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心臓を守るには腎臓もチェックすることが大事という話

[2026.08.30]

「STAMP on CKD」という考え方

2026年8月、欧州心臓病学会(ESC)から、心血管疾患と慢性腎臓病(CKD)を一体として診療するための新しいガイドラインが発表されました。

その中心となる考え方が「STAMP on CKD」です。

高血圧、心不全、狭心症、心筋梗塞、心房細動などの心臓病と、慢性腎臓病は密接に関連しています。

心臓が悪くなると腎臓にも負担がかかり、腎機能が低下すると、今度は心不全や心筋梗塞、脳卒中などの危険が高くなります。

つまり、心臓と腎臓は別々に考えるのではなく、ひとつのつながった臓器として診ていく必要があります。

 

CKD(慢性腎臓病)とは?

CKDとは、腎臓の働きの低下や、尿の異常が3か月以上続く状態です。

代表的な診断基準は、次のいずれかが3か月以上持続する場合です。

  • eGFRが60mL/分/1.73m²未満

  • 尿アルブミン/クレアチニン比(uACR)が30mg/gCr以上

  • 血尿、画像異常(エコーやCT)など、腎障害を示す所見がある

eGFRは血液中のクレアチニン値、年齢、性別などから計算される、腎臓のろ過能力の目安です。

ただし、eGFRだけが正常でも、尿中にアルブミンが漏れていることがあります。

そのため、腎臓の状態を正しく評価するには、血液検査だけでなく尿検査も大切です。

 

「STAMP on CKD」

今回、新たにSTAMPという考え方が提唱されています。

心血管疾患の患者さんに対して行う5つの取り組みの頭文字です。

 

S:Screen for CKD(スクリーニング)腎臓病を調べる

高血圧、糖尿病、心不全、狭心症、心筋梗塞、心房細動などがある方では、腎機能を定期的に確認することが重要です。

確認する主な項目は次の2つです。

  • 血液検査のeGFR

  • 尿検査の尿アルブミン/クレアチニン比(uACR)

特に糖尿病がある方や、腎機能が悪化する可能性の高い方では、少なくとも年1回の評価が勧められます。

日本では糖尿病がある方でのみ尿アルブミン/クレアチニン比が保険診療で検査ができます。

日本以外の国では、糖尿病あるなし関係なくこの検査により腎機能を評価しよう、ということが一般的であることは注意が必要です。

 

健康診断で「クレアチニンは正常だった」と言われても、それだけでは十分でない場合があります。

尿タンパクや尿アルブミンについても確認してみる必要がある、ということです。

 

T:Triage and stage CKD CKDの重症度を判定する

CKDのリスクは、eGFRと尿アルブミンの組み合わせで判断します。

一般的には、

  • eGFRが低いほど

  • 尿アルブミンが多いほど

将来の腎不全、心不全、心筋梗塞、脳卒中などの危険が高くなります。

同じeGFRでも、尿アルブミンの量によって将来のリスクは異なります。

検査値を一つずつ見るのではなく、組み合わせて評価することが大切です。

なお、脱水、発熱、感染症、薬剤などによって、一時的に腎機能の数値が悪化することもあります。

1回の検査だけでCKDと決めるのではなく、必要に応じて再検査し、3か月以上続いているかを確認します。

尿蛋白が見られるときに、適切な治療や管理を行えば蛋白尿が減ることが期待できます。

ただし、完全にゼロ、になるわけでもないことが多いです。

それでも、腎臓機能の悪化を遅らせることができることがわかっています。

 

A:Address CKD risk 腎臓と心臓に共通するリスクを減らす

心臓と腎臓を守る基本は共通しています。

  • 禁煙

  • 適正体重の維持

  • 適度な運動

  • 塩分を控える

  • 血圧を適切に管理する

  • 糖尿病を適切に治療する

  • 脱水を避ける

  • 腎臓に負担をかける薬を漫然と使用しない
    (特に痛み止めや抗生剤など)

薬物療法では、患者さんの状態に応じて、ACE阻害薬、ARB、SGLT2阻害薬、スタチン、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬、GLP-1受容体作動薬などを検討します。

繰り返しますが、スタチン。つまりコレステロールの管理が非常に重要です。

腎臓の治療でコレステロール? と感じられるかもしれませんが、スタチンにより腎臓を守ることが期待できる、ということは再度強調させていただきます。

これらの薬には、血圧や血糖値を下げるだけでなく、心不全や腎機能悪化のリスクを抑える効果が期待できます。

ただし、腎機能、血清カリウム値、脱水の有無、併用薬などによって使用方法が変わります。

自己判断で開始・中止することは避けてください。

M:Modify approach to cardiovascular management 腎機能に合わせて心臓病の治療を調整する

CKDがあると、薬の量や種類、造影検査、カテーテル治療、抗凝固療法などに特別な配慮が必要になることがあります。

一方で、今回のガイドラインが強調している大切な点は

CKDがあるという理由だけで、必要な心臓病治療を遅らせないことです。

 

例えば、急性心筋梗塞など緊急性の高い病気では、腎機能への配慮は必要です。

それでも必要な検査や治療を過度に先延ばしにすると、かえって生命に関わる可能性があります。

 

腎臓を守ることと、心臓の治療を行うことのバランスを、患者さんごとに判断します。

また、心房細動の患者さんでは、腎機能によって抗凝固薬の種類や用量が変わります。

腎機能が変化しているのに以前と同じ量を飲み続けると、出血や血栓のリスクに影響することがあるため、定期的な確認が必要です。

 

P:Plan health services 診療科の垣根を越えて連携する

心臓病とCKDを併せ持つ患者さんでは、循環器内科、腎臓内科、糖尿病内科、かかりつけ医、薬剤師などの連携が重要です。

当院では心臓のみならず、糖尿簿湯治療やコレステロール管理、食事運動管理も積極的に行っています

 

腎機能が大きく低下している場合、尿タンパクが多い場合、血尿が続く場合、腎機能が急速に悪化している場合などには、腎臓内科での精密検査が必要になることがあります。

当院でも、必要に応じて専門医療機関と連携しながら診療を進めています。

 

次のような方は、一度腎機能を確認しましょう

  • 高血圧がある

  • 糖尿病がある

  • 心不全、狭心症、心筋梗塞の治療中

  • 心房細動がある

  • 健康診断でクレアチニン高値やeGFR低下を指摘された

  • 尿タンパクや血尿を指摘された

  • 足のむくみや息切れがある

  • 鎮痛薬を頻繁に使用している

  • 過去の検査と比べて腎機能が悪くなっている

 

重要なことは

CKDは、初期には自覚症状がない、ということです。

症状がない段階からeGFRと尿検査を確認し、血圧、糖尿病、脂質異常症、心不全などを適切に管理することが、今後の腎不全だけでなく、心筋梗塞、心不全、脳卒中の予防にもつながります。

悪くなってから慌てて治療を始めてもなかなか難しい、ということでもあります。

 

循環器内科では、心電図や心臓超音波検査だけでなく、腎機能にも目を向けることが重要です。

「心臓を診ることは腎臓を診ること」

そして、「腎臓を守ることは心臓を守ること」でもあります。

健康診断の結果でeGFR、クレアチニン、尿タンパクなどが気になる方や、高血圧・糖尿病・心臓病の治療中で腎機能について相談したい方は、お気軽にご相談ください。

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