないか?
ということです。
2)肝臓が硬くなってきていないか(線維化)
脂肪肝の予後を大きく左右するのは、脂肪の量に加えて 線維化(肝臓が硬くなる変化)です。
肝臓の細胞は脂肪を溜め込み過ぎれば、細胞が破綻します。
その破綻した細胞やその周りの組織が繊維で置き換わります。
繊維は硬いです。
柔らかかった肝臓が、硬く、変わってしまう。
この状態を、肝硬変、と呼びます。
指で触ると、実際に硬いです。
線維化が進むほど肝臓のトラブルは増え、同時に心血管リスクもより強くなっていきます。
このため、戸頃循環器内科クリニックでは
腹部エコーでATIで脂肪の量の程度を評価します。
合わせて血液検査から算出できるスコア(FIB-4 :フィブフォー)で線維化状態を評価しています。
このFIB-4が上昇していると、硬くなっているな、ということがわかります。
必要に応じて専門検査や肝臓専門医連携につなげる、という流れをです。
当院のエコーマシンで行う「ATI」という見える化
当院では、腹部エコーを行う際に、Canonの Aplio i700 を用いて ATI(Attenuation Imaging) を活用しています。
ATIは、肝臓を通る超音波の“減衰”を数値化して、肝脂肪の量を推定する方法です。
かんたんに言うと、「肝臓の脂肪が多いほど、超音波が通りにくくなる」性質を利用して、脂肪肝を 目に見える数値として提示する仕組みです。
ATIを循環器内科で使う意味
ATIの一番の価値は、難しい理屈ではなく 単純にわかりやすい、ということが利点です。
「脂肪肝ですね」だけでは、実感が湧きにくいです。
どんな状態なのか?
どうしていいのか?
前回から良くなってるの?
ATIという脂肪のたまり具合を数字で見れば、その3つの質問に答えられます。
「脂肪肝を数値で測って、前回より下がりました / 上がりました」だと、わかりやすいですよね。
この感じでいいのか。
それとも、もうちょっとやったほうがいいのか、ということです。
体重・腹囲・血糖(HbA1c)・脂質(LDLや中性脂肪)に加えて、肝脂肪という総合的な指標を一緒に追うと、生活習慣の改善が続きやすい。
これは循環器外来にとって大きな強みです。
ATIは「絶対値で断定」より「同じ条件での経時変化」を見ます。
ATIは脂肪化の評価に役立ちますが、測定条件や個人差の影響も受けます。
そのため当院では、ATIを「一回の数値で断言する道具」というより、同じ装置・同じ測り方で定期的に追い、変化をみていくものとして位置づけています。
前回よりATIが良くなっているかどうか?ということです。
当院の「循環器内科としての」脂肪肝リスク管理
当院では脂肪肝を、肝臓の問題としてだけでなく 心血管疾患の予防の入口として考えています。
流れはシンプルです。
対象
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健診や画像で脂肪肝を指摘された方
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糖尿病や肥満がある方
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血圧・脂質・血糖の異常が複数ある方
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睡眠時無呼吸が疑われる方
- 肝炎疑い 肝機能障害がある
動脈硬化や輪蔵病のリスクがあるとき、と言い換えてもいいと思います。
外来でやること
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血圧・脂質・血糖・体重・睡眠(無呼吸)をまとめて評価
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血液検査で線維化リスク*Fib-4測定
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腹部エコーのタイミングで、ATIを用いて肝脂肪を定量し、生活改善の指標として共有
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リスクが高い方は、肝臓専門医とも連携しながら精密評価につなげる
- 治療の基本は7-10%の体重減量の維持。6ヶ月維持できれば脂肪肝は改善しています。
- 地中海食が推奨されます。
- アルコールは避ける
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肝臓のためだけではなく、将来の心筋梗塞・脳卒中・心不全・腎機能低下を未然に防ぐこと。
脂肪肝は、そのための非常に分かりやすいサインです。
しっかり検査で評価し、治療の内容に反映し、定期的にその治療や日常の生活習慣が無理のない範囲で調整できているか。
それを一緒に確認していく、ということが重要と考えます。
肝臓から始める、心臓と血管の予防
脂肪肝は「肝臓が悪い」という話より、代謝が乱れていて、心血管リスクが上がっているというサインとして捉えると見え方が変わってきます。
そして、数値で見える化できる指標(ATI)があると、わかりやすいです。
食事や運動をしっかり頑張ったりするなら、血液検査のデータが良くなるのもいいですが、実際脂肪肝での脂肪が減った、とか、脂肪肝が治った、ということがわかったほうが、やる気が起きます。
当院では、新しい技術や指標を用いて循環器内科として 肝臓から始める全身リスク管理 を行っています。
