コレステロールが高い。その時の考え方 その2
すでに動脈硬化性疾患があるかどうか
LDL-Cの治療方針を考えるうえで、最も重要な分岐点の一つが、すでに動脈硬化性疾患を起こしているかどうかです。
以下の病歴がある場合は、基本的に「二次予防」として考えます。
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心筋梗塞
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狭心症
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冠動脈ステント治療
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冠動脈バイパス手術
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動脈硬化性の脳梗塞
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一過性脳虚血発作
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末梢動脈疾患
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頸動脈狭窄
このような方では、LDL-Cを下げる目的は「将来病気になるのを防ぐ」だけではありません。
再発を防ぐための治療になります。
コレステロールの治療が、もっと大きい病気の予防、という考えた方です。
2026年ガイドラインでは、臨床的な動脈硬化性心血管病があり、特に再発リスクが高い場合では
LDL-C 55 mg/dL未満
non-HDL-C 85 mg/dL未満を目標とすること
が推奨されています。
一方、動脈硬化性疾患はあるものの超高リスクに該当しない場合は、少なくとも、
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LDL-Cを50%以上低下させる
-
LDL-C 70 mg/dL未満
-
non-HDL-C 100 mg/dL未満
を目標にします。
日本のガイドラインだとまだ、LDL 100 mg/dl未満 というあたりです。
PREVENTという新しいリスク計算
2026年ガイドラインでは、従来のPooled Cohort Equationsに代わり、AHAのPREVENT-ASCVD方程式を使用することが推奨されています。
PREVENTは、将来の心血管病リスクを推定するための計算式です。
主に、
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年齢
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性別
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総コレステロール
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HDLコレステロール
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収縮期血圧
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降圧薬の使用
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糖尿病
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喫煙
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腎機能
などを用いて、心筋梗塞や脳卒中などの発症リスクを推定します。
対象は、原則として、
-
30~79歳
-
明らかな動脈硬化性疾患がない
-
LDL-C 70~189 mg/dL
の成人です。
10年間のASCVDリスクは、次のように分類されます。
| 10年間の発症リスク | 分類 |
|---|---|
| 3%未満 | 低リスク |
| 3%以上5%未満 | 境界リスク |
| 5%以上10%未満 | 中間リスク |
| 10%以上 | 高リスク |
ここで大切なのは、リスクの数字を「病気になる確率」として恐れることではありません。
これは、薬物療法を始めることで得られる利益がどの程度ありそうかを考えるための指標です。
常に、メリット と デメリット(あるいは治療リスク) とのバランスでみる、ということです。
10年リスクだけでは若い人を見落とすことがあります
10年間のリスク計算では、年齢の影響が大きくなります。
そのため、30歳代や40歳代では、
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LDL-Cが高い
-
高血圧がある
-
喫煙している
-
家族歴が強い
という場合でも、10年リスクは低く出ることがあります。
しかし、今後30年間にわたってその状態が続けば、生涯の心血管リスクは高くなる可能性があります。
そこで2026年ガイドラインでは、30~59歳では、10年リスクに加えて30年リスクも重視しています。
たとえば、
-
10年リスクは3%未満
-
しかし30年リスクが10%以上
-
またはLDL-C 160~189 mg/dL
という場合、中強度スタチンを開始することが合理的とされています。
つまり、若い人にとって大切なのは、
「今すぐ心筋梗塞になる確率は低い」
ということだけではなく、
「この状態を30年間続けたときに、血管へどの程度の負担がかかるか」
という視点です。
そんな長い目で考えるの?と思われるかもしれませんが、そういう時代です。
AHAが示す「CPRモデル」
2026年ガイドラインでは、一次予防の考え方を、CPRという3段階で整理しています。
C:Calculate 計算
まず、PREVENTで10年間のASCVDリスクを計算します。
必要に応じて、30年間のリスクも確認します。
P:Personalize 個人化
次に、計算式には十分に含まれない、その人特有のリスクを加味します。
たとえば、
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若年発症心血管病の家族歴
-
LDL-C 160 mg/dL以上
-
Lp(a)高値
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ApoB高値
-
慢性炎症性疾患
-
早発閉経
-
妊娠高血圧症候群の既往
などです。
R:Reclassify and Reassess 再評価 再分類
治療するか迷う場合には、冠動脈石灰化スコア(心臓CT)などを用いて、リスクを再分類します。
そして、治療方針を改めて相談します。
LDL治療は、ひとつの数式で自動的に決めるものではありません。
数値を出し、患者さんの背景に合わせ、必要なら画像検査で確認するという流れです。
PREVENTの数字以外に確認する「リスク増強因子」
PREVENTで計算したリスクが境界域や中間域の場合、治療の判断に迷うことがあります。
そのときに確認するのが、リスク増強因子です。
若年発症の心血管病の家族歴
一般的には、
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男性の血縁者が55歳未満
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女性の血縁者が65歳未満
で心筋梗塞や動脈硬化性疾患を起こしている場合、強い家族歴と考えます。
家族歴は、遺伝だけでなく、同じ食生活や生活環境の影響も反映します。
LDL-C 160~189 mg/dLの持続
LDL-Cがこの範囲で長期間続いている場合、それ自体がリスク増強因子です。
non-HDL-C高値
non-HDL-Cは、
総コレステロール-HDLコレステロール
で計算します。
LDLだけではなく、VLDLやレムナントなど、動脈硬化に関係するコレステロールをまとめて評価する指標です。
特に中性脂肪が高い方では、LDL-Cだけよりも実態を反映することがあります。
中性脂肪の持続的上昇
空腹時中性脂肪150 mg/dL以上、または非空腹時175 mg/dL以上が持続する場合も、リスクを高める要素になります。
慢性炎症性疾患
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関節リウマチ
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全身性エリテマトーデス
-
重症乾癬
-
炎症性腸疾患
などの慢性炎症性疾患では、動脈硬化が進みやすいことがあります。
hsCRP高値
明らかな感染症などがない状態で、hsCRP 2 mg/L以上が繰り返し確認される場合、動脈硬化リスクを高める可能性があります。
女性特有のリスク
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45歳未満の早発閉経
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妊娠高血圧症候群
-
子癇前症
-
妊娠糖尿病
-
早産
などは、将来の心血管病リスクと関連します。
妊娠中の異常は一時的なものとして終わるのではなく、その後の血管リスクを知らせるサインになることがあります。
Lp(a)は、成人で一度は測定を
2026年ガイドラインの大きな変更点の一つが、すべての成人でLp(a)を少なくとも一度測定することを推奨したことです。
Lp(a)は、LDLに似た粒子にアポリポ蛋白(a)が結合したものです。
その値は遺伝的に決まる部分が大きく、一般的な食事療法や運動だけでは大きく変わりにくい特徴があります。
目安は、
-
125 nmol/L以上
-
または50 mg/dL以上
で、ASCVDのリスク増強因子と考えます。
さらに、
-
250 nmol/L以上
-
または100 mg/dL以上
では、心血管リスクがより高くなるとされています。
Lp(a)が高い場合、現時点では一般診療でLp(a)そのものを大きく下げる治療は限られています。
そのため、
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LDL-Cをより厳格に下げる
-
血圧を管理する
-
禁煙する
-
糖尿病を管理する
-
肥満を改善する
-
運動習慣をつくる
という、修正可能なリスク因子を徹底して管理します。
Lp(a)は、一度測定すれば生涯大きく変化しないことが多いため、毎年測る必要はありません。
ApoBは「動脈硬化性粒子の台数」をみる指標
LDL-Cは、LDL粒子の中に入っているコレステロールの量を測っています。
しかし、一つ一つの粒子が運んでいるコレステロール量には個人差があります。
そのため、
-
LDL-Cはそれほど高くない
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しかし動脈硬化性粒子の数は多い
という場合があります。
ApoBは、LDL、VLDL、IDL、Lp(a)など、動脈硬化を起こす粒子の表面に基本的に1個ずつ存在します。
そのため、ApoBは動脈硬化性粒子の「台数」を反映する指標と考えることができます。
たとえるなら、
-
LDL-Cはトラックに積まれた荷物の総量
-
ApoBは走っているトラックの台数
です。
同じ荷物量でも、小型トラックが大量に走っているほうが、血管壁に接触する粒子数は多くなります。
2026年ガイドラインでは、特に、
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中性脂肪150 mg/dL以上
-
糖尿病
-
CKM症候群
-
LDL-Cが70 mg/dL未満まで低下している
-
LDL-Cやnon-HDL-Cの目標達成後もリスクが高い
という場合に、ApoBの測定が治療強化の判断に役立つとしています。
糖尿病がある場合
40~75歳で糖尿病がある場合は、明らかな心血管病がなくても、中強度スタチン治療が基本になります。
目標は、
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LDL-Cを30~49%低下
-
LDL-C 100 mg/dL未満
-
non-HDL-C 130 mg/dL未満
です。
さらに、
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高血圧
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喫煙
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CKD
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アルブミン尿
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長い糖尿病罹病期間
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網膜症
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神経障害
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複数の心血管リスク
がある場合は、高強度スタチンを考慮します。
その場合は、
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LDL-Cを50%以上低下
-
LDL-C 70 mg/dL未満
-
non-HDL-C 100 mg/dL未満
を目標にします。
糖尿病患者さんでは、「LDLが基準値内だから治療しなくてもよい」とは限りません。
糖尿病そのものが動脈硬化のリスクを高めるためです。
慢性腎臓病がある場合
慢性腎臓病も重要な心血管リスクです。
特にCKDステージ3または4では、LDL-Cの値にかかわらず、一次予防として脂質低下療法を考慮します。
腎機能が低下すると、心筋梗塞や脳卒中だけでなく、心不全のリスクも上昇します。
一方で、透析中の患者さんでは、脂質低下療法の考え方が異なるため、個別の判断が必要です。
