筋肉が増えれば脂肪は減るのか?
結論から。
体重がほぼ横ばいでも、筋肉(骨格筋)が増えるほど体脂肪は減りやすい。
という傾向が最新の研究で確認されています。
体重計の数字だけでは健康状態は語り切れません。
体組成計(筋と脂肪)で見ることが重要です。
当院ではInbodyを用いて、体重管理や水分評価を行っています。
という横断研究の報告がありました。
Sports Medicine (2025) 55:1867–1885
どんな研究か。
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対象:ヒト研究と動物研究、合計100件超を統合した解析
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主要所見(ヒト):
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筋量が約2–3%増えると、体脂肪は平均で約4%減少の傾向
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併せて、空腹時血糖は平均で約6%低下、HbA1cも緩やかに改善
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メカニズムは
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筋が増えると基礎代謝・活動時消費が上がる
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成長する筋は糖やアミノ酸を使うため、脂肪に回る分が相対的に減る
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ということです。
動物実験での比較
左側は、β₂作動薬クレンブテロール(3 mg/kg飼料、4週間)+ ブタ成長ホルモン(0.1 mg/kg/日、3週間)を投与したブタの第10肋骨部の断面の比較になります。
右側は無処置の対照群のブタです。
・処理個体では筋肉層が明らかに厚く、脂肪層が薄くなっています。
・これはβ₂作動薬および成長ホルモンが筋肥大を促進し、脂肪沈着を抑制した結果といえます。
筋肉が増えたことで → 脂肪が減っている、ということです。
この減少をリパーティショニング効果、と呼んでいます。
栄養素の体内配分が筋肉側に偏ることで、脂肪沈着が減少していく現象です。
研究では薬剤を用いていますが、筋トレで同様の効果が得られます。
この論文で言えることは
Q. 体重はあまり変わらないのに、筋肉が増えると脂肪は減りますか?
A. はい。筋が増えるほど脂肪は減りやすい傾向があります。
平均的には、筋量+2–3% → 体脂肪−約4%が期待し得る目安と考えられます。当然、個人差があります。
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痩せようと思ったら、体重をみるより体組成を見たほうがよい
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体重“だけ”では変化が見えません。
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筋肉が増えて、脂肪が減る、という現象があります。
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それはダイエット、糖尿病や高血圧、脂質代謝異常症管理では非常に重要な変化です。
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でも体重計だけではそれが見えません。
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なので、運動やっても無駄かぁ、とか、効果でないなら続けてもしょうがないなとなってしまいがち。
筋量・体脂肪率を定期モニタリングすることで、ただしく体を評価することができます。 - 当院ではInbodyの測定は有料ですが500円で気軽にできるようにしています。
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週2–3回のレジスタンストレーニング
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大筋群(脚・背・胸)を中心に、中強度×8–12回×2–3セットを目安に。継続が最優先。
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十分なたんぱく質+生活活動量
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1日体重×1.0–1.5gを目安になります。
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階段使用やこまめな歩行で総消費も底上げするのが良いです。
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「体重が減らない=失敗」?
→ いいえ。筋↑・脂肪↓なら健康度は改善。
見た目・代謝は良い方向に変わります。
「有酸素運動だけで十分?」
→ 有酸素も大切ですが、筋を増やす=脂肪が落ちやすい土台づくりとなります。
両輪が理想です。
「高齢・肥満でも効果は?」
→ むしろ改善幅が出やすい傾向が報告されています。
フォームと安全性に配慮して実施を。
体重は据え置きでも、中身(筋増加・脂肪減少)が良くなるのが良いと思います。
タンパク質は、個人的には豆乳などの大豆食品や、鶏肉から摂るのをおすすめしています。
