オリーブの木
クリニックのフィットネスジムの外に、大きなオリーブの鉢を置きました。
背丈もあり、幹もしっかりしていて、存在感があります。
通りからもよく見える場所なので、もうお気づきの方もいるかもしれません。
なんでまたオリーブなのか。
オリーブは「ゆっくり育つけれど、確実に根を張る木」です。
乾燥や気温の変化にも比較的強く、強い風にも負けず、葉を落とさずに年を重ねます。
医療にたとえるなら、これは派手な治療よりも、毎日の生活を正しく積み重ねることがいちばんの薬という、当院がずっと伝えている考え方にとても近いと感じています。
血圧、コレステロール、血糖。
これらは一晩で良くなるものではありません。
けれど、しっかりした運動、少しの食事の見直し、睡眠の質の改善、それを続けた人の血管は必ず変わります。
オリーブの幹が少しずつ太るのと同じです。
派手さはないけれど、確実に強くなる。
私はこの「強くなる」という現象が好きです。
若返るでも、奇跡でもなく、ちゃんと強くなる。
成長する、というもの好きです。
今がどうであれ、一歩一歩進んでいく、というのを大切にしています。
今回このオリーブをフィットネスルームの外に置いた理由は、もうひとつあります。
それは「この場所はただの医療機関ではなく、あなたの生活を整える場所です」という宣言でもあるということ。
当院は循環器内科として、狭心症、不整脈、動脈硬化、心不全といった心血管の病気に専門的に対応します。
血圧管理もコレステロール管理も糖尿病のコントロールも、きちんとエビデンスに沿って行います。
検査も画像診断(心臓CTなど)も、必要なものは院内で行い、リスクを早めに見つけにいきます。
これは医療としての「守り」の役割です。
一方で、私たちは「攻め」もやります。
フィットネスルームでの運動指導、体組成のチェック、減量のサポート、睡眠・ストレスの相談、美容皮膚科領域での肌のケアまで含めて、日常そのものを良い方向にチューニングしていく。
ヨガ教室もその取組みの中の一つです。
血管年齢と一緒に、日常の満足度も上げていきたい。
これは、医療というより“生活のデザイン”の領域に近い仕事です。
オリーブの鉢は、その「守り」と「攻め」が同じ場所にあることを視覚的に示す旗印にしたつもりです。
オリーブは長寿の木としても知られています。
寿命がとても長く、100年どころか何百年も生きる株もあると言われています。
つまり、長く見守る木。クリニックとしては、これを患者さん一人ひとりとの関係のイメージに重ねています。
私たちは「具合が悪いときだけ来る場所」ではなく、「今は元気だけど、これからも元気でいるために、ときどき顔を出す場所」でありたいと思っています。
血圧が高めになっていないか。
LDLは落ち着いているか。
最近むくみやすくなってないか。
睡眠が浅くなっていないか。
体重がなんとなくで増えていないか。
あるいは、見た目のコンプレックスで毎日が少し憂うつになっていないか。
そういう細かいところを、こまめに整えていく拠点になりたいのです。
そしてこれは、当院スタッフも同じ気持ちでいます。
クリニックというのは建物だけで完成ではありません。
正直に言うと、オープン前に準備をしていた頃は「まずはちゃんと業務が回ること」が最大の目標でした。
受付が混乱しないか。
検査の導線が滞らないか。
急性の胸痛や息切れの方が来たときに、いつでも迷いなく対応できるか。
電話対応、会計オペレーション、薬剤の説明。
いわば“幹を折られないようにする”段階です。
そこから今、少しずつステージを上げています。
単に業務ができるだけでなく、患者さんの「不安」を見つけて、先回りして和らげること。
患者さん自身がまだ言語化していない違和感(むくみが増えた気がする、息切れが前より早い、夜中に動悸で目が覚めるようになったなど)を、表情や仕草から汲み取ること。
それを院長だけでなくチーム全体で共有できるようにすること。
オリーブでいうと、“根が土のどこに伸びているかをお互いに把握している状態”です。
これは組織として、とても大事な変化です。
まだまだできていないことや熟していない部分が多くあります。
また、急患で多くの患者さんが来られたときには待ち時間も長めにいただくことも出てきています。
それでも一人ひとりにしっかり向かい合いたいと思っています。
オリーブは環境が合えば、やがて実をつけます。
今回のオリーブは2年に一回くらい実をつけるようです。
オリーブの実はそのままでは渋くて食べられませんが、時間をかけて塩抜き・渋抜きをして、ようやく食卓に上がります。
あるいはしっかり絞ることでオイルが抽出できるとのことです。
運動習慣を作ること、減量のプログラムを続けること、睡眠リズムを整えること、喫煙をやめること。
どれも「今日やったから明日劇的に変わる」ものではありません。
けれど半年後、一年後の血管の硬さ、心臓の負担、内臓脂肪の量、血糖値の安定度、そして“自分の見た目と気分の満足度”は、確実に変わります。
これは実際の診療の現場で私が何度も見てきた事実です。
だからこのオリーブは、患者さんと私たちの「半年後・一年後の約束」のシンボルでもあります。
すぐに花が咲かなくてもいい。
大事なのは、その方向でちゃんと育っているかです。
最後にもうひとつ。
オリーブは適度な日光、風通し、水はけを好みます。
つまり「過保護にしすぎると弱る木」でもあります。
水をやりすぎても根が腐るし、逆に放っておきすぎると乾燥しすぎる。
これは、心と身体のバランスの話にも似ています。
頑張りすぎると血圧は上がるし、睡眠は浅くなり、交感神経が張りっぱなしになる。
逆に、何も気にしない・何もしないとなれば、体重も血糖もLDLも、少しずつ静かに上がっていく。
どちらも極端は長続きしません。
がんばる、も疲れてしまい、長くは続けられません。
適度な負荷と、適度な休息。
そのリズムを一緒にデザインしていく場所として、私たちはフィットネスと医療と美容の全部を同じ敷地に置いています。
これから、季節ごとにオリーブの様子もお伝えします。
葉の色、幹の太さ、実がついたかどうか。
クリニックの成長も同じように、少しずつ変化を積み上げていきます。
「血圧はちょっと高めだけど、まだ薬はどうしようかな」と迷っている方も
「運動を始めたいけど、一人だと続かない」という方も
「最近、鏡を見るたびに疲れてる顔だな…と思う」という方も
一度、オリーブを見に来てください。
新入りなので、しばらく名札をつけておきます。
スペイン出身らしいです。
