早寝を習慣にしたいときに役に立つ話。
「朝がつらい」
「夜に寝つけない」
秋の夜長、という言葉を聞いて、夜に何をしようかな、とワクワクする人もいれば、たくさん眠れる!と思う方もいるかも知れません。
せっかくだからは早く寝よう、と思ってもなかなか眠くならない、ということもあります。
この眠りのサイクルを体内時計(サーカディアンリズム)と呼んでいます。
どうにかして、この時計を調整する方法がないか?という話です。
時差ボケを強制的に修正するには?という話にもつながります。
少しずつ“朝型”に整える方法についての論文があります。
アメリカ・ラッシュ大学の研究チームが行ったものです。
「朝の光」と「午後のメラトニン摂取」で体内時計を早める方法を調べたものです。
Sleep Med. 2015 February ; 16(2): 288–297. doi:10.1016/j.sleep.2014.12.004.
この研究では、次のような工夫をしました
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朝の強い光を当てる時間を、30分/1時間/2時間の3パターンで比較
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夕方にメラトニン0.5mgを内服
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就寝・起床を毎日1時間ずつ前倒し
すると、最も光の長かった2時間グループで体内時計が平均2.4時間前進した、といことです。
注目すべきは、たった30分の光でも1.8時間分の効果があり、十分に有効だったことです。
どう応用するか?
① 朝の「強い光」を浴びよう
起きたらすぐにカーテンを開けて朝日を浴びる。
これだけです。
曇りや冬は、ライトボックス(5,000〜10,000ルクス)という専用の光器具を使うのも言われていますが、電気代はかかります。
時間がなければ30分だけでも効果あり。
理想は60〜120分。
② メラトニンは「夕方」にとる
睡眠薬として使われてもいるメラトニンの服用が言われています。
日本では、小児用の睡眠薬として処方されています。
保険診療で用いられる成人向けのメラトニン薬はありません。
早く眠れる体内の準備に、就寝の5時間前が効果的ということがわかりました。
サプリメントで市販されている0.5mgの低用量メラトニンを、夕方に飲むのがポイントといえます。
③ 睡眠時間を“毎日1時間ずつ前倒し”
これはちょっとチャレンジ。
でも、体内時計を無理なく進めるコツです。
1日で一気に2時間早くするのではなく、毎日コツコツ1時間ずつ前へ。
例えば、いつも0時就寝の人が「22時に寝たい」とすれば
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初日:23時に寝て7時起き、夕方19時にメラトニン
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二日目:22時に寝て6時起き、夕方18時にメラトニン
2日間実践するだけでも効果があった、という報告もあります。
どんな人へメリットが有るのでしょうか
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早起きが必要な生活が始まる前(転職・出張)
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アメリカなど東向きの海外出張(時差ぼけ対策)
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夜ふかし体質で朝がしんどい方(遅延型睡眠)
「眠れないから薬…」の前に、自然の力をうまく取り入れてみることも選択肢の一つです。
メラトニンを使わなくても、朝日をしっかりあびる、だけでもいいと思います。
注意点
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眼の病気がある方、光に過敏な方(片頭痛やてんかんなど)は強い光に注意が必要です
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メラトニンはふらつきや眠気が出ることもあるため、服用後の車の運転は避ける必要があります
「朝がつらい」「夜寝つけない」
その原因には、体内時計のズレがあるかもしれません。
研究が示すように、朝の30分の光と夕方のメラトニンの組み合わせは、無理なく体内リズムを前に進める助けになります。
当院では、睡眠リズムの整え方や生活改善のアドバイスも行っています。
お薬に頼りすぎず、生活の中でできることを一緒に考えていきましょう。
ぐっすりねむることと、すっきりおきることはセットで考えたいですね。
